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11月14日,第3回目の「心の健康オープンセミナー」が開催されました。今回は,保健師の中村照江さんが,「精神病の早期発見と回復のために」と題して話をされました。以下はその要約です。
これまでの保健所における精神保健とのかかわりの中で,本人にとっても家族にとっても,いわば極限状態で問題が持ち込まれてくる経験を何度もしてきた。もう少し早い段階で,適切な医療につながっていれば,もっと違った結果が期待できたかもしれないという痛切な思いをすることが少なくなかった。精神病も他の病気と同様,早く発見し,回復を前提として適切な医療につなげ,一日も早く,当人の生活を発病前にもどすことが重要である。病院へ入れっぱなしというのでは,なんの解決にもならない。当人には取り返しのつかない時間だけが過ぎて行くだけである。
長年の保健師としての経験をふりかえり,わが国の精神医療の問題点を指摘した後,冊子「精神病の早期発見と回復のために−あなたのできること−」(マインドファースト刊)をテキストとして用いて,本来あるべき精神病からの回復方法について解説が行なわれた。
健康の回復の遅れと不適切な治療は,自尊感情の低下や人間関係の破綻,あるいは勉学や仕事の上での遅れなど,二次的に好ましくない問題や弊害が生じやすい。したがって,回復を前提とした精神病の治療には,特に次の3点が大切である。
(1) 未成年者を精神科病院へ入院させない。
(2) 不必要な入院を避ける。
(3) 不必要な薬はのませない。
しかし,初めて精神病を発症した若い人も,旧来からの精神科医療システムの中に組み込まれてしまうため,良好な回復を期待することがなかなか難しいのが現状である。本来回復する病気なのに,どうしても入院という流れが起こりやすく,しかも一度入院すると長期化する。
それゆえに,適切な医療を受けるために必要な知識や情報を当人や関係者が持っておくことが大切である。
例えば,精神病の症状に関することだけでなく,精神病は突然起きるものではなく,これまでとなにかが違うといった微妙な変化,すなわち前触れの症状(前兆)が見られるということ。こうしたことを知っておくことは,早期発見や再発防止,さらに精神病の発症を未然に防ぐことにもつながる。
さらに,精神病は,「ストレス脆弱モデル」と呼ばれるストレスとストレスに対する過敏傾向があいまって起きてくること。したがって,回復後も再発防止を目的とした服薬とストレスマネジメントが大切である。
さらに,具体的な治療の受け方としては,予約をとって充分時間をかけて相談ないし診療を受けること。ただ医者の言葉を鵜呑みにするのではなく,こんなときはどうしたら良いかなど,あらかじめ対処法を聞いておく。また,待てないときは連絡がつくようにしておく。 |
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参加者からは,友達が病気になったとき,「この人が」という意外な思いを持ったが,今の時代は誰がなってもおかしくないと思う,との感想が語られた。また,世界の中で日本は,精神科のベッド数がきわだって多いのは,長年人の問題行動の解決手段として精神病院が使われてきたためで,本来精神病は,入院というやり方でなくても解決できる病ではないのか,との意見も聞かれた。(M.H.) |
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プログラム
開 催 日 |
テ ー マ |
講 師 |
2007年
7月11日(水) |
思春期のメンタルヘルスについて |
高松赤十字病院カウンセラー
島津 昌代 |
9月12日(水) |
やさしい統合失調症の話 |
精神科医
花岡 正憲 |
11月14日(水) |
精神病の早期発見と回復のために |
保健師
中村 照江 |
2008年
1月 9日(水) |
生活習慣病とメンタルヘルス |
糖尿病専門医
冨岡 幸生 |
3月12日(水) |
心の病と社会参加 |
保健師
中添 和代 |
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場 所:高松市男女共同参画センター |
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日 時:奇数月第2水曜日18時30分〜20時30分 |
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事前申込は必要でありませんが参加費として500円が必要 |
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編集後記:今年も残すところ一月となりました。年末,年始は,同窓会のシーズンでもあります。しかし,心病んだ人の中には同窓会に出て行きづらくなっている人も少なくありません。人と人との大切なつながりを損なわないようにする点でも,これまでの精神医療のあり方が問われています。(H) |
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