No.41 2008年10月
マインドファースト事務局:
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マインドファースト通信
マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,臨床心理士,精神保健福祉士,看護師,保健師,医師などからなるNPOで,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行っています。

オーストラリアのメンタルヘルスネットワーク 若者のためのメンタルヘルスサービス headspace
マインドファースト通信編集長 花岡正憲
 オーストラリア若者心の健康財団(Australia’s National Youth Mental Health Foundation,NYMHF)は,精神的健康の向上を目指し国レベルの草の根事業を展開している。2008年末までに,若者とのmental health conversation(メンタルヘルス会話)を促進するための拠点 headspace をオーストラリア全土で30か所オープンする。
 メンタルヘルス関連問題の75%が,思春期から20歳半ばまでに顕在化するという明らかな事実がありながら,従来のメンタルヘルス対策では,こうした問題を抱えた若者への気づきが遅れ,適切な対応が行なわれてこなかった。一方,近年,早期の精神的健康問題の発見と適切な支援が,良好なoutcome(結果)をもたらすというメンタルヘルスケアにおける新たな知見や成功例の蓄積も進んでいる。
 こうした状況を踏まえ2004年オーストラリアメンタルヘルス委員会が提出した報告書を受けて,超党派国会議員の発議により,2005年,5400万豪ドルを基金としたNYMHFが設立された。そして財団の事業部門として立ち上げられたのが headspace である。
 headspace のねらいは,12歳から25歳の若者の精神疾患や精神作用物質乱用の影響を軽減することにある。headspace プログラムは,地域社会のこうした問題への認識を高め,若者との会話を構築することで若者の精神的不健康への早期の支援が行なえるように組み立てられている。
 headspace のサービス内容の要点は以下のとおりである。
・12歳から25歳までの若者とその家族にとって受け入れやすい地域ベースでの健康問題に関するサービスの提供。
・健康,教育,就労,メンタルヘルス,薬物,アルコールなどの問題を抱えた若者への具体的支援。
・一定の専門技術をそなえた医師,メンタルヘルスワーカー,薬物・アルコール関連問題ワーカーなどによる対応。
・守秘義務の確保と経済的負担が少ないサービス。
・利用者の地域の事情を熟知したスタッフの対応。
・若者と家族の運営への参加。
 若者のメンタルヘルス問題への気づき(awareness)を高めるために,オンライン,関連事業,フェスティバルなどでのコミュニケーションを通して啓発とエンパワーメントを行ない,若者がメンタルヘルスの情報や助言にアクセスしやすくする。ウェブサイト(http://www.headspace.org.au/)には,若者やその友人,家族,対人援助関係者などから,健康情報や助言を求めるアクセスが毎月約25,000件ある。

 しかし,headspace の「コミュニケーション戦略」は,単なる「情報交換」ではなく,あくまでも,有効な精神的健康づくりと予防のために行動を起こしたいという若者のニードを引き出すことをもっとも大切な要素としている。若者との会話をとおしてメンタルヘルス問題を抱える当事者意識を育むことで,主体的行動へつながるよう動機づけを高めること,そして若者にそうした変化を促すための家族や地域社会の能力を育むことを重視している。最近になって,メンタルヘルスサービスの改善と多面的社会プログラムにより,一定の成果が上がりつつあるとの報告もある。
 メンタルヘルス問題を抱える若者に対して効果的な支援を行なうには,対話やアセスメントのスキルの習得が欠かせないことから,headspace は,スタッフのトレーニングには大きなウェイトを置いている。また,早期になんらかの治療が必要な場合には,医学面からの判断も行なわれる。
 headspace の運営は,技術面においてORYGEN Research Centre,メルボルン大学,Brain and Mind Research Institute,シドニー大学,オーストラリア一般医ネットワーク(AGPN),オーストラリア心理学協会(APS)などの援助に負うところが少なくない。(このコーナーは随時掲載いたします)
ご案内 マインドファースト 11月の心の健康オープンセミナー
日時:11月12日(水)午後6時30分〜8時30分 場所:高松市男女共同参画センター 高松市錦町1丁目20−11 テーマ:精神病の早期発見と回復のために 講師:保健師 中村 照江 参加費:500円 定員:20人 後援:高松市 お問い合わせ:NPO法人マインドファースト 電話 090-2828-7021
これからの2008年度心の健康オープンセミナーのご案内
プログラム
開催日 テ ー マ 講   師
11月12日(水) 精神病の早期発見
と回復のために
保健師
  中村 照江
2009年
 1月14日(水)
生活習慣病とメンタル
ヘルス
糖尿病専門医
  冨岡 幸生
 3月11日(水) 心の病と社会参加 保健師
  中添 和代
編集後記:子ども手当や定額減税は個々の家族にとって一時的経済支援にはなりますが,お金があっても一朝一夕には得られないのがヒューマンサービスです。人づくりや社会資源づくりのための中長期の投資が忘れられては困ります。(H)

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