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講師 マインドファースト理事 保健師
中 村 照 江 |
「精神病の早期発見と回復」 これは,私が長年保健師として地域精神保健に携わってきたなかで,最も重要なテーマだと思っている。そして,精神科病院の看護師として働くようになったいま,その想いを一層強くするようになっている。マインドファーストが,この課題への取り組みの一環として,「」というタイトルで一般向けの解説書を発行したことは意義深く,私はこの冊子を日々の活動の中でテキストとして活用している。
精神病は,前駆期,急性期,回復期の過程を辿る。前駆期から急性期は,本人は一体なにが起きているのか理解できず,ひどく混乱し,自分自身の態度や行動の変化に不安と当惑を覚え,苦痛を感じる。最初の精神病エピソードは,思春期から成人初期に経験することが多い。この時期は,自分らしさの確立や自立,人間関係の拡大,職業選択など,大切な課題への取り組みが求められる時期でもある。そうしたことから,極力在宅で治療が受けることが望ましい。入院は,それに伴うトラウマ,自尊感情の低下,家族関係の破綻,退院後の治療中断,再発時の治療の再開への拒否など,失われるものが少なくない。
回復への第一歩は初期段階のアセスメントから始まる。いつごろからどのような症状がどのぐらい続いたか,またそれによる心理社会的機能の低下の有無など,充分な時間をかけて面接を行い,最善の治療計画や援助計画が立てられる。
身近な人の精神病発症は,家族や関係者にも衝撃を与えるため,その生活が揺さぶられることも少なくない。そうした時は,まず,身近なホームドクターか保健センターへ相談に行くのが良い。どのようにすれば良いか,どのような治療を受けることができるか,一定の指針を得ることができる。いずれにしても早期に治療を開始することが肝心で,未治療のまま長期間放置しておいても解決にはつながらず,それだけ失われるものも少なくない。
回復と再発防止を確実なものにするためには,精神病の「ストレス・脆弱モデル」を関係者が共有しておくことが大切である。家族や関係者の言動が本人のストレスや再発要因となる場合が少なくないため,家族や関係者自身が相談相手を持ち,過剰な巻き込まれや孤立感を防ぐことも必要である。 |
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一般に,精神的健康を損なうのは,傷ついた自尊感情の回復に失敗した結果とみることもできる。精神病を有する人やその家族だけでなく,全ての人々にとって自尊感情を維持し,高めていくことは,自ら人生をコントロールし,精神的な健康を維持増進させるためにとても大切だと考える。(本文は11月の心の健康オープンセミナーの講師による要約です) |
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プログラム
開催日 |
テ ー マ |
講 師 |
2008年
7月 9日(水) |
思春期のメンタルヘルスについて |
臨床心理士
島津 昌代 |
9月17日(水) |
やさしい統合失調症の話 |
精神科医
花岡 正憲 |
11月12日(水) |
精神病の早期発見と回復のために |
保健師
中村 照江 |
2009年
1月14日(水) |
生活習慣病とメンタルヘルス |
糖尿病専門医
冨岡 幸生 |
3月11日(水) |
心の病と社会参加 |
保健師
中添 和代 |
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主 催:マインドファースト |
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後 援:高松市 |
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場 所:高松市男女共同参画センター |
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日 時:奇数月第2水曜日18時30分〜20時30分
(ただし,9月は第3水曜日) |
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事前申込は必要でありませんが参加費として500円が必要 |
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編集後記:他者への攻撃も自己破壊的行動も,怒りの感情の健全な処理の仕方とはいえず,往々にして不幸な結果をもたらします。とりわけ閉塞感が強まる時代は,いかに怒りの感情をコントロールして社会とつながって行くか,これはメンタルヘルスにおける大きな課題になりそうです。(H) |
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