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講師 マインドファースト理事 保健師
中 添 和 代 |
・あなた自身に,バリアはありませんか?
心の病と社会参加を考えるうえで,ひとつのキーワードに「バリアフリー」があげられる。バリアフリーとは,障害がある人が生活をしていくなかで,妨げになる障壁(バリア)を取り除くことである。バリアには,物理的なバリア,制度的なバリア,文化情報面のバリア,そして心理的なバリアがある。このなかで最も障害者の生活を困難にしているのが偏見や差別,無関心といった心理的なバリアである。
・精神障害者を取り巻く環境
わが国の精神科医療の特徴には,病床が多い,在院日数が長い,入院患者の高齢化,機能別に施設が分化していない,民間主体の病院経営,医療従事者が少ないなどがある。これらの背景には,経済的な要因,治療的な要因,社会的な要因があげられる。例えば,未治療の患者を治療につなげるための全額公費負担による措置入院の増加(経済措置),民間病院を設立しやすい法律・制度の存在,1950年代の向精神薬導入まで効果的な治療法がなかったこと,医師や医療従事者の定数について低位の特例措置がとられたこと(精神科特例),治安を目的とした入院の増加,精神疾患に対する知識不足と精神障害者への偏見などである。
・社会参加とは?
精神障害者の「社会参加」とは,障害年金や生活保護,作業所やグループホームなど,使える制度や社会資源を活用して,自分らしく生活していくことである。そして,障害者施策や地域社会の意識変革に向けて,自らの意見を述べることも社会参加である。しかし,精神科病院で長い間生活をしていると個性や意欲が失われ,その施設内だけに通用する用語や習慣を身につけていき,その施設にしか生きられなくなる1)。これが長期入院の弊害であり,これは,患者だけでなく医療従事者にもおこる。厚生労働省は,平成14(2002)年から新障害者プランを展開し,「10年間に7万2千人の社会的入院者を退院,社会復帰させる」という目標を掲げ,平成15(2003)年度から国庫補助事業として「精神障害者退院促進支援事業」を開始した。この事業は,「症状が安定しており,受け入れ条件が整えば退院可能である者」に対して,従来からの退院への働きかけに,一市民である自立支援員を派遣し,病院内や地域の活動場面において,本人に寄り
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添い,退院に向けての様々な取り組みを支援するものである。この事業を利用して退院した人に「良かったことは?」と質問した。これに対して「鍵のかかっていない部屋に,自分で鍵をしたり,開けたりして出入りができる」「自分が足を一歩出せば,自分の好きなところへ行ける」「ずっと,退院したかった。医師や看護師に『退院したい』と言っても,ただ聞くだけだった。しかし,事業の対象者に選ばれたら,すぐ退院ができた」という言葉が心に強く残る。人が幸せに生活できるためには,自分の能力を十分発揮できる場が必要であり,それを認める人の存在が重要である。
文献:1)E.Goffman著 石黒毅訳 「ゴッフマンの社会学3 アサイラム(asylum)」 誠信書房 1984
使用したDVD:宇田川健監修 「リカバリー障害者自立を支える世界的潮流」 企画 地域精神保健福祉機構
(本文は3月の心の健康オープンセミナーの講師による要約です) |
2009年度定期総会のご案内 |
2009年5月11日(月)午後7時から,高松市男女共同参画センターにおいて,2009年度マインドファースト定期総会が開催されます。議事は,以下に示すとおりです。
・2008年度事業報告
・2008年度収支決算報告
・監査報告
・2009年度事業計画案
・2009年度収支予算案
・役員改選 |
あなたもマインドファーストの会員になりませんか |
マインドファーストでは,利用者本位のメンタルヘルスを推進するために,一緒に活動していただける方を必要としています。会員になっていただける方は,(1)氏名 (2)住所 (3)電話番号 (4)Eメールアドレス(メールでの連絡をご希望の方) (5)正会員,賛助会員,団体会員のいずれかのご希望の旨をご記入の上,事務局へご郵送下さい。
随時電話等での入会も受け付けております。
会費は年間,正会員3,600円,賛助会員は一口2,000円,団体会員は5,000円です。 |
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編集後記:20008年度心の健康オープンセミナーの最終回は「心の病と社会参加」でした。心病める人々が社会に住むのは当たり前のことですから,「社会参加」が問われるのは,これまで心病める人々を拒み,無視し続けてきた人たちの方です。マインドファーストは,来年度に向けて,新たな視点で事業計画を練っております。(H) |
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