高松市長との「まちかどトーク」開かれる
2013年8月23日(金)午後6時50分から,高松市男女共同参画センターにおいて,大西秀人高松市長とマインドファーストとの「まちかどトーク」が行われました。以下は,当日1時間余にわたり行われた質疑の記録(要約)です。
挨拶:島津理事長
マインドファーストは利用者本位のこころの健康の推進,こころのケアシステムの充実を目的とし2003年から活動を始め2006年にNPOとなった。ストレスの多い時代で,メンタルヘルスをお題目ではなく,生活している私たち自身の問題として語り合えることを楽しみにしている。今日はよろしくお願いいたします。
挨拶:大西市長
まちかどトークは平成21年度からはじめて5年目。自治行政を進めていく上で一番大事なのは市民と一緒になって行政が現場の実情に即した形で対応できること。そのための自治運営の基本的な原則は,「情報共有,参画,協働」の3つ。本事業はそのうちの情報共有にあたる。年間10団体程度実施しており今年度は今日で2回目。この場は議論して何かを決める場ではなくお互い言いっぱなし,聴きっぱなしになるかもしれないが,率直な意見交換を期待している。
活動紹介:柾副理事長
※マインドファーストホームページ上の「事業内容」参照。
〈市長〉「ぴあ」とは何かの略ですか?
島津理事長:「ぴあ」という言葉自体が,仲間という意味です。
〈市長〉精神保健福祉の分野で普通に使われている言葉?
藤澤:学校で学生同士でも使います。英語のpeerです。
花崎泉:隔たりのない関係です。
質問:島津理事長
当法人が事前に提出した質問項目をみてどんなふうに感じられ,興味を持たれたか。
〈市長〉
精神保健から雇用就労,あるいは自殺対策と幅広く活動されていることに非常に感心した。しかし行政と皆さんとの間のやり取りがまだ十分ではないようなので,今日がきっかけになればと思う。
質問:島津理事長
高松市としての自殺対策について改めて教えてください。
〈市長〉
市では保健センターでの相談事業を中心に自殺予防対策を行
っている。民生委員さんにゲートキーパーになってもらうための研修事業も行なっている。しかし,なかなか効果は出にくい。
島津理事長:効果が出にくいという点では,活動している私たちも評価を得にくいところがあります。
〈市長〉:去年自殺者が減ったのは何が原因か分からないところもあるが,個々に応じたきめ細やかなシステムを社会の中に作るしかないのかもしれない。自殺者を減らすために「こうやったらいい」という対策が確立されていないところもある。専門家の方からはその辺りはどうか。
杉山:今年6月,四国新聞に,就労は究極の治療であるという記事が出ていた。その意味で居場所づくりや職場復帰支援などが大事だと思う。マインドファーストでもユーザーの活動の場づくりを目指しており,それについてやり取りできればと思う。
質問:花崎泉
四番町スクエアを見学にいったが,埋蔵文化財のスペースが多く占めているように見えた。街の中に利用しやすい居場所がなかなかなく,現在就労継続支援A型を立ち上げるためにどうしたらいいかを皆で考えている。市長さんとして,行きやすい場所はどんなところかというのもお聞きしたい。
〈市長〉
四番町スクエアは,いくつかの部門に分かれていて,そのひとつが埋蔵文化財のスペースで,そこをごらんになったのだろう。全部を占めているわけではない。…個人としてプライベートで行きたいという場所は,音楽やスポーツなど趣味を楽しめたり体験できたりするような場所だと思う。
質問:藤澤
居場所作りについては,メンタルヘルスユーザーに限定するのではなく,年配の方や地域の人々が気軽に訪れ,会話を楽しみ地域のつながりと和みの場所を作っていくことが現代には必要ではないかと考え,その目的のためには街中で場所作りができることを望んでいる。それがマインドファーストでできればと考えている。
〈市長〉
行政の立場では,すべて規則や制度に従ってできることとできないことを整理し,市民に説明し提供していく。市民の生活の中に入っていくことは困難。生活者と行政との間を繋いでいくのがNPOや民間だと思う。行政ができることは,最終的には地域活動への資金を出すこと。活動の拠点となる場所を確保してプランを積極的に出していただければそれについて行政として何ができるかを検討する。まずは,場所などハコモノは自分たちで準備していただかなければならない。そのうえで,活動に関しての補助はできることがあるので,企画を積極的に出していただきたい。←



→意見:柾
情報の共有,参画,協働ということで,お話をお聴きしていてわれわれが窓口に足を運ぶことの重要性を再認識した。
意見:松岡
障害者の人たちの就業の問題に関して,より深く理解してもらえたらと思う。
質問:花岡
高松市の協働企画提案事業に関して。過去に応募したことがあるが,関連部局が複数にまたがり作業を進める上での困難が少なくなかった。カウンターパートを明確にしてほしい。相変わらずイベント型の事業が採択されやすいという印象を持っている。中長期的に人材育成に取り組む事業を大切にすべきではないか。
〈市長〉
メンタルヘルス対策について,最終的に権限をもっているのは県なので県との協働をしたい気持ちがあるし,もっと権限を市に下ろして欲しいのだが難しい。高松市は中核市ではあるとはいえ,県が主導で行っている事業で,市としての取り組みが難しいのが現状である。
質問:花岡
高松市職員のメンタルヘルス対策について。病気休職の職員や,自殺の事例もあるのではないか。
〈市長〉
高松市職員のメンタルヘルスの問題は大きな問題で,休業する職員もいる。自殺の事例は,ここ最近はないと思うが,何年か前にはあった。霞ヶ関(国家公務員)はもっと深刻で,自分がかつていたときにもメンタルヘルスの問題で休業する職員がいた。公務員のメンタルヘルス問題は深刻だと思うが,地方より国家公務員のほうが深刻かもしれない。
質問:花岡
マインドファーストではファミリーカウンセラー養成講座という講座を開催しているが,現代は家族が支えられるためのシステム作りの必要性が高くなっているように思う。たとえば,幼稚園保育所の保母さんたちに,家族を通して子どもの問題が持ち込まれてくることも多くなっていると思う。そういったときに保母さんたちがどう対応していくか。幼稚園や保育所の職員を対象にした人材育成のプログラムも必要なのではないか。
〈市長〉
ぜひ,協働事業としてプランを提案して欲しい。
質問:浅海
われわれの行っている事業で最も関心のあったものは?
〈市長〉
さまざまな立場の方が幅広く活動に関わっておられるところに関心をもった。
質問:杉山
NPO活動をもっと行政の立場の方にも知ってほしい。高松市職員の研修に,幣法人から講師派遣もできると思う。
〈市長〉
ぜひお願いしたい。
質問:杉岡
調査研究という点で,去年度の自殺者のわずかな現象の要因が明確にはなっていないとのことであったが,そういった面で当法人と市がタイアップしてできそうなものはないか。
〈市長〉
行政だけでは補いきれない部分があるので,ぜひ担当窓口へ企画をもってきていただいて可能であれば協働でやっていくこともできると思う。
マインドファーストからの出席者:
島津,浅海,杉岡,杉山,花岡,花崎,藤澤,柾,松岡
司会:杉山 記録:浅海,杉山
第100回理事会報告
日 時:2013年9月2日(月)19時00分〜21時00分
場 所:高松市男女共同参画センター 第7会議室
事務連絡並びに報告に関する事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 ファミリーカウンセラー認定委員および認定面接に関する事項:理事長より認定委員に委嘱状を出した上,認定の日程調整をメーリング上で行うことが承認された。
第2号議案 次年度ファミリーカウンセラー養成講座に関す事項:次年度,委託事業の受託決定にかかわらず,ファミリーカウンセラー養成講座を開講すること,また,今後,ファミリーカウンセラー会議の中で企画等を進めていくことが承認された。
第3号議案 調査研究に関する事項:ファミリーカウンセラー会議より提案があった“子どものメンタルヘルス”に関する研究を杉岡理事を中心に実施していくことが承認された。次回理事会には杉岡さんに研究のプランを発表してもらうことが承認された。
第4号議案 フォークス21相談料未納の取り扱いに関する事項:2回にわたり相談料が未納になっていたケースに請求書を送付したところ,クライエント側から連絡があり,相談についての認識の違いがあり,相談料を支払う意思がないことが分かった。当会としては,係争にまで持ち込むことは妥当ではないとの判断から,これ以上請求行為はしないことで承認された。今回の経験を踏まえ,今後,カウンセリングに際して同意書をとるなどの案が出された。ファミリーカウンセラー会議の議題にもとり上げ,今後審議することが承認された。
第5号議案 認定NPO法人について税理士の相談に関する事項:税理士と連絡がとれ,10月13日(日)の午後で調整がついた。先方から旅費を含め相談料の提示があったが,今後事務レベルで最終的な相談料の交渉に当たることで了承された。
第6号議案 2013年度地域自殺対策緊急強化基金事業に関する事項:事業実施に伴う支出行為により,手持ち残高が不足するため,100万円程度を概算請求することが承認された。
第7号議案 技術援助事業に関する事項:NPO法人グリーフワークかがわから,ヘルプライン養成講座のテキストとしてファクトシートを使用したいとの申し出があり,ファクトシートを届けた。本事案を技術援助事業として,記録を残しておくことが承認された。
第8号議案 来年度の事業計画及び財源確保に関する事項:自殺対策緊急強化基金が今年度で終了するため,来年度に向けて事業計画,財源の確保等を検討する必要があり,今後,県の担当者に情報収集を行う。この件は引き続き理事会で審議することが承認された。
第9号議案 居場所つくりに関する事項:プロジェクトチームでは,東京で成功している就労支援施設を見学するために,旅費等の支給を受けたいとの申し出があり,それにあたり,調査計画書を理事会に提出してもらうことが承認された。
 編集後記:フランスのミッテラン政権の大統領特別補佐官を務め,経済学者,思想家,作家として活躍しているジャック・アタリは,その著書『21世紀の歴史-未来人類から見た世界-』(林昌宏訳 作品社 2008)の日本語版序文「21世紀,はたして日本は生き残れるのか?」の中で,日本への課題の1つに,「日本国内に共同体意識を呼び起こすこと」を挙げています。これに関連して,本文では,「都市全体の顔は各住人の表情を超えたところに作り出される。オーケストラは各団員の音色を足し合わせたものではない。…すべての共同体のインテリジェンスとは,個別のインテリジェンスに架け橋を築いた成果であり,つながりをもたせた成果である。これは新しいものを創造する際に不可欠な要素である」と述べています。高松市長とのトークを通して,それぞれ立場が異なる人々のインテリジェンスにつながりを持たせ,新しい町の顔を作り出すこと,そこに「協働」の意義があると,あらためて感じた次第です。(H)