報告
2013年度香川県自殺対策連絡協議会
マインドファースト理事 浅海明子
9月10日に平成25年度香川県自殺対策連絡協議会が開催されました。会の内容は,まず県の担当者の方から自殺者の現状,香川県の自殺対策の方針の一部改正について報告があり,その後各参加団体からの今年度の自殺対策の取り組みについての報告が行われました。
自殺者の現状について,厚生労働省の人口動態統計によると平成10年以降3万人前後で推移していたのが平成21年以降減少傾向にあり,香川県では平成24年度の自殺者は前年に比べ67人減と大幅な減少がみられているようです。自殺死亡率でみても都道府県別順位で前年は15位だったのが今年度は46位と変化しています。しかし全国的に見て自殺者数が交通事故死亡者数の2倍であることや,若年層の自殺者が増加傾向であることなどから,今後も自殺対策へ継続して取組んでいくことの重要性が実感されました。香川県の自殺対策の方針としては,今年度新たに「若年層の自殺対策の強化」が盛り込まれ,県全域で若年層を対象にした心の健康づくりに関する講演,授業で使える教材の作成,相談窓口の周知等を実施していく予定であると報告がありました。
参加団体による今年度の自殺対策の取組みの報告では,マインドファーストは対面型相談,電話相談,ファミリーカウンセラー養成講座,啓発用自殺関連ファクトシートの作成と配布,自殺者遺族のグループミーティングの5事業を報告しました。精神保健福祉センターからは,救急搬送された自殺企図未遂者への訪問等支援事業を平成22年7月から行ってきているとの報告がなされ,今後の課題として救急搬送件数の多い深夜の対応を強化することが挙げられました。香川県医師会からは,精神科医ら有志で“香川県の精神医療を考える会”が結成され精神科救急医療システムについてなど議論されているとの報告がありました。また香川県臨床心理士会からは来年3月9日に中高年の心の危機と自殺対策に関するシンポジウム開催のお知らせ,香川いのちの電話協会からは,来年2月8日に公開講座開催のお知らせがなされました。
協議会終了後,丸亀町グリーンけやき広場で開催された普及啓発イベント「ゲートキーパー宣言集会」にも参加しました。浜田恵造県知事挨拶で始まり,香川住みます芸人の梶剛さんやカマタマーレ讃岐の選手3名がゲートキーパーに関する知識
をクイズ形式で分かりやすく伝えておられました。ゆるきゃらの「キーモン」も登場して,自殺対策という重いテーマが,比較的受け入れられやすい形に工夫されている印象を受けました。

「高松市精神保健ネットワーク会議」
〜高松市における自殺対策関連機関との連携〜
マインドファースト理事 藤澤 司
平成25年9月20日(金)9:30〜11:30,高松市保健センターにて開催された「高松市精神保健ネットワーク会議」にマインドファーストから出席させていただきました。
この会議は,精神保健福祉の推進のために市内の精神保健福祉に関係する機関が一同に集まる機会を設け,関係機関の方がお互いに情報共有して連携が図れることを目的に平成24年度からこのスタイルで開催しているものです。今回「精神保健ネットワーク会議」は自殺対策として関係機関の効果的な連携を図ってより有効な支援につながる事を目的に開催され,当日は自殺対策に関係する8ヶ所の機関の方々が集まりました。
最初に高松市保健所の大西所長より,開会に当たり挨拶があり,次に担当者より高松市の自殺の現状と取組について説明がありました。
説明の冒頭,ここ数年全国の自殺者数は3万人前後で推移しており,平成24年の全国自殺者数は15年ぶりに3万人を下回ったことと内閣府の自殺者統計データによると高松市の自殺者数は平成22年111人,23年93人,24年が68人ということで数字的には徐々に減少しているがそれでもまだ多くの方が自ら命を落としていることが報告されました。
会議はその後,出席された各関係機関の相談担当者から自己紹介と各機関の活動状況や活動の内容について説明があり,活発な情報の交換が行われました。
当法人としては,心の危機の相談「クライシスサポートカウンセリング」とサバイビング,ピアサポートライン(ピアによるメンタルヘルス電話相談)の取り組みについてご説明とご報告を致しました。
NPOとして,自殺対策に関する活動をしていると,様々なケースの対応に一つの法人だけではどうしても対応しきれないことがあります。そのような時,最も有効な支援を行うためには関係機関との効果的な連携が不可欠であり,スムーズに連携を行うことが求められます。そのために今回のようなネットワーク会議での情報交換と情報を共有ができたことは地域一丸となって自殺対策に取り組むという上で今後の活動にも大きな力となるものと思われます。←




→このような会議を開催して頂いた高松市保健所保健センターのみなさまに感謝いたしますとともに今後もどうぞよろしくお願い致します。
第101回理事会報告
日 時:2013年10月7日(月)19時00分〜21時00分
場 所:高松市男女共同参画センター 第7会議室
事務連絡並びに報告に関する事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 相談業務におけるクライエントとの契約に関する事項:9月30日のファミリーカウンセラー会議にて,契約書ではなく,カウンセリングの導入の時にブロシュールを有効に活用してクライエントに説明を行うこと,特別な心理療法を行うなどで契約の必要が出た時には再度検討するという意見が出された。理事会においてもこの意見が承認された。
第2号議案 2014年度ファミリーカウンセラー養成講座に関する事項:来年6,7月の日曜日の午後のサンポート高松の会議室の予約を早急に行うこと,次回のファミリーカウンセラー会議で,今後のファミリーカウンセラー養成講座の企画会議の日程調整をおこなうこと,また,講師の事前研修のプランを浅海理事が作成することが承認された。
第3号議案 2013年度合同ファミリーカウンセラー会議に関する事項:10月27日13時30分〜15時の合同ファミリーカウンセラー会議に案内をメールにてファミリーカウンセラーに周知すること,当日は当会のブロシュール,ファクトシート,新たなファミリーカウンセラーの登録証を準備することが承認された。当日の内容は,自己紹介,事業説明,事業報告,新たに認定されたファミリーカウンセラーが可能な活動,メールアドレスの確認を行うことが承認された。
第4号議案 2013年度スーパーバイザーに関する事項:スーパーバイザーに花岡理事が選ばれ,花岡理事の承諾を得た。
第5号議案 調査研究に関する事項:「子どものメンタルヘルスと喪失(仮称)」のテーマで,今年度から2か年計画で調査研究に着手するにあたり,担当の杉岡理事が,アクションプランを作成し,高松市の2014年度共同企画提案事業などの助成金を使ってこの研究を行っていくことが承認された。また,このプロジェクトのメンバーをつのることが承認された。
第6号議案 認定NPO法人のコンサルテーションに関する事項:10月13日の税理士コンサルテーション代金が4万円で確定した。会員宛案内のメールに香川県の認定NPO法人の運営の手引きのURLを加えて参加を呼びかけることが承認された。
第7号議案 2013年度地域自殺対策緊急強化基金事業に関する事項:ファクトシートのテーマ「いじめとトラウマ」「うつ病について」の原稿作成を担当理事に依頼することで了承された。サバイビングのブロシュールを増刷することが承認された。
第8号議案 居場所つくりに関する事項:スピーカーズビューロー育成事業について県の担当課にて実施要綱について調べることが承認された。
第9号議案 その他:おどりばのブロシュールを増刷することが承認された。
WHO 2013−2020 包括的メンタルヘルス行動計画
 2013年5月,第66回WHO総会において,194参加国の代表が出席のもと,
mental health action plan 2013 - 2020
「2013−2020包括的メンタルヘルス行動計画」が採択された。
 本行動計画は,人々の健康の普遍的実現に必要なメンタルヘルスの重要な役割を規定している。本計画は,生涯にわたるアプローチを基本とし,対象範囲をすべての人々の健康として,公平性を期すとともに,予防の重要性を強調している。
 行動計画では,以下の4つの主要目標が掲げられている。
・メンタルヘルスのための効果的なリーダーシップと統治能力(governance)を強化する。
・コミュニティベースの包括的かつ統合的で迅速性のあるメンタルヘルスサービス及び社会サービスを提供する。
・メンタルヘルスにおける増進と予防のための方略を実施する。
・メンタルヘルスに関する情報システム,科学的根拠(エビデンス),調査研究を強化する。
行動計画は,メンタルヘルスの重要な新しい方向に加え,コミュニティベースのケアを提供するための中心的役割と人権のさらなる重視を定めている。「回復の概念」並びに「純医学モデルからの脱却」が取り入れられ,メンタルヘルスに対する包括的対応を確保するために,就労・所得の創出,教育の機会,住居と社会サービス,その他のメンタルヘルスに関係する社会的決定要素が組み込まれたものになっている。
また,精神障害を有する人々のエンパワーメント,力強い市民社会を発展させる必要性,自殺防止を含めたメンタルヘルスの増進と予防活動の重要性も強調されている。計画は,世界レベル,地区レベル,国レベル,事務局ごとに定められており,例えば,重症の精神疾患に対するサービスを20%向上させることや,国レベルの自殺率を2020年までに10%減らすなど,いくつかの目標と指標が掲げられている。これらは,計画の実現,進捗状況,実績などの評価に活用される。(Comprehensive mental health action plan 2013 - 2020 WHOから要訳 花岡)
 編集後記:次男が窃盗未遂容疑で逮捕されたことに,道義的責任をとって,タレント司会者が番組を降板しました。わが国では著名人にかぎらず,子どもの不祥事に際して,親がインタービューや取材を受ける場面が少なくありません。そうした過程では,問題の所在が過去の子育てに収束していきがちです。非意図的であれ,子育てに問題があったかのような報道は,マスメディア圧力として,子育て現場や家族を直撃します。そうでなくても,子どもに問題が起きると,家族は,子育てに遡って原因を探そうとする生き辛いところにいます。マスメディアが用いる言語の構造は,因果関係が複雑な事象の原因の単純化をもたらし,人々の間に不寛容な対象世界をつくり出します。これが,偏見やスティグマの背景にあることも事実です。ちなみに,WHOの自殺報道におけるメディア向け提言には,控えなければならないことの一つに「原因を単純化して伝える」という項目があります。(H)