2014年度 香川県自殺対策連絡協議会参加報告
マインドファースト理事 杉岡正典
9月5日(金)に平成26年度香川県自殺対策連絡協議会が開催されました。この連絡協議会では,地域メンタルヘルスに従事する公的機関からNPOまでの幅広い団体が一堂に会し,県内の自殺予防対策について協議します。マインドファーストも毎年この協議会に出席し,様々な情報発信を行ってきました。
今年度の協議会では,まず,全国及び香川県の自殺者数の推移について県の担当者から説明がありました。全国の自殺者数は,平成10年以降3万人を超えていましたが,平成21年度以降は減少傾向にあり,現在もその傾向が続いています。平成25年度の自殺者数は26,038人でした。香川県の自殺者数は,平成10年以降200人前後で推移しており,平成25年度の県内の自殺者数は184人でした。香川県の自殺者の割合は,全国的にみて決して高いわけではありませんが,年度によって増減の波を繰り返しています。以上をまとめると,全国的にみるとピーク時の自殺者数からは若干の減少傾向にありますが,県内でみると減少傾向には至っていない,と言えるでしょう。人口動態統計による自殺者数の数字を見ていてよく思うのですが,自殺者3万人や200人などとマス(mass)として数字を見てしまいますが,この1つ1つの数字は人の命であることを考えると,1つの増減が意味するものは非常に大きいと言えま
す。1つでも減らすことができるように,自殺対策の更なる充実が求められるでしょう。
次に,県の担当者から香川県の自殺の現状と課題について以下のような報告がなされました。(1)県内の自殺者の割合は減少傾向に至っていないこと,(2)30代〜60代男性の自殺者が多いこと,(3)自殺の原因として「健康問題」「家庭問題」「経済生活問題」が多いこと,(4)うつ病に対する偏見と未受診者への対応を改善すること,(5)自殺未遂者のケアをすること,(6)若年層の自殺予防対策を強化すること。以上の6点はどれも重要な事柄を含んでおり,一朝一夕に解決する問題ではありません。継続的な自殺予防策の実施が望まれます。
その後,協議会では,各参加団体から今年度の自殺対策の取り組みについての報告が行われました。香川大学医学部からは「メンタルヘルス向上に関するプロジェクト」についての説明があり,地域メンタルヘルス対策に取り組むリーダー養成やスキルアップ研修の実施報告がありました。教育委員会義務教育課からは,いじめを苦に自殺する児童生徒を出さないために,いじめの未然防止対策に力を入れていることが報告されました。高松市保健センターからは,若者のメンタルヘルスに関する実態調査を行うことが新たな取り組みとして報告されました。その他の団体からも活動報告があり,そのすべてを紹介することはできませんが,各団体がそれぞれの立場から自殺予防に取り組んでいることが確認されました。マインドファーストの活動への関心も高く,インターネットによるメンタルチェックや自殺←




→予防カウンセリングの活動に関して他のメンバーから質問がなされました。協議会は各団体の相互理解を育む場ともなっています。
10月10日は,世界メンタルヘルスデイ
2014年のテーマ:「統合失調症とともに生きる」
10月10日は,世界メンタルヘルスデイです。メンタルヘルス問題の啓発とメンタルヘルス活動への総力を結集するための総合的な目標を掲げて行事を行なう日です。以下は,WFMH(世界精神保健連盟)のキット「World Mental Health Day 2014 Living with Schizophrenia -Call to Action」の日本訳です。
2014年は,「統合失調症とともに生きる」を世界メンタルヘルスデイのテーマとして掲げています。世界中で2,600万人もの人たちが統合失調症を患い,家族も含めるとその数は倍にのぼります。こうした人々に希望を与えることをねらいとしています。
典型的には,統合失調症は,思春期にはじまることから,多かれ少なかれ当人本来の潜在的能力を発揮することが困難となるため,人々の福祉(well-being)が損なわれかねません。しかし,統合失調症を患った人々の50パーセント以上が,適切な支援が得られるなら,好ましい予後が期待できることが分かっています。回復には,長い時間がかかることもありますが,時間がかかるということは,回復するということでもあります。
ひとり一人の回復を確実なものにするためには,世界の保健関係者,政府,資金提供者,様々な関係機関,専門家集団や消費者団体など,利害関係者に呼びかけて,統合失調症とその家族を支援するためにできることは何でも行なうということです。特に,統合失調症の人々の保護と治療は,国連においても,基本的人権の一つとして認められています。
回復を達成する上での最大の障害は,社会の側の態度と精神疾患及び統合失調症に対するスティグマ(偏見)です。私たちは,こうした偏見を克服し,身近な支援者になることを市民に呼びかけています。統合失調症の多くの人たちにとって,難しくなっていることに,住居の確保,教育,余暇活動,家庭生活,仲間づくりを維持することなどがあげられます。これらのことは,良い人生を送るためには,誰にとっても当然のことと言えます。したがって,統合失調症の人々にも,他の人々同様に,こうしたことが提供されるよう呼びかけていきます。
大切なことは,早期診断,そして好ましいヘルスケアへのアクセスです。専門家,かかりつけ医,患者本人と家族の協働作業が,最善の支援にとって欠かせない要素です。ヘルスケアの質を確保するための政策や法整備のために,政策立案者ないし政治家が積極的に参加することが求められます。
不健康問題からの回復と,健康の維持を支援する上で,重要な役割を果たすのが,地域社会の高いスピリッチュアリティ(精神性)です。こうしたスピリッチュアリティは,高く評価されるべきです。この点で,非営利団体は,大きな役割を果たしています。非営利団体は,地域社会の統合失調症の人々との関わりを持ち,積極的な支援と,他の人々とのネットワークやつながりを築いていくことができるところにいます。
プラスの変化を起こすためには,科学的根拠に基づいた実践活動につながる質の高い研究が必要です。副作用が少ない効果のある薬物療法,心理療法と社会療法,禁煙,運動,健康的なライフスタイル,その他統合失調症の回復に役に立つ様々なことが求められます。
世界メンタルヘルスデイは,世界で最も歴史のあるメンタルヘルス擁護機関WFMH(世界精神保健連盟)の主要な事業です。世界メンタルヘルスデイは,WFMHの会員,非会員に関わら
ず,か,専門職とは何かについて議論重ねていくことが必要であろう。
10月10日の世界メンタルヘルスデイには,大小を問わず,世界中の多くの団体によって記念行事が行われます。こうしたイベントは,メンタルヘルスの大切さを人々ひとり一人に意識づけるとともに,人々をつないで行きます。皆さんの活動の記録,写真,行事予定などをwmhday@wfmh.comへお送りください。相互に活動に関する理解を深め,学び合い,協力して行きましょう。
(訳 マインドファースト通信編集長 花岡正憲)
第114回理事会報告
日 時:2014年8月26(火)19時00分〜20時30分
場 所:マインドファースト事務所 高松市本町
事務連絡並びに報告に関する事項:なし
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 認定NPO法人の申請に関する事項:認定NPO法人の申請書を提出しているが,担当課との交渉に備えるために税理士の清水さんとコンサルテーション契約を結び,その費用を補正予算で対応することが承認された。
第2号議案 スーパービジョンに関する事項:人材育成の予算枠を超えて,スーパービジョンを希望するファミリーカウンセラーに対しては補正予算で対応することが承認された。
第115回理事会報告
日 時:2014年9月8(月)19時00分〜21時00分
場 所:高松市男女共同参画センター 第7会議室
事務連絡並びに報告に関する事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 認定NPO法人の申請に関する事項:9月5日の税理士相談で指摘された帳簿の整備については事務局が行う。2014年度のカウンセラー相談料,スタッフ費については,引き続き,委託料とする。委託契約書の作成をすすめることが承認された。
第2号議案 ニュースレターの関係機関への発送に関する事項:発送先として62か所に絞り込まれた機関と会員に対して,事務局で発送作業に入ることが承認された。
第3号議案 高松市男女共同参画市民フェスティバルに関する事項:11月30日13時〜14時30分まで,森実恵さんの講演の企画が決まった。参加費について障害者手帳を持っている方は無料とすること,また,森実恵さんの書籍のアマゾンのバナーを当会のホームページに張り付けること,収支予算書を作成し,ちらしの作成を事務局で行うことが承認された。
第4号議案 相談予約電話の受け付け時間に関する事項:事務局の電話受理の時間は月曜日〜金曜日の9時から17時とすることが承認された。17時以降は留守電にし,ホームページ上も時間帯について記載する。
第5号議案 相談事業の事務担当に関する事項:ファークス21の所長に藤澤理事が決まり,理事長より任命されることが承認された。また,相談事業担当者を12月に藤澤理事から次の担当者に引き継ぐために,相談事務のマニュアルを作成し,引き継ぎ作業に備えることが承認された。
第6号議案 ジョイフルとマインドファーストの関係に関する事項,第7号議案 ファミリーカウンセラーの活動のルールづくりに関する事項,第8号議案 調査研究事業「子どもの喪失体験」に関する事項並びに第9号議案 2015年度自殺予防関連事業の情報収集に関する事項は,いずれも審議未了。
 編集後記:10月10日の世界メンタルヘルスデイは,メンタルヘルス問題に取り組んでいる関係者が意見を交換し,メンタルヘルスを世界の人々にとって現実的課題とするために,何ができるかを語り合える機会にする日です。残念ながら,日本では,この日のことは,あまり知られておらず,官民でキャンペーンが行われるということも殆どありません。わが国では,1年366日(閏年の2月29日も含めて),毎日が,何らかの記念日とされています(多くが語呂合わせですが)。因みに,10月10日は,厚労省が定める「目の愛護デー」です。目の愛護デーに押されて,世界メンタルヘルスデイの出番がないというわけでもないでしょうが。(H)