市民企画講座報告
児童虐待を防ぐために大切なこと
~ホームスタート事業~
マインドファースト会員 岡 ユカ
平成27年2月7日(土),「児童虐待を防ぐために大切なこと ~ホームスタート事業~」のテーマで市民企画講座が高松市男女参画センターにて開催されました。
NPO法人子どもの虐待防止ネットワーク・かがわ副理事長小西昭子さんによる講演は日本のフォークソングの源流と呼ばれる笠木透さんの歌から始まりました。暗幕がされた会場で笠木透さんの「私の子どもたちへ」の歌詞とともにブラックライトに鮮やかな色彩の絵画が次々と浮かび,参加した私達は一気に日常から非日常へ。これから始まる講演への期待も高まりました。小西さんの保育士として子どもと関わった経験も交えてNPO法人子ども虐待防止ネットワーク・かがわの会の歩みと活動内容が紹介されました。
親の立場に近い市民が子どもの虐待防止について考え,悩んでいる人のS0Sを早くキャッチし,支援したいという思いから1999年に市民団体「みんなで児童虐待を考える会」が発足されました。2000年に現在のNPO法人子ども虐待防止ネットワーク・かがわが設立され,2012年から「子らっこ楽っ子」による子育て支援,そして2013年からは家庭訪問型子育て支援「ホームスタート・おりーぶ」がスタートしています。主な活動は月一回開催されている親子の広場「楽っこ」と母親グループミーティング「ひだまり」によるグループワーク事業と虐待防止勉強会や子育て講座などの啓発推進事業があります。
小西さんは自然と触れ合う機会がどんどんなくなってきて子どもは自然に興味を示さなくなっていることや母親の自我が強くなり母子の関係が変化していることなど子どもを取り巻く環境が大きく変わってきていて,子どもの虐待は特別な人の問題ではなく誰でも起こす可能性があることをこれまでの虐待事例も紹介しながら話してくださいました。
今の社会では育児は誰にとっても難しいことで母親一人で背負わないように,多くの応援者が必要であること,外出しにくい親子は孤立しやすくストレスも高いが,悩みを聞いたり一緒に遊ぶなどの支援で親の心の安定と子育てへの意欲を高められることを活動を通して実感されていました。講演の中で紹介された「ホームスタート・おりーぶ」はホームビジターと呼ばれる研修を受けた子育ての先輩がボランティアで家庭を訪問して子育てを支援するシステムで現在,男性1名,女性14名のホームビジターがいるそうです。しかし,まだまだ人が足りないことや運営資金の調達で苦労しているとのことでした。
「虐待」は身近な誰にでも起こりうる問題です。私達は「虐待」について正しい知識を持ち,個人の問題ではなく社会の問題として考えていきたいと思います。
事務所住所が変わりました
2015年2月1日から当法人の主たる事務所が下記に変更になりました。
〒760-0004 香川県高松市西宝町3丁目4番7号
「償い」について考えてみよう
マインドファースト通信編集長 花岡正憲
オーストリア出身の女性精神分析家メラニー・クライン(1882-1960)は,フロイト以降の精神分析に大きな影響を与え,その根源的な人間理解はヨーロッパの思想哲学にも衝撃を与えた。←




→クラインは,その著書『愛,罪そして償い』や『羨望と感謝』などで,「償い(reparation」は,愛における,また,すべての人間関係における基本的な要素である」とし,「対象との関係を保持し,償いたいという罪の感情はおりにふれてすべての人に起きてくる」と述べている。
2月1日,IS(イスラミック・ステート)に人質になった2人の日本人が殺害されたことを受けて,「その罪を償わせる」とういう行政府の長の発言があった。その発言の真意を問われ,法の裁きを受けさせることであると釈明した。国内向けに発せられた言葉であっても,行政府の長の言葉は,即座に世界中に広がる時代である。そして,翻訳の段階では,コンテクストを踏まえた訳語が選ばれる。
償いという日本語は,英語では, reparationの他,atonement(悪事や損害に対する罪滅ぼし,贖罪),payment(報復,仕返し),compensation(損失補償),recompense(損害過失補償)など,意味が異なるいくつかの言葉に訳される。「罪を償わせる」が,発言者の意図を踏まえ「裁きを受けさせる」と英訳されたかどうかは知らない。もしpaybackとでも訳されることがあれば,恨みを抱いている相手に対する「お礼返し」や「仕返し」といった意味になる。アクション映画の場面によく出てくるセリフだ。個人的な応報感情から出た言葉として翻訳されると,相手と無用な対立関係を生じかねない。
クラインは,「幼児は,自分の破壊衝動や貪欲さが愛する対象を傷つけてしまったのではないかと恐れるようになる」と償いの起源を幼児期に求め,大人においては,「償いをしたいという欲動は,自己実現において重要な意義を持っている」と語っている。償い(reparation)は,対象との関係を失いたくないために,罪の意識から起きてくる内面的な強い欲動である。償わせるために法の裁きを受けさせたからと言って,償いの感情が芽生えるとは限らない。
「人道支援」という言葉も好んで使われた。人道支援は,あの人たちの課題だけでなく,私たち自身の課題であるという動機に根ざした行為である。それが自己の破壊衝動や貪欲さに気づき,大切な対象を傷つけてしまったのではないかとの恐れによるのであるなら,こちらは,クラインの言う本来の「償い」の姿と言えるのかもしれない。

第121回理事会報告
日 時:2015年2月9日(月)19時00分~21時00分
場 所:高松市男女共同参画センター 第7会議室
事務連絡並びに報告に関する事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 ゲートキーパー養成講座に関する事項:3月25日の小豆島地区の講師を再度,個別に募ることが承認された。
第2号議案 国際ソロプティミスト高松からのミニ講座講師派遣依頼に関する事項:同団体から3月17日(火)12:20~12:50会員20名を対象にしたミニ講座の講師依頼があった。花岡理事を講師として派遣することが承認された。
第3号号議案 2015年度県の自殺予防事業の情報収集に関する事項:花岡理事が,自殺対策事業は内閣府から厚労省へ移るとのマスコミ報道による情報を得て,県担当者高溝さんにコンタクトを取ったが,現段階では,厚労省への事業移管を含め,詳細は得ていないとのことであった。また,来年度県事業としても検討することを考えているとの回答があったことから,今後は事務局が県から情報を得るために動くことが承認された。
第4号議案 ファミリーカウンセラー養成講座に関する事項:3月2日の企画会議に向けて理事長から案内メールを送信することが承認された。
第5号議案 カウンセラーの旅費に関する事項:現在,活動費別表はあるが,活動費規定がないため,活動費規定を整備する中で旅費支給基準も定める必要がある。花岡理事が原案を作成することが承認された。
第6号議案 マインドファースト家族精神保健相談員資格制度施行細則の制定に関する事項:家族精神保健相談員資格制度規則を踏まえ,花岡理事が同施行細則案を作成し検討することが承認された。
第7号議案 2015年度予算案・事業計画に関する事項:事務局より,現在毎月発生する支出について(別表配布)の報告があり,予算について議論された。次回理事会で予算案ならびに事業計画を作成することが承認された。
第8号議案 相談料の減免措置に関する事項:花岡理事から原案が示された。「心の危機の相談」は,そのノウハウと実績の蓄積があることから,名称と事業は継承し,無料相談は3回までとすること,また,今日少子高齢化の中で,若者が多様なメンタルヘルス問題を抱えていることに鑑み,「若者メンタルヘルス家族相談(仮称)」を事業化し,3回まで相談料を無料とする案が承認された。広報段階では,「相談は基本的には有料であるが,事情により減免措置がある」という表記にすることが承認された。
第9号議案 居場所づくりに関する事項:ピアワークスで2月22日13時から居場所づくりに関する会議が持たれる。理事の出席が期待されており,任意で出席することが承認された。
第10号議案 第6回国際ウィメンズメンタルヘルス学会への参加費補助に関する事項:参加希望を申し出ている者に該当する参加費が3万円であることから,半額の15,000円の補助を行なうことが承認された。
第11号議案 マインドファースト通信の印刷に関する事項:マインドファースト通信の印刷を業者委託する案が審議されたが,コストパフォーマンスの観点から今後の検討課題となった。
第12号議案 主たる事務所移転に関する事項:1月26日の臨時総会において,当法人の主たる事務所を香川県高松市西宝町3丁目4番7号に移転することが承認された。これを踏まえて,理事長が,平成27年2月1日付で同所に変更した旨報告があり承認された。
第13号議案,第14号議案及び第15号議案は,いずれも審議未了。

編集後記:「心の理論」とは,他者の心の動きを推し量る能力,即ち,人の信条,感情,願望,希望,意図などの精神状況を理解しなければいけないと感じることができる能力とされています。他者の感情や思考を想像することによって,人の行動が,その人の内面の感情,信条,意図などによってもたらされることが理解可能になり,人の行動を予測し,期待することもできるようになるということです。このところ,特に政界で,「忖度(そんたく)」という言葉が,他の言葉と結びついて,否定的ニュアンスをもって使われることがありますが,果たしてそうでしょうか。広辞苑では,「忖」も「度」も,「はかる」の意味で,「他人の心中をおしはかること。推察」とあります。人の心中を推しはかることは,いわば心の理論とも重なります。むしろ,今の社会は,他者のことを忖度することに無頓着であることの方が問題のように思えますがいかがでしょうか。(H)