技術援助 自殺予防対策事業
ゲートキーパーミニ研修会 高松会場
3月4日(水)14時から16時,サンメッセ香川会議室において,香川県主催のゲートキーパーミニ研修が行われ,マインドファーストから島津と花岡が講師として派遣されました。
今回の研修は,一般公募,当日参加も含め約30名の参加がありました。はじめに,香川県精神保健福祉センターから,わが国及び香川県の自殺の現状と香川県における自殺予防の取り組みについて解説が行われました。
受講者は,公務員,弁護士,保健関係者,NPO法人役員,電話相談員,子育て中の主婦,当事者家族,身近な人の自殺を体験した人などで,バックグラウンドに広がりがある研修になりました。受講動機や関心の方向も,「ゲートキーパーという名前にひかれて」「自分を知りたい」「思春期の子どもを支えたいが,どのように声かけをしたら良いか」「心が不安定な人をどう支えたら良いか」「ストレス社会の中で落ち込みのある人を支えたい」「孤独な人を支えることができたら」「傾聴に関心がある」「仕事に役立てたい」など,様々でした。
多様な問題意識,意見,そして経験を持った人々の研修の場における相互作用を大切にするために,4つのグループに分かれて,ワールドカフェ形式で,以下の3つのテーマについて,グループでアイディアを出し合ってもらいました。
  1. 現在の自殺について何が問題だと思いますか?
  2. 問題の解決のためにはどのような対応が可能ですか?
  3. あなた自身何ができそうか?
3ラウンドが終わったところで,元のグループに戻り,意見集約の後,各グル―から報告を求め,参加者全員でアイディアを共有しました。その概要は以下の通りです。
  • 専門家や行政の力も必要だが,つなぐことが難しく,つなぐことのマイナスも考えておく必要がある。
  • 日ごろからアンテナを張っておくことが大切。
  • 地域ぐるみで周りの気になる人に声かけをする。
  • 携帯やLINEのようなものであっても,つながっていることが大切。
  • 聞く姿勢だけでなく,言葉以外のメッセージも大切。
  • 知らない者同士が出会い,話し合える場が必要。
この後,講師が次のように締めくくりました。
人は困難を抱えているときに限って感情を表にあらわさない。なんらかの兆候が見られるまで待つ必要はない。ほとんどの自殺が,予告なく突然起きるものでない。日ごろから,直観を大切にして,傍観者にとどまることをしない。「大丈夫ですか」という声かけは,「私には,お話をする時間があります。お手伝いする時間がありますよ」という受容的なメッセージになる。今は,大丈夫であっても,関心を持っている人がいるということを当人が知っておくことは,最悪の時の大きな助けになる。声かけをすることはそれがきっかけで,意味のある会話につながることがある。
WHOでは,ゲートキーパーは,ある人が自殺をもくろんでいるかも知れないことを同定する立場にある人は誰でも該当するとして,以下のような立場の人が,ゲートキーパーになる可能性があるとしています。
  • プライマリケア,メンタルヘルス,救急医療の提供者
  • 教師や養護教諭,その他の学校スタッフ
  • 地域リーダー
  • 警察官,消防士,その他の初期対応者
  • 軍関係者
  • 福祉関係従事者
  • 聖職者及び宗教上のリーダー
  • 民間療法ないし代替療法士
  • 職場の人事スタッフと上司←



→WHOは,現時点では,ゲートキーパートレーニングと,自殺や自殺企図率を減少させることとの決定的な関連性は明らかではないとしながらも,自殺予防における人材育成事業のベストプラクティスとしています。今回は,わずか2時間の文字どおりのミニ研修会でしたが,今後は,トレーニングプログラムの充実と実務者に対するコンサルテーション体制を確保して行くことが求められます。
(文責:花岡正憲)
ゲートキーパーミニ研修会
       国際ソロプティミスト高松
3月17日(火)12時30分より,高松市桃花苑において,国際ソロプティミスト高松会員13名出席のもと,ゲートキーパー研修会が行われ,マンインドファースから講師を派遣しました。国際ソロプティミストは,A Global Voice for Women(女性のためのグローバルボイス)をテーマに,女性と女児の生活の向上のためにチャリティイベントや寄付活動を行なっている団体です。
マインドファーストの活動紹介に続き,自殺予防対策事業におけるゲートキーパーの位置づけと役割について解説を行ないました。
傍観者にならず,直観を大切にして,声かけを行ない,意味のある会話を行なうこと,さらに,直観とは何か,意味のある会話とはなにかについて,マインドファースト監修のファクトシート「自殺を考えている人とその家族や友人のために」を示し,以下の5つの大切な質問にそって,その意義を説明しました。
① 自分で命を絶つことを考えているのですか?
② 最低1から最高10まであるとして,死にたいと思うのは,どれぐらいの強さですか?
③ これまでに,死のうとしたことがありますか?
④ 今,自殺の計画がありますか?
⑤ 将来の自分が想像できますか?
終わりに,オーストラリアで2009年からはじまったユニークな自殺予防運動「RUOK?(アーユーオーケー?)」を紹介し,今後のソロプティミストとマインドファーストのコラボレーションを訴え,研修を締めくくりました。
熱心に耳を傾けていただいた出席者からは,「どの程度の研修を受けたらゲートキーパーになれるのか」との質問もあり,この課題に真剣に向き合おうとする姿勢が伝わってきました。
これは,“あなたもゲートキーパーの輪に入りませんか?”と呼びかけれ,限られた時間での研修を受けても,すぐそうした役割が取れるものではないという問題提起とも言えるでしょう。今回のゲートキーパー研修は香川県の企画によるものですが,これからの自殺予防対策における人材育成のあり方を問われていることは確かなようです。
(文責:花岡正憲)
第121回理事会報告
日 時:2015年3月9日(月)19時00分~21時00分
場 所:高松市男女共同参画センター 第7会議室
事務連絡並びに報告に関する事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 香川県共同募金会の助成事業に関する事項:香川県共同募金会より,平成28年度事業の助成事業の要綱が届き,当会が申請する方向で継続審議となった。
第2号議案 2015年度自殺予防関連事業の情報収集に関する事項:事務局より,新たな情報は得ていないとの報告があった。
第3号議案 活動費規定に関する事項:担当理事が原案を作成中であり,継続審議となった。
第4号議案 家族精神保健相談員資格制度施行細則に関する事項:担当理事が原案を作成中であり,継続審議となった。
第5号議案 2015年度事業計画及び予算案に関する事項:事務局より2015年度予算案が提出された。単年度の収支差額としてはマイナス1,165,000円の予算となり,普及啓発事業のマインドファースト通信は2か月に1回の発送の予算とすることが承認された。また,寄付金の具体的収入見込み,ピアサポートラインの予算,相談事業予算,電話のナンバーディスプレー,インターネットのプロバイダー料金,相談室の賃借料などについて議論がなされ,継続審議となった。
第6号議案 相談事業およびマインドファーストの活動の広報に関する事項,第7号議案 居場所づくりに関する事項,第8号議案 2015年度役員改正に関する事項,第9号議案 調査研究事業「子どもの喪失体験について」に関する事項:いずれも審議未了。
編集後記:自殺予防や未遂者支援に大切なことは,当人が困っている問題や自殺する気があるかなどについて,ストレートに尋ねることとされます。自殺について語ることは,自殺を行動に移す可能性を下げます。ただ,この時留意しておくべきことは,絶望や救いがない感情を表現させることは避けることです。これから起こりもしない将来を語ることは,思考レベルの問題であっても,それが現実と思いこんで,自殺行為につながることがあるからです。戦争は,老人が始め,若者が死に,女性が泣き,そしてまた老人が語ると言われます。戦争の事実や過去の戦争を語ることは,これからの戦争の抑止につながります。ところが,ある時,若年老人がこれからの戦争や「戦争のつくりかた」を語りはじめるようになることがあります。これからの戦争の仕方を語ることは,閉塞感,絶望感の中で自殺の仕方を語るに似て,これから起こりもしないこと,起こさなくてもよいことが,現実になるというおそれがなくもありません。戦争の事実を語ることと,〇〇事態などと言葉遊びともいえる思考レベルの話しであっても,これからの戦争を語ることは,全く次元が異なることだと思います。(H)