障害者差別解消法の死角~精神科強制医療~

マインドファースト通信編集長

花岡正憲

2013年12月4日,国会は,障害者基本法や障害者差別解消法の成立に伴い,国内の法律が条約の求める水準に達したとして障害者権利条約の批准を承認した。2013年6月,「障害を理由とする差別の 解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が制定され,2016年4月1日から施行される。全ての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け,障害を理由とする差別の解消を推進することを目的としたものである。障害のある人に対する不当な差別的取扱いを禁止し,行政機関に対して合理的配慮の提供を義務づけている。

障害を理由とする差別とは,障害を理由として正当な理由なく,サービスの提供を拒否したり,制限したり,条件を付けたりするような行為を言う。また,本法における合理的配慮とは,障害者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合に,社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮であり,かつその実施に伴う負担が過重でないものとされている。

社会的障壁とは,①社会における事物(通行,利用しにくい施設や設備など)②制度(利用しにくい制度)③慣行(障害のある人の存在を意識していない慣習,文化)④観念(障害のある人への偏見)など,障害がある人にとって,日常生活や社会生活を送る上で障壁となるようなものとされている。

精神障害者については,なお社会的偏見や誤解がある中で,障害者差別解消法の施行にあたり,ここでは特に精神障害者医療対策における制度上の欠陥を指摘し,関係者の議論を呼ぶことを期待したい。

精神保健福祉法第20条では,任意入院を基本とすることが定められており,精神科病院の管理者は,精神障害者を入院させる場合においては,本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならないとされている。一方,同法第33条関係では,「精神科病院の管理者は,次に掲げる者について,その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは,本人の同意がなくてもその者を入院させる

ことができる」とあり,第33条の1には,「指定医による診察の結果,精神障害者であり,かつ,医療及び保護のため入院の必要がある者であって当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの」とある。

すなわち,入院医療に関する当人の同意を取ることは,病院管理者の努力義務にしか過ぎず,当人が入院を拒んでも,家族等の同意によって,強制的に入院医療が行われてしまう。病院管理者や家族等の都合で当人の入院や退院の時期が決められるため,日常生活や社会生活の中断が起こりやすい。

世界に類のない多くの長期在院者を生む大きな要因として,こうした制度上の欠陥が早くから指摘されてきた。いまだ改善されないのは,精神障害者を危険視し,病状の悪化を意思能力の低下と結びつけがちな,他の障害者にはない差別があるからに他ならない。

2014年4月1日,保護者制度が廃止され,医療保護入院の要件を精神保健指定医1名の診断と家族等のうちいずれかの者の同意に変更された。保護者の責務が軽減された分,本人の同意を必要としない家族等の代諾による非自発的入院への敷居が下がった側面も否定できない。

障害を理由とする差別の解消と言う点でも,社会的障壁を取り除くための合理的配慮と言う点でも,わが国の精神障害者医療対策は,障害者差別解消法との乖離がますます大きくなっている。精神障害者には,地域や在宅で治療を受ける権利が保障されておらず,この国は,精神障害者を本当に地域で見ていく気があるのか疑問を抱かざるを得ない。精神障害者入院医療制度と障害者差別解消法との整合性が問われている。


第136回理事会報告

日 時:2016年1月14日(土)18時30分~20時30分
場 所: オフィス本町(高松市本町9-3白井ビル403)
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
審議事項

第1号議案 平成27年度自殺対策事業の実施見込額調査に関すること:事業計画書の収支予算書に基づき,現時点における事業ごとの支出状況について確認作業を行った。←




→第2号議案 自殺対策支援情報等の登録に関すること:3月の自殺対策強化月間に備えて,内閣府が運営する「支援情報検索サイト」に既に登録済みの情報について, 2月3日(水)締め切りで,県障害福祉課精神保健・人材育成グループから登録事項確認並びに変更に関する登録様式が送付されてきた。必要事項を記入して担当者にメールでの提出することで承諾された。

第3号議案 次期事務局体制に関すること:今後の経理事務作業は,オフィス本町で行なうこと,オフィス本町のパソコンへの会計ソフトをインストールする作業並びにインターネットへの接続は,AIYAシステムのサポートを得て実施することで了承された。また,領収書等証拠書類の管理と帳簿への入力作業,並びに郵送物等の確認作業については,週2日,一回概ね3時間を目安に,事務作業に専従する職員を雇用ないし委託契約する方向で人材を当たることが承認された。

第4号議案 事務局のメールアドレスに関すること:当面は,理事長メールアドレスで対応すること,合せてinfoメールも理事長が管理することで了承された。

第5号議案 介護労働安定センターに対する技術援助に関すること:過日,同センター支部長から理事長にこの件について連絡があった。本件については,双方になお認識の共有が必要な余地があるとの判断から,技術援助担当理事があらためて,協議の場を持ってみることで了承された。

第6号議案 ボランティア役務の評価に関すること:香川県の男女参画・県民活動課担当者から,現時点では,NPO法人会計基準協議会の見解では,ボランティア役務は,PST(パブリックサポートテスト)において,寄付金に算入しない旨の連絡あった。収支面では,ボランティア役務評価額は,寄付金科目に計上されるが,今後,このことに留意して,寄付金活動を行なうことで了承された。

第7号議案 家族精神保健相談員資格制度施行細則に関すること:最終的詰めの作業のため,現在,本細則改正案を作成中であることが担当理事から報告があり,継続審議とすることで了承された。

第8号議案 心の健康オープンセミナーに関すること:次回ファミリーカウンセラー会議において協議を行なうことで了承された。

第9号議案 マインドファーストの登録商標に関すること並びに第10号議案 ストレスチェックの義務化を受けた新規事業に関すること,審議未了

第11号議案 メルマガに関すること:これまでのところ当法人からの情報提供のため,メールアドレスの使用の承諾を得ている者について,広報普及担当理事が,メールにて記念シンポジウムのお知らせをすることが了承された。

第12号議案 家族療法家族支援地域ワークショップに関すること:日本家族研究家族療法学会が,標記の事業への助成を行なっている。これについて,ファミリーカウンセラー会議において,実施の意向を諮ってみることで了承された。


第137回理事会報告

日 時:2016年2月8日(月)19時00分~21時00分
場 所:高松市男女共同参画センター 第7会議室
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 平成27年度自殺対策事業実績報告に関すること:香川県から執行状況の確認のため2月15日までに実績報告の提出を求められた。事業計画書の収支予算書に基づき,1月末現在における事業ごとの「実施内容」と「事業効果」,「達成状況」,「対象経費の支出」について確認作業を行った。

第2号議案 精神保健福祉ネットワーク会議・自殺予防に向けたメンタルヘルス向上に関する研究プロジェクト「交流集会」に関す

ること:標記事業については案内文を確認のうえ,MFメーリングリストで周知することが承認された。

第3号議案 次期事務局体制に関すること:領収書等証拠書類の管理と帳簿への入力作業,並びに郵送物等の確認作業については,週1日,一回概ね5時間,毎月理事会で会計報告をする(時間外手当の支給)を条件に,事務作業に専従する人材を当たることが承認された。

第4号議案 ホームページに関すること:若者のメンタルヘルス,フォークス21のホームページの内容に関しては,花岡理事が藤澤氏に連絡することで了承された。

第5号議案 認定NPO取得記念シンポジウムに関すること: 1月18日(月)に運営委員会を持ち,講師会議を2月17日(水)19時から高松市男女共同参画センターで実施することが決まった。現在,13名の申し込みがある。今後,小中学の養護教諭宛に,記念シンポジウムのちらし送付する方向で了承された。

第6号議案 寄付金プロジェクトに関すること:プロジェクト会議を1月31日にオフィス本町で行った。寄付金ブロシュールについて,イメージ画像を理事及びファミリーカウンセラーから募る,記念シンポジウムで配布する,振込用紙への印字をAIYAシステムに依頼することが承認された。また次年度の活動計画として,MFが地域で可視化できるようなキャンペーンの案が出された。

第7号議案 居場所づくりのチラシに関すること:審議未了

第8号議案 介護労働安定センターに対する技術援助に関すること:今後の対応として,同センターからMFに技術援助に関する講師派遣依頼があれば,調整することで承認された。

第9号議案 家族精神保健相談員資格制度施行細則に関すること:審議未了

第10号議案 事業の広報・広告に関すること:高松市より,来年度,市報の紙面縮小により広告が難しくなるとの説明があった。今後,広報媒体や広報依頼について検討することで了承された。

第11総会の準備に関すること:来年度の事業計画について,ファミリーカウンセラー会議でもアイデアを募ることが了承された。

第12号議案 マインドファーストの登録商標に関すること及び第13号議案 ストレスチェックの義務化を受けた新規事業に関すること:審議未了

編集後記:◆2007年JR駅構内で,91歳の認知症の男性が電車にはねられ死亡した事故で,JR東海は振替輸送にかかった費用などの賠償を求める裁判を起こし,1審と2審はいずれも家族に監督義務があるとして賠償を命じていました。3月1日,最高裁判所は,認知症の人や精神的な障害がある人の家族などが負う監督義務について「同居しているかどうかや介護の実態,それに財産の管理など日常的な関わりがどの程度かといった生活の状況などを総合的に考慮するべきだ」という判断を示しました。そのうえで,「このケースでは妻も高齢者で介護が必要なうえ,長男も仕事のため離れて暮らしていたことなどから認知症の男性を監督することが可能な状況ではなかった」と指摘して,家族の監督義務や賠償責任を認めない判決を言い渡しました。◆今回の判決は,認知症の人の家族などが無条件に賠償責任を負うのではなく,客観的に判断して監督することが難しい場合,責任を問われないとするものです。監督責任の基準が示されているわけではなく,今後類似のことが起きた場合,個々に司法判断がなされるという点で,認知症など介護現場への波紋は少なくありません。◆高齢者の5人に1人が認知症と言われ,2014年度,鉄道事故死亡者287人中認知症の者は22人です。認知機能や判断力が低下した障害者が社会と出会うとき,こうしたことは,どこででも起こり得ることです。家族の監督義務だけが問われ,被害者が加害者に損害賠償を請求するという図式だけで解決できるものでしょうか。公共交通機関も,公共性を理由に,いつまでも,これまでのような独善的運営が許されるものではないでしょう。介護の社会化と在宅介護の基本を損なわないために,こうした複雑な社会課題への政治の責任が問われています。(H)