マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファースト事務局:
〒760-0032 香川県高松市本町9-3白井ビル403
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ゲートキーパー普及啓発事業
丸亀市健康福祉部健康課
2016年10月26日(水)午後2時45分~午後4時,丸亀市消防署7階会議室において,丸亀市主催によるゲートキーパー普及啓発事業が行われました。丸亀市健康課から「丸亀市のこころの健康について」,香川県精神保健福祉センターからは「香川県のゲートキーパー普及啓発事業」について,それぞれ解説があった後,マインドファーストからは,「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」と題する講義が行われました。出席者は,市民会議のメンバーや市職員64名,マインドファーストからは,講師として花岡が派遣されました。以下は講演の要旨です。
自殺関連行動の幅は広く,生きたいという意図と,死にたいという意図がバランスをとっていると見ることができる。他の人には取るに足らない出来事であっても,自殺を考えている人にとっては,こうしたバランスが崩れ,事態を左右することがある。
WHOは,ゲートキーパーとなりうる人として,プライマリヘルス・メンタルヘルス・救急医療の提供者,教師やその他の学校スタッフ,地域リーダー・警察官・消防士・その他の初期対応者,軍関係者,福祉関係従事者,スピリチュアル及び宗教上のリーダーや代替治療従事者,人事スタッフとマネージャーなどをあげている。ゲートキーパーは,ある人が自殺について思いを巡らしているかもしれないことに気づく立場にある人であれば誰でも該当する。
自殺を考えている人の心理として,ネガティブな「自動思考」によるうつ気分が背景にある。ネガティブな思考やイメージを追い出そうとするとかえって居座ってしまう。支援を行なう上で,こうしたネガティブな思考に留意しておくことが大切である。
自殺には,その危険因子と防御因子がある。自殺予防にとっては,防御因子について理解を深めることが,危険因子以上に大切である。自殺を思いとどまらせる「生の本能」,葛藤解消のためのスキル,家族や地域社会とのつながり,支援へのアクセスのしやすさ,受けている支援や医療の質などが大きく関係してくる。
自殺をしたがっている人とそうでない人を見分ける明確な方法はない。しかし,目安として以下のようなサインや心の健康を損なうきっかけを知っておくと役に立つことがある。
「アルコールや薬物の使用が増える」「モノに対する関心の低下」「交友関係や付き合いが少なくなる」「睡眠パターンの変化」「自傷行為」「突然の人格変化/気分の変化」「危険を顧みない行為/不注意ミス」「強迫行為が目
立つ」「うつが続いた後の急な上機嫌」「無感動/楽しめていたことへの興味の低下」「繰り返される身体的不調」「死や自殺がテーマの文学ないし芸術作品への関心」「自分に対する非現実的期待」「乱れたセックスまたはセックスへの関心の低下」「過剰な依存,まとわりつき」「食習慣の変化/体重変化」などがあげられる。
相談における受けとめ方として,シンプルで,直接的,明示的な表現を通して,情緒ではなく思考レベルへ働きかけることが望ましい。否定的な感情を表現させすぎる問いかけや,否定的な感受性を喚起させる曖昧な言葉や態度は避けた方が良い。研究によると,自殺の危険性がある人に「自殺について語ること」が,自殺の可能性を下げることが明らかになっている。
自殺未遂者及び既遂者には,精神医学的にみて,なんらかの病気ないし障害の状態にあると認められるものが,90%以上あるとされる。しかし,「精神疾患」という言葉は,強いラベリングで,スティグマを受けやすい表現であるため,自殺防止のためには,うつ,精神作用物質乱用,反社会的行動などについて,メンタルヘルス問題として取り組むことが適切である。メンタルヘルスへの取り組みが,自殺率を50%減少させたというデータがある。
講演終了後に,会場からの質問がありました。「自殺が,40代,50代に多いということは,40代がどう言う年代であるか,自分としてはよく分かっているつもりである。若い人にこれをどう伝えるかが大切である」と言うものでした。
これについては,「ライフサイクルから見て,40~50代が,個人生活,家庭生活,社会経済生活面から,どういうステージであるか,若い人たちに啓発していくことが大切である」と言った趣旨の回答を行ないました。
ゲートキーパー普及啓発事業
さぬき公共職業安定所
2016年11月16日(水)午前10~午前11時30分,さぬき公共職業安定所において,ゲートキーパー普及啓発事業が行われました。出席者は,11名でした。
香川県精神保健福祉センターからの解説の後,失業等精神的ストレスを抱えた来所者への対応を行っている職員に対して,自殺予防と精神的危機への対応について,マインドファーストから講師として派遣された花岡が,基本的な事柄に関する講義を行いました。
まず,自殺は精神疾患としてとらえるのではなく,メンタルヘルス関連問題として理解するために,ストレスを引き起こすライフイベントについて触れました。
さらに,以下のような状況にある人が情緒的精神的危機に陥りやすいとして解説を行いました。
自殺関連行動の幅は広く,以下の5つの局面があること,したがってできるだけ早い局面での支援や介入が必要であること,そして,自殺が起きてしまったときは,遺族やその他の関係者(友人や職場の同僚など)に対する事後のケアが大切であることを説明しました。
次に,自殺は予測が難しい複雑な人の行動ではあるが,予測に役立つ因子があるとして,以下のようなことがあげられると解説しました。
また,専門家の利用に際しては,治療法のガイドラインが,クライエントとそのニードに倫理的に同期していることが,極めて重要であるとして,いくつかの留意点について解説を行いました。
最後に,職員自身のメンタルヘルスを維持するための方策の一つとして,自分自身のサポートネットワークが機能しているかどうかを時々チェックしてみる必要があるとして,「あなたのサポートネットワーク(重要な人,システム,活動)との関係」に関する気づき(awareness)の演習を行いました。なお,公共職業安定所の職員については,人事院が作成した職員セルフケア教材「心の健康について」と題する教材を活用することを勧め講義を終えました。
第148回理事会報告
日 時:2016年11月14日(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 サバイビング参加希望者への連絡に関すること:参加者から「他の誰かが参加するときに,自分も参加したいので連絡をしてほしい」という声があったことについて,以下のことが了承された。①花崎理事が参加希望者と電話,郵便,メール等で確認する。②今後は,グループ(サバイビング,おどりば,ピアワークス)担当が参加者に継続参加の希望を聞き,希望があれば案内方法について確認する。現在,会場が特定されていないこともあり,毎回,案内することでグループミーティングへの参加もしやすくなる。③特に重大な喪失を体験したサバイビング参加者には,毎回連絡を行い丁寧な対応をする。
第2号議案 精神障害者ピアサポーター活動申込みに関すること:香川県の担当者から送付された活動申込書については,申込者の個人情報の扱い,活動の狙い,ピアサポーターの役割,活動経費等について明文化された活動実施要項等が添付されていないため,花岡理事がピアサポーター活動について,香川県担当者に確認することが了承された。
第3号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:花崎理事から第1回企画運営会議の報告があった。会議では以下の内容が決定した。①役割:委員長 花崎,副委員長 花房及び福森,会計 岡本及び内海,サポーター 大西 ②会議の日程と場所:第2月曜13:30~15:30(12月は5日,おへんろの駅こくぶで開催,14時から,お遍路さんの接待の練習会を設ける)③ブロシュールを作成し,学校や病院に配布するため,花崎氏がその案を作成する。④また,「ユーザーの居場所作りに関する企画運営会議運営マニュアル」を作成することが承認され,花岡理事がマニュアル案を作成後,理事間メールで検討して,次回の企画運営会議に臨むことが了承された。
第4号議案 香川県共同募金会テーマ募金に関すること: 担当者から,香川県共同募金会テーマ募金準備会議で検討・修正したちらしの再校が示され,概ね了承された。11月17日に連絡会があり,花岡・花崎理事が出席する。
第5号議案 2016年度香川県自殺対策基金事業に関すること:①子どもの喪失体験の支援事業に関すること 中添理事から今年度の取り組みについて報告があった。対面型の支援で,相談の申し込み及び会場等はその他の相談と同様とすること,ブロシュール作成・印刷を年内に行い,来年1月中旬から2月にブロシュールを配布する。相談料は,対象が困窮した家庭が予測されるため無料とすることが了承された。②各事業のブロシュール作成に関すること 次回理事会までに,島津理事長が各ブロシュールの在庫を確認する。ブロシュールの内容は,各担当が修正し,配布は,子どもの喪失体験の支援事業の発注に合わせて行うことが了承された。
編集後記:占いもできないトランプ,ポーカーフェイスどころか地を丸出しのトランプの出現で,日本政府は周章狼狽気味ですが,根拠のない楽観主義や相手の顔色ばかりを気にした生き方は,(国家的)自殺行為につながりかねません。こうした時こそ,変わらないものは何か,確実なものは何か,自分(自国)がどうありたいかを見極め,未来予測をすることが問われています。(H.)