技術援助

2016年度
ゲートキーパー普及啓発事業

香川県学校薬剤師会

講義の写真

2017年3月9日(木),香川県学校薬剤師会の会員51名を対象にゲートキーパー普及啓発事業が行われ,マインドファーストから島津が講師として派遣されました。

初めに,主催者の香川県精神保健福祉センターから,香川県の自殺の現状とゲートキーパーの役割について解説があり,続いてマインドファーストから「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」と題して講義が行われました。

講義では,“なぜ自殺してはいけないのか”という根本的な問題を考えてもらうために,「自殺をめぐる文化的背景」や「自殺にまつわる誤解」「自殺の危険因子」,「自殺の原因」「うつ病について」「“死にたい”という気持ちをどう理解するか」「自殺企図と自傷行為」「ゲートキーパーのストレスケア」について話をしました。

参加者は,学校薬剤師としての活動もされながら市中の薬局で薬剤師として働いておられる方が大半で,薬を買いに来た方と対応する中で“死にたい”という話をきくこともあるそうです。実際に,気になる人への具体的な声のかけ方についての質問もあり,ゲートキーパーとしての役割を

担う存在としての意識をもって,熱心に聴講されていました。

(マインドファースト理事長 島津昌代)

三豊市健康福祉部福祉課

2017年3月10日(金),三豊市危機管理センターにおいて,三豊市職員39名を対象に,ゲートキーパー研修が行われました。

香川県精神保健福祉センターからの自殺の現状についての解説の後,マインドファーストから講師として派遣された花岡が,「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」と題して講義を行ないました。講義の概要は以下の通りです。

日本における自殺は主要な死因の一つである。自殺率のピークは1990年代であったが,2000年から2011年の間に6.3%減少した。10万人あたりの自殺率は20.9人で,OECD平均の12.4人と比べて未だに高い数値なので,なお要注意であるとOECDは勧告している。

最近,また問題になっている過労自殺は,業務における強い心理的負荷によるメンタルヘルス問題として,国民一人ひとりがこの問題に理解を深めることが必要である。

今のところ自殺や自殺企図を減少させる決定的な方法は認められていないものの,ゲートキーパートレーニングは,ベストプラクティスである。

オーストラリアでは,自殺率を下げるため,友人や同僚や恋人とつながっていることが大切であるという理解を全国民に啓発する活動「RUOK?」が行われている。人は,困難を抱えているときに限って,自分の感情を表にあらわさない。したがって,なんらかの兆候が見られるまで待つ必要はない。自分の直感を信じ,気になる人に対して,←




→「アーユーオーケー?」と声かけをすることが大切である。

世間一般の自殺をタブー視する傾向や自殺ということに対する激しい感情反応などから,自殺をめぐって,事実とは異なる考え,すなわち自殺神話がある。これらは,不正確で誤解を招く危険性がある。

自殺の危険性の気づきのポイントとして,自殺の危険因子以上に,防御因子について理解を深めておくことが大切である。米国CDC(1999)では,防御因子として,以下のようなものをあげている。
・家族や地域社会とのつながり/・援助探索行動に対する介入の多様性と支援へのアクセスのしやすさ/・精神疾患,身体疾患,精神作用物質乱用への効果的なケア/・現在受けている医学的及びメンタルヘルスケアにおける支援の質/・問題解決や葛藤解消のためのスキル,暴力的にならずに議論できるスキル(怒りのコントロール)/・自殺を思いとどまらせ,自己保存本能を支える信念。

自殺の可能性がある人への接し方として,大切なことは,・問いかける/・その気があるかストレートに尋ねる・/こちらから出向く/・迅速に動く/・あなたが心配していることを伝える/・希望を与える,など。

(マインドファースト理事 花岡正憲)


高松市精神保健ネットワーク会議

~自殺未遂者支援関連機関との連携~

マインドファースト理事長 島津昌代

2017年2月15日(水),高松市保健センターにおいて高松市精神保健ネットワーク会議が開催されました。この会議は関係機関や支援機関の連携を図ることを目的としたもので,市・県の自殺対策担当者と警察関係,消防関係,医療関係,民間団体が参加して,2012年度より開催されています。今回は,自殺対策基本法の改正に伴い,自治体も基本計画をつくらなければならないこと,全国的に自殺者が減っている中で高松市では増加したことをふまえて,「自殺企図者や自殺未遂者の心理を知り,各関係機関の役割や対応を考える」をテーマに事例検討が行われました。

事例は,警察が動いて自殺未遂者を保護した後の対応について検討するもので,県立丸亀病院院長の長楽鉄乃祐先生を助言者に迎えて,未遂者の心理を考えながらどのような働きかけができるか,ワンストップ支援センターのよう

な情報の共有がスムーズにできるシステム作りが必要ではないか,といったことが話し合われました。自殺の危険因子として最も重要なものが自殺未遂歴であると言われていますが,その事実をあらためて強く認識させられる機会となりました。

第152回理事会報告

日 時:2017年3月13(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 2016年度香川県地域自殺対策強化事業に関すること:①ピアサポートライン研修期間(4回)の,研修生への支払いについて;1時間500円プラス旅費を支給することで承認された。②各事業のブロシュールおよび啓発カードの発送について;近日中に全てが揃うため,3月26日午前10時からオフィス本町において発送作業を行うことで承認された。

第2号議案 ピアワークスの通帳に関すること:前任者の名義(預金金額は0円)を現担当者に変更することで承認された。

第3号議案 2017年度事業計画に関する事項:①ファミリーカウンセラー養成講座基礎コースについて;ファミリーカウンセラー会議において決めていくことで承認された。②ファミリーカウンセラー養成講座シニアコースについて;経費はテーマ募金の収益を当てることで承認された。③10周年記念シンポジウムについて;2018年1月28日(日)香川県社会福祉総合センターにおいて開催することで承認された。④花崎理事の業務について;花崎理事より現在進めている「居場所作りプロジェクト事業」と「ピアワークス」に集中したいとの希望があり,現在担当している業務の中,事務局関係を上間理事,ピアサポートライン関係を花房理事が担当することで承認された。

第4号議案 2017年度総会に関すること:2017年度総会を6月19日19時から開催,会場は四番丁コミュニティセンターを18時~20時で予約することで承認された。

第5号議案 旅費規程に関すること:旅費規程案を花岡理事が作成することで承認された。

編集後記:過労死とは,「働き過ぎが原因となって引き起こされる死」とされています。過労死は,1980年代後半に社会問題となり,国際的にも「karoshi」(death from overwork)として紹介されています。しかし,我が国の過労死は,英語圏の国にはなお理解しにくいところがあるのか,‘Japanese work themselves to death’などと,「日本人は死に至るほど自分を働かせる」といった表現が見られることも少なくありません。過労は,単に労働時間の長さだけでなく,ワーク・エンゲイジメントが高まらない我が国特有の企業文化や雇用環境と関係があることは否めません。「1億総活躍」などと,スローガンを掲げられると,個々の事情はさておき,国の意向を「忖度(そんたく)」して働いてしまう,こうした非自発的労働も,ストレスになりかねません。(H.)