天気とご飯の話しかできない私

マインドファースト理事 田村尚隆

私は,他の人と会話するときに天気とご飯の話しかできない。「今日はいい天気ですね。」を初対面の人に,身近な人には「昨日,焼きそば食べたんですよ。」みたいな感じだ。話される方も至極どうでもいいとかんじているだろうし,私自身どうでもいいと思う。しかし,どうして「天気」と「ご飯」に終始してしまうのだろうか。

断っておくが,私自身がひどい人見知りだったり,めちゃくちゃなコミュ障というものではない。初対面の人とも臆せず話をできるし,仕事の必要な話なら厳しい話もしている。この「天気」と「ご飯」が出てくるのは,世間話をしなければならない日常の隙間なのだ。そして,この時,相手を不快にさせたりしないかと考えてしまう―自分を困らせる悩みの種でもある。

・あなたの事情を知らなくて,傷付く私

仕事場の人と何気なく家族の話になった時だ。皆,子供や親の介護など世代世代の話をしていた。ふと誰かが「夫婦円満のコツとかはあるんですか?」と職場の60代の女性の方に話すと,一瞬たじろいだ様子で「今の旦那さんは,優しいからね。」と返してきた。

後で,聞いたことだが,その方は一度離婚を経験し,再婚して,今の旦那さんといるらしい。誰だって相手の事情など知らず,不快にしてしまうことはある。このことでこの女性も気を悪くはしなかった。しかし,この何気ないやり取りの中に,「コツの前に,性格の相性の方が大事よ!」という意見を読み取ってしまう。

・何を話すのかという大問題

会話の中では,問題なく円満に回っていても,自分の内面では傷付いているというときがある。先の例でも,私が会話以上の意味を読み取って傷ついてしまったという話だ。

こんなことを考え出すと,ほとんど何の話もできない。家族の話なら,死別や離婚や母子・父子家庭や虐待などネガティブなイメージ,趣味の話なら無趣味とか言えない趣味やら相手に無理させていないかなと心配になる。

・人の言葉と自分の内面

社会一般で話されることと人それぞれに思うこととの間で感じることは違う。社会で語られる言葉は,個々人の内面ではまた違う意味になる。その個人性に触れてしまうと「不快にさせたのでは?」と私の内面は揺れ動いてしまう。これが疲れ,困ってしまう。相手の大変な経験の辛さに勝手に共感している自分がいるのだ。

・悶々としながらも日常

その間に揺れながら,私の結論は悶々とするというものだ。割り切って,気にしないというのはできないし,気にしすぎても疲れるだけだ。しかし,この共感は私に深く根付いているようだ。そして,人と話すときに「天気」と「ご飯」を持ち出しながら,日常を繰り返している。


新理事就任のご挨拶

マインドファースト理事 吉田 修

マインドファースト会員の皆様におかれましては,ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。←




→新理事就任にあたり,ご挨拶を申し上げさせていただきたく存じます。

私は,産業カウンセラーとして,またメンタルコーチとして活動しており,基本的にはメンタルヘルス関連の相談に対して対応しています。

では,なぜ,自分はカウンセリングなどをしているのか。

この問いを明らかにすることでご挨拶とさせてください。

ある日,たまたま見つけたラジオの人生相談の録音をネットで聴いていました。

二十代前半の女性から,コミュニケーションが下手なので,どうしたら上手になるでしょうかという相談でした。

お母さんは統合失調症でお父さんはアル中。家庭の味といえば冷ややっことそうめんぐらいしか思い出にないといいます。

家を追い出されたり,追い出したり,兄弟から殺されそうになったり,父親との死別などありとあらゆる悲しい出来事が次から次に語られていました。

それでも,何とか学校を卒業し,就職もして一人で暮らしていけるようになり,事情があって,再就職しようとするのですが,自分は人との距離感がわからないといって,相談をしてきたというわけです。

相談者はコミュニケーションが下手ということですが,理路整然と身の上を語り,回答者の質問に対しても不器用ながら的確に受け答えをしていました。

私は,この話を聴いていて,何というすごいことなのだろうと思いました。

こんなに悲惨な家庭で育っているにも関わらず,何とかまともに生活している上に,立派に人とコミュニケーションが取れているからです。

そして,何より素晴らしいのは,回答者の方が,相談者の方の状況をとても深く理解した上で,相談者を励まし勇気付け,これからの生活の指針を与えていらっしゃったことです。

私のやりたかったことは,こういうことだったんだと思いました。

なんとなく本当にやりたいことがわからず,うっかりこの歳にまでなってしまいましたが,この世の中をなんとか生き抜こうとする立派なクライアントさんが世の中にはおり,これに呼応するような立派なカウンセラーがいるということを目の当たりにして,こういう世界に自分も居たいなぁと思うようになりました。

もし,何かお役に立てるようなことでもあれば,これに勝ることはありません。

どうぞよろしくお願いいたします。

第157回理事会報告

日 時:2017年7月10(月)19時10分~21時05分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 今年度の役割分担(事業担当)に関すること: 理事の交代に伴い,2016年度の役割分担表を踏まえ, 2017年度の「担当理事」の見直し(一部暫定案 別表あり)を行なった。なお,「担当者」については,別途ファミリーカウンセラー会議において協議することで了承された。

第2号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:担当理事の交代に伴い,本事業企画運営委員会の開催が行われていなかったが,すでに,2017年度企画運営委員の委嘱は完了している。今年度の主たる事業課題は,カフェスタイルの居場所の開設である。前任担当理事花崎から業務の引継ぎを行なった上間理事が,理事長名で企画運営員と理事の合同会議の招集を行なうことで了承された。

第3号議案 子供の喪失体験の支援に関するファミリーカウンセラーを対象とした研修に関すること:新規事業であることから,担当理事の柾が研修骨子案をファミリーカウンセラー会議に提示することで了承された。

第4号議案 オフィスの清掃に関すること:外来者接遇の観点から,公共空間である相談室については,基本的には相談担当者が整理整頓を行なうこと,トイレについては,現在,利用頻度が少ないとは言え,最低2週間に1回は,清掃を行うことが決まった。

第5号議案 オフィスの活用に関すること:特定非営利活動法人マインドファースト「オフィス本町」使用規則,同使用細則,同管理運営規則等(2011年12月12日施行 ホームページ会員サイトに掲載)に基づき行うことを確認した。

編集後記:日本で措置入院中に身体拘束を受け,10日後に死亡したとして,ニュージーランド人男性の遺族が7月19日,都内で記者会見し「日本は患者の人権を著しく侵害している」と訴えました。長時間体を動かせない時に起きるエコノミークラス症候群による肺塞栓を起こしていた可能性があるとのことです。精神保健福祉法では,入院中の者につき,その医療又は保護に欠くことのできない限度において,必要な行動制限を行うことができると定められていますが,近年は多用される傾向にあります。厚生労働省の調査(2014年6月)では,身体拘束されていた患者は1,0683人に上り,10年前から倍増しています。精神保健福祉法運用マニュアル(厚生省保健医療局 平成12年4月)の「行動制限(隔離,身体的拘束)の具体的運用」には,「指定医は,隔離,身体的拘束が1回の指示で1週間を超えないよう適時診察し,指示を出す。主治医が指定医でない場合においては,指定医が1週間に1回以上,開放観察の状況について診察し,その所見及び行動制限継続の要否を署名のうえ必ず診療録に記載する」とあります。つまり,指定医は, 身体拘束について1週間の連続指示を出し,1週間に一度診察すればよいということです。マニュアルそのものが,身体拘束の濫用を容認するものになっています。(H.)