2017年度香川県自殺対策連絡協議会

マインドファースト理事 吉田 修

去る平成29年9月7日(木)に香川県庁本館において,「平成29年度 香川県自殺対策連絡協議会」が行われました。

全国の自殺件数に関しては,人口10万人当たり18.5人となりましたが,これは実に交通事故による死亡者数の約3倍もの数に相当し,OECD平均の12.4人に比べ明らかに高い数値と捉え,要注意であるとOECDは勧告しています。

国はこの是正勧告を受け,平成28年度の自殺対策基本法の一部改正になったことに伴い,地方公共団体への地域自殺対策計画の策定が求められたため,主に,この計画案の骨子についての説明がなされました。

まず,国の本年度大綱の概要としては,疲労・生活困難・育児介護疲れ・いじめや孤立という「『生きることの阻害要因』を減らし,自己肯定感・信頼できる人間関係・危機回避能力等の『生きることの促進要因』を増やすことを通じて,社会全体の自殺リスクを低下させる」こと。

そして,都道府県ごと,同時に市町村毎に細かく自殺対策計画を定め,計画策定に関するモデル市町村を選定し,先行的な計画策定を実施し,ノウハウ等を水平展開するとのこと。

また,精神保健的な視点のみならず,様々な部署との有機的連携が望まれ,さらに民間団体との連携や支援も強化されるとのことです。

これらをかみ砕いて換言すると,

  1. 自分を好き・信じている。
  2. 人は信頼できる。
  3. 自分と他人を信頼し,困ったときはいつでも互いに協力し合える。

このようなことが社会全体に行き渡っている世の中

を作ろうということなのだと思います。

もっとも,国並びに地方公共団体において,多様な価値観を尊重するという立場から,共同体や幸福というものを理念的に語ることは難しいでしょうし,特定の価値観を強要することもできないのですが,これは私たち民間団体のカウンセリングの現場において,クライアントさんの生きる地域性と価値観に寄り添う形で,具現化していくこととして任されているのではないでしょうか。

マインドファーストでも今年度の自殺予防対策の取り組みとして,自殺予防カウンセリング「心の危機の相談(クライシスサポートカウンセリングCSC)」,自殺予防メンタルヘルスユーザーの居場所「ぴあワークス」,電話相談支援事業:ピア・サポートライン(PSL),ファミリーカウンセラー養成講座,相談員研修,自殺で大切な方を亡くされた人のグループミーティング「サバイビング」,新規事業として「子供の喪失体験の支援」,さらに,ゲートキーパー養成講座の講師派遣,世界メンタルヘルスデーを記念しての街頭キャンペーンなどを計画しています。

ご参加の有識者の方からは「国も本腰を入れ始めており,今後の展開に期待できる」との意見も出ておりましたので,マインドファーストとしても,今後の取り組みを加速したいと考えています。

10月10日は,世界メンタルヘルスデー

2017年のテーマは,「職場のメンタルヘルス」

WFMH(世界精神保健連盟)は,1992年,10月10日を世界メンタルヘルスデーと定めました。当時の事務局長が始めたプロジェクトが,今日では,全世界の関心を集めるようになりました。WFMHは,毎年,テーマを掲げ,情報を提供してきました。多くの国の人々が,こうした情報に基づいて,イベントや宣言を行なってきました。メンタルヘルスデーは,メンタルヘルス教育や権利擁護などの意義を喚起するためのものです。今年は,世界メンタルヘルスデーの25周年です。

今年の世界メンタルヘルスデーのテーマは,「職場←




→のメンタルヘルス」です。

ワークアンドライフバランスは,多くの働く人たちにとっての優先課題です。今日,職場と労働力は変化の途上にあり,労働力に対する従来の見方は通用しなくなっています。多くの労働者は,健やかさを大切にした職場を好むようになっています。

Mentel Hearth in the Workplace

働く人の10%が,うつ病で休みを取ったことがあり,一人当たり平均36労働日が失われています。うつ病では,94%の人に,集中力,決断力,記憶力の障害など認知機能の障害がみられ,職能や生産性に顕著な機能不全をもたらします。50%のうつ病の人たちが,治療を受けていません。43%の管理者が,より良い政策を望んでいます。人々は職場においてメンタルヘルス問題をオープンにすることが難いと感じています。しかし,メンタルヘルス問題に対する免疫がある人はだれ一人としていません。

WFMHは,職場におけるメンタルヘルスと福祉を支援するという世界的合意ができることを目標としています。具体的には,以下に示す通り,メンタルヘルス問題を抱えた人たちにとって,職場内外での支援が得られやすくなること,メンタルヘルスに留意して業務が遂行できるように職場環境を改善することです。

  • 就業者と雇用主に対するセルフケアと健康に関する情報の提供
  • 職場におけるメンタルヘルスに関連した否定的態度や偏見への対処
  • 一人ひとりの労働者や雇用主が,精神的自己回復力を促す行動をとれるようになるための働きかけ
  • メンタルヘルスを支援するための雇用現場における理解

職場のストレス量を軽減するためには,以下の5つの考え方が,大きな効果があるとされています。

  1. 継続して行うこと:仕事に関連したストレスの要因となる心理社会的危険因子に取り組むための具体的な介入を行なう。そのために,学術的研究や専門家との連携のもとに啓発活動を行なう。
  2. 予防:仕事と関連したメンタルヘルス問題に対する適切な予防活動は,大きな効果が期待できる。集団と個人両面からの仕事に関連したストレスの原因の特定と解決が必要である。
  3. 包摂性:意思決定への参画の機会を多くすることで,より大きな満足とより高い自尊感情が得られやすくなり,労働者のメンタルヘルスと生産性の両面で利点が多くなる。職場における意思決定への参加は,上からの要請といった心理社会的マイナス因子の影響をやわらげ,心理社会的緊張の軽減につながる。
  4. 管理:包括的な労働安全衛生管理は,予防とヘルスプロモーションへの取り組みを確実なものにする。その他の労働安全衛生においても,リスクアセスメントと効果的管理は必須である。このプロセスに働く人自身の参加は欠かせません。
  5. 職場文化:ILO(国際労働機関)は,労働形態と社会環境の大切さを指摘している。人事政策として,信頼と確実性と仲間意識は,仕事上の関係を強固なものにする。今日,世界の労働者は,労働組織と労働関係において深刻な変化に直面している。労働者は,今日的ワークアンドライフバランスを確保する

ために,これまでにない大きなプレッシャーの中にいる。私たちの健康,私たちの福利,そして私たちの暮らしのために,そして,職業上のストレスから受けるインパクトを低減するために,これまでにもまして,仕事における「協同」が大切になっている。(WFMH 世界メンタルヘルスデー2017から要約 翻訳 花岡)

世界メンタルヘルスデー
街頭キャンペーンのお知らせ

マインドファーストでは,10月8日(日),10~14時,高松市兵庫町中央通り東出口とJR高松駅サンポート側で,世界メンタルヘルスデー街頭キャンペーンを行います。

第159回理事会報告

日 時:2017年9月11(月)19時00分~21時05分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの居場所作り事業に関する事項:企画運営委員内で,条件に合う場所などの情報を2週間に一度共有することとし,居場所に適した物件を求めるためのチラシを作成することで了承された。

第2号議案 世界メンタルヘルスデーに関する事項: 「世界メンタルヘルスデー啓発活動ご協力のお願い」チラシに関して,鑑文の確認を行い了承された。

第3号議案 相談支援事業:同行援護に関する事項:フォークス21の具体的なサービス内容がわかりやすいブロシュールの改定版案を吉田理事が作成することで了承された。

第4号議案 活動費規定の改定に関する事項:第2条に相談事業に同行援護が追加されることで了承された。第4条 活動経費に関する金額に関する別表について,同行援護を追加し,訪問料金は交通費とせず活動費とすることで了承された。

第5号議案 ファミリーカウンセラー養成講座シニアコースに関する事項:以下の要領で標記養成コースを開始することが承認された。①日時:2018年2月12日(月・祝)10:00~16:00) ②会場:香川県社会福祉総合センター第1中会議室 ③講師:石原孝二氏(東京大学大学院総合文化研究科准教授,ODNJP共同代表),植村太郎(精神科医,神戸労災病院精神科部長,家族研究・家族療法学会評議員,ODNJP運営委員),石橋佐枝子(姫路獨協大学助教,ODNJP運営委員) ④講師謝金,旅費及び宿泊費に関すること ⑤定員:30名 ⑥その他:オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)の後援事業とする。

第6号議案 NPO認証取得10周年記念シンポジウムに関する事項:2018年1月28日(日),香川県社会福祉総合センター大会議室において開催される標記シンポジウムの企画運委会議の日程をファミリーカウンセラー会議において決めることが了承された。

第7号議案 子どもの喪失体験の支援に関するファミリーカウンセラーを対象とした研修に関する事項:審議未了

第8号議案 10月サバイビング会場変更に関する事項:四番町コミュニティセンターの使用ができないため高松市総合福祉会館の使用ができるか確認をし,可能であれば10月について会場を変更することで了承した。

編集後記:関係者が結論を持って臨む話し合いは,主張と主張のぶつかり合いになって出口が見えてきません。「対話」は,結論を急がない話し合いを重ねる中で,新しい認識が発生し,関係者にとって納得がいく出口が見えてくると言う大きな力を持っています。国際社会の緊張を解消するためにも,圧力か,対話かと言う二者択一的思考でなく,対話を基本とすべきです。(H.)