マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファースト事務局:
〒760-0032 香川県高松市本町9-3白井ビル403
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2017年度ゲートキーパー普及啓発事業
香川県消防学校初級幹部科
12月6日(水)9:00~11:50(水),香川県消防学校初級幹部科において,香川県精神保健福祉センター主催による2017年度ゲートキーパー普及啓発事業が行われました。
当日は,精神保健福祉センターからの自殺の現状と取組みについて説明があった後,マインドファーストから講師として派遣された島津と花岡が,「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」と題して,講義と演習を行ないました。受講対象者は23名で,多くが救急隊員として実務経験のある者でした。
以下は,前半の講義の概要です。
自殺関連行動の幅は広く,生きたいという意図と,死にたいという意図がバランスをとっていると見ることができる。他の人には取るに足らない出来事でも,自殺を考えている人にとっては,こうしたバランスを崩し,事態を左右することがある。
自殺関連行動には,①自殺思考,②自殺の前兆,③自殺の仕草,④自殺未遂,⑤自殺既遂の5つの局面があり,できるだけ早い局面での支援が望ましことは言うまでもない。
日本の自殺者数は,近年減少傾向にあるが,日本の自殺率は,OECD平均の人口10万人当たり12.4人と比べ20.9人となお高く,要注意であるとOECDは注意を喚起している。
今日我が国で社会問題になっている過労自殺と過労死は,過重労働からくる心身の極限状態であり,働き方の見直しに加えて,心身の危機にある人がアクセスしやすい相談窓口の整備が欠かせない。
自殺には,自殺をめぐる神話(事実とは異なる間違った考え)は少なくない。例えば,自殺したがっている人に,
そのことを尋ねたり,自殺のことを話題にしたりするのは,自殺の危険性を高めることになると信じられているが,そうではない。自殺を話題にすることは,コミュニケーションの機会になり,人は自殺の意図についてストレートに尋ねられると,不安は隠さなくても良いのだと思えるので,考えていることや感情を表現しやすくなる。それだけ自殺の危険性が少なくなる。いずれにしても自殺神話は,不正確で誤解を招く危険性がある。
自殺には,危険因子と防御因子があるが,自殺予防には,防御因子への理解を深めることが大切である。例えば,家族や地域社会とのつながり,怒りをコントロールして議論できるスキルなどがあげられる。また,医療やメンタルヘルスケアを受けてさえいれば良いのではなく,その質が防御因子としては大切である。
ゲートキーパー(GK)は,ある人が自殺について思いを巡らしているかもしれないことに気づく立場にある人は誰でも該当する。それだけに,自殺の可能性がある人に対してGKがどのような問いかけをするかが大切になってくる。
その基本的枠組みは,自殺や当人が困っている問題について,ストレートに尋ねることである。「自殺することを考えているということですね?」「本当に,自分で命を絶つということなんですね?」「それほど,あなたを落ち込ませていることがなになのか,聞かせてくれますか?」などである。
既遂または未遂が起きたときの対処として大切なことは,原因さがしや犯人さがしをするのではなく,「どのような事情があったのか分からないが,そのときは,死ぬ以外に,他の方法が見つからなかったのかも知れない」というのが,支援者の基本姿勢として望まれる。
講義の終りに,サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジで自殺予防活動を行なってきた警察官の取
組みのビデオの供覧を行ないました。
後半の演習では,自殺未遂で救急隊への出動要請があったときを想定して,自殺目的で服薬した仮想事例への対応についてグループディスカッションを行いました。緊迫した救急現場では,身体的管理と搬送判断のプレシャーが伴います。意見交換や質疑では,こうした中でGKとして,冷静に対話を行うことがいかに大切であるかを確認できたと思っております。(文責:花岡正憲)
SNSは自殺予防に有効なツールになりうるか
今年10月末,神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった。アパートの住人で,殺人容疑で逮捕された容疑者は,インターネット交流サイトを使い自殺について書き込みをしていた。自殺に関心があった女性などがこの書き込みに返信し接点が生まれ,誘い出して自宅で殺害,遺体を遺棄することを繰り返していたと言う。
ネット上には多様な交流サイトがある。すべての人がオープンな意見の交換を望んで利用しているわけではない。人々の苛立ちや欲求不満が持ち込まれる場にもなる。テーマを掲げた交流サイトも,相手の顔は見えず,別の意図を持った「なりすまし」があっても不思議はない。嗜癖化したもの,歪んだ自己愛を満たすもの,人の弱みにつけこむものもあるだろう。悩みを語っても寄り添う言葉はなく,人格攻撃やバッシングを受けることもある。必ずしも弱者に優しいとは言えない。スレッドの管理者には,都合が悪いコメントを削除したり,特定の主義や考えを封殺するようなコメントを返したりする者もいる。
日本の15歳から34歳までの若年者の死因は,自殺が一番である。今回の事件を受けて,若者は,電話相談よりもネット相談を求めているため,ネット相談の充実を図る必要があるという意見がある。メール相談は,電話相談のような即時性のある対話はできず,ライブ感が乏しい。チャットやLINEは,短文の情報交換には向くが,生活者の息づかいが感じられない。
ネット上では,個人が特定され,拡散されやすい。そうしたことを承知でアクセスし,情報発信する人もいる一方,交流サイトにアクセスしただけで,痕跡が残り,トレーサビリティは個人に及ぶ。こうしたことから,SNS空間を警戒し,ICTの活用に慎重になっている一部の若者も見られる。今日,SNS空間は無限に広がりつつある。果たしてSNSが自殺を考えている人の無力感に呼応し,リジリエンスを引き出すだけのツールになり得るかどうかは疑問である。
そもそも電話相談も,相談員の匿名性や相談の一回性に固執しているものが多く,特定の相談員の反復継続した相談が受けにくい。「正体不明の誰か」への相談という点では,電話相談も相手の顔が見えない相談に変わりはない。自殺予防は,本来身近なところで,人と人との協調行動が活性化される関係づくりや地域づくりを地道に行っていくことを課題にすべきであろう。例えば,人と会ってコーヒーを飲む。別れるときに「またね」と言って一緒にコーヒーを飲む約束ができる。こうした人がいることの方が大切だ。「この人」と呼べるつながりがあれば,人は死に急ぐことはないはずだ。
(マインドファースト通信 編集長 花岡正憲)
第162回理事会報告
日 時:2017年12月11日(月)19時00分~20時30分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:12月5日14時から16時,オフィス本町において第5回居場所づくり企画運営会議が開催された。出席者は,石橋,上間,岡本,山奥の4名であった。「空き家/空き室」探しのチラシが完成した。この事業に関心を持ち、参加希望の申し出者があった。
第2号議案 ブロシュールの改訂に関すること:家族メンタルサポートセンター フォークス21のブロシュールについては,これまでの相談事業の追加・拡充の過程で改訂版が作られていたため統一感がなく,レイアウト等の見直しを行なった方が良いと言う意見がある。一方で,現行のブロシュールは相談利用者のガイダンスとして利用しやすいと言う意見もある。ファミリーカウンセラー会議においても,ブロシュールの改訂について,意見集約を行ない,吉田理事が原案を示すことで了承された。また,「おどりば」「HOPE」のブロシュールも年度内に増刷することが確認された。
第3号議案 平成29年度(平成30年度助成事業)テーマ募金に関すること:12月29日10時から,オフィス本町において発送準備作業を行うことで了承された。
第4号議案 ファミリーカウンセラー養成講座シニアコース(オープンダイアローグセミナー)に関すること:12月10日午前10時から11時オフィス本町において,チラシ発送準備作業を行ない,AIYAシステムに県下285か所の関係者・関係機関へ発送を依頼した。
第5号議案 当法人のFacebookへのコメントに関すること:マインドファーストのFBに,誹謗中傷等のコメントや当法人のミッションやメンタルヘルスの向上等と関係がない投稿・情報等があった場合は,FB管理者の責任で削除等の必要な措置をとること,並びに管理者の「固定された投稿」にポリシーを明記しておくことが了承された。
第6号議案 傾聴ワークショップ(仮称)の定期的開催に関すること:相談支援活動における「傾聴」について,なお,関係者の間で理論並びに実践レベルでの共有が充分行われているとは言い難い。当法人が主催する「傾聴ワークショップ(仮)」の定期的開催について,吉田理事が企画原案を提示することで了承された。
編集後記:「#MeToo」を合言葉にしたセクハラの告発が世界に拡大しています。米国の女優アリッサ・ミラノが,セクハラや性暴力を受けた女性が「Me too(私も)」と書けば問題の重大さを多くの人に分かってもらえると呼びかけたことが始まりと言われます。元TBS記者にレイプされたとして記者会見を開き,『Black Box』を出版したジャーナリスト伊藤詩織さんも大きな存在です。準強姦罪容疑で逮捕状が発行されながら,直前で逮捕が取りやめになりました。11月21日には捜査の在り方などを検証する国会議員の超党派の会が発足,世間の関心を集めています。一方で,セクハラや性暴力を受けた人をバッシングする女性も少なくありません。同じ女性として,セクハラや性暴力は,人としての尊厳が大きく傷つけられる「差別」だという認識が乏しいからではないでしょうか。「差別」は,差別されている側が「これは差別だ」と声を上げないと,なかなか解消に向かわないことも事実です。これは,2016年4月に我が国でようやく施行された「障害者差別解消法」の成立過程を見ても明らかです。#MeTooをカミングアウトだけに終わらせず,こうした差別の根源に迫る具体的な取り組みにつなげて行けるかどうかが問われています。(H.)