夢をカタチにするために

マインドファースト理事長 島津昌代

昔,現代物理学の最先端はほとんどオカルトであると聞いてとてもビックリしたことがある。宇宙には今の科学では説明できない物質やエネルギーが溢れていて,それをなんとか説明しようとすると,今わかっていることでは到底語れない。したがって,そこを説明(理論化)しようと,今無いものを考え,それを観測や実験で探していくことになるわけで,「ある」と思わなければ絶対にそれは無い,つまり,物質化させるためにはまず人の思念が必要だということであった。

確かに,最初にイメージがないとモノはできない。現実の世の中でも,“こんなものがあれば良いな”という思いがあって,その希望を叶えるモノが生み出されてきた。ドラえもんは22世紀からやってきて,昭和の子ども達にたくさんの夢を与えた。そして,ドラえもんが見せてくれた道具のいくつかは,携帯電話,ドローン,インターネット,各種アプリを通して既に実現されている。

さて,こうした夢を実際の形にしていくにあたって,その過程ではどれほどの苦労があっただろう。思いつくだけなら簡単だが,思いつきを実際の形に落とし込んでいくことは簡単ではない。だからこそ,「夢を叶えるために必要なことは,あきらめないこと」となるのだろう。

昨年度から私たちは「居場所」づくりのために動き出している。心を病んだり疲れた人が,その状態から自分のペースで回復しようとしている時に気軽に集える場を,メンタルヘルスユーザー自身の手で作り出そうとしているの

だが,現実に向かい合うと出てくる課題は少なくない。人の思いもさまざまで,大きな願いは共通していても実際のものにしていくには細部のすり合わせが大事になる。時には強いリーダーを求めたくもなる。こうした課題に向き合っていくためには,私たち自身がもっと「話し合う」というコミュニケーションスキルを磨いていくことが必要なのだろう。

2月12日に私たちはオープンダイアローグセミナーを開催するが,人が関係の中で生きている存在である限り,オープンダイアローグという対話を重視した治療的アプローチを学ぶことは,日々の生活の中でも活きてくる筈である。夢という思いを自分達の手で形にしていくために,その過程で学ばされることは多い。「人間は生きている間,ずっと勉強だ」と言った先人の言葉をあらためて噛みしめている。


問われるべきは何か~もう一つの人権問題

ハリウッドの有力プロデューサーのセクハラ問題をきっかけに,アメリカのみならず世界各地で「#Me Too」ムーブメントが広がった。元TBS記者から性的暴行を受けたとするフリージャーナリストの伊藤詩織さんの訴えが,海外メディアで大きく報じられている。伊藤さんの場合は,被疑者に対する逮捕状が出されながら,上からの命令で逮捕状執行が止められた。日本では性的暴行やいやがらせを受けた女性への理解は依然として低く,被害者にとって非常に厳しい社会だと指摘している。←




→伊藤さんの事件では,もう一つ忘れてはならない視点がある。

就職相談で飲食を共にした女性が,目の前で意識を失えば,男女を問わず人として取る行為は決まっている。起きていることは,生命に危険が及ぶことかも知れないことだ。医療機関へ付き添うとか,救急車を呼ぶとか,相手の身の安全を図る行動をとるのが普通の感覚だろう。仮にはじめから下心があったにしても,不測の事態が起きると,そうした私情は後退し,今ここで自分はどのような行動をとるのがふさわしいかという言う感覚に引き戻されるはずである。

私情を交えず,まず目の前の事象を冷徹に見ることが身についているジャーナリストであればなおさらだ。それをせず,ホテルの自室に連れて行ったところに,確信犯的なものを疑われても仕方がないものがある。ジャーナリストも人として間違いを犯すことはあろう。しかし,仕事柄,人権感覚が涵養されている人物としての期待があることも事実である。海外メディアがこの問題に関心を寄せるのは,ジャーナリストが関与した人権に関わる出来事だと言うこともあろう。

男女差別や人権問題は,人が生きる上で本質的な問題だという意識の低さは,日本のマスメディアと国民の問題としてあるようだ。海外メディアは,日本の人権感覚はどうなっているのだと問いかけているとも言えよう。

(マインドファースト通信 編集長 花岡正憲)

第163回理事会報告

日 時:2018年1月15(月)19時00分~20時30分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:花崎から,1月8日開催の第6回居場所づくり企画運営会議の報告が以下の通り行われた。これまで委員をつとめた内海氏が辞退の意向である。「空き家・空き室募集」のチラシについては,片原町,栗林エリアの四国新聞への折り込み配布(手数料1エリア9,180円)を検討中のところ,既に印刷済みの3,000部(印刷代金6,986円)については,人物写真が使用されていることから,個人のプライバシーに配慮して,折り込み配布ではなく,手渡しのみに使用し,新たなチラシ案を作成中である。また,備品等の購入を2017年度内に完了し,居場所に設置することが喫緊の課題となっている。これに対して,理事者からは,チラシ案については,空き家提供者側の動機づけや意向に配慮した方向で再検討の余地があるとの意見が出された。また,スーパーバイザーの花岡からは,企画運営会議においては,居場所への思いを具体化するために,企画書及び支出計画書を議論のベースとし,予算の範囲内で,柔軟な執行に努めることが望ましいとの意見が述べられた。

第2号議案 ブロシュールの改訂に関すること:理事長からフォークス21のブロシュール改訂案が提示され説明が行われた。大筋で原案が承認され,変形A4版2,000部の印刷見積りを業者に依頼することで了承された。 「HOPE」は従来版を増刷,「おどりば」は近日中に花岡が改定案を示すことで了承された。

第3号議案 テーマ募金に関すること:1月15日時点では,共同募金会から募金者の領収書は届けられていない。今後届けられる募金者の領収書を確認し,順次礼状を添えて寄付者に郵送する作業を島津が行うことで了承された。

第4号議案 ファミリーカウンセラー養成講座シニアコース(オープンダイアローグセミナー)に関すること:1月15日時点で16名の受講申込者があり,うち9名の受講料納入が確認できている。過日,島津が会場確認を行なった。なお,プロジェクター使用に当たっては,プロジェクター側が「VGA」端子になっているため,持ち込みのパソコン側映像出力用端子の形状を確認しておく必要があるとの報告があった。3名の講師はいずれも前泊にてセミナーに備えるため,セミナー前日打ち合わせ会を持つことで了承された。また,修了証書は花岡が作成することとした。

第5号議案 記念シンポジウムに関すること:2018年度事業として行われる標記の特別講演講師は,著書『人口減少社会という希望』等の著者で,現京都大学こころの未来研究センター教授 広井良典氏候補者を第1候補者として当たってみることで了承された。なお,開催時期は,カウンセラー会議においても意見を聞くこととした。

第6号議案 傾聴ワークショップ(仮称)に関すること:吉田理事から年間を通して定期的に標記事業を開催する案の説明があり,2018年度事業として位置づけるため,同理事から企画並びに収支予算書を示すことで了承された。

編集後記:ガラパゴス化とは,国際標準からかけ離れている日本の産業の現状を批判的に表す新語です。大陸から隔絶された環境下で,生物が独自の進化を遂げたエクアドルのガラパゴス諸島の生態系に重ね,2007年ごろから使われるようになったと言われます。大学教育や医療サービスなどの分野でも,ガラパゴス化の懸念が高まっているという声があります◆ここに日本の特異性を示す一つの数字があります。「1.8%対18%」。世界の人口中1.8%を占める日本に,世界の18%の精神科病床があることを示す数値です。戦後精神科病床の増床が続く中で,いまだに多くの人が長期の入院を強いられています。こうしたことが,心の病や精神障害者に対する偏見の温床になっていることは否めません◆「がん患者は働かなくていい」と言う発言のあった自民党の受動喫煙慎重派に押されて,既存の小規模店は「喫煙可」になる骨抜き案が厚労省から示されました。受動喫煙対策は,WHOの4段階評価で日本は最低ランクです◆旧優勢保護法(1948~1996)下では,全国で2万5千人が不妊手術を強いられました。当時15歳だった女性が国に損害賠償を求める訴えを起こしました。これまで周りの差別的な視線の中で,声を上げられなかった事情があります。国連の委員会や障害者団体が保証や調査を求めてきましたが,いまだ国の謝罪もなければ救済措置策も講じられていません◆日本は,人権問題でも,周回遅れのものが少なくありませんが,何周走っても国際標準に追いつかないのは,ガラパゴス化に他ならないからでしょう。(H.)