「香川県自殺対策連絡協議会」参加報告

マインドファースト理事 吉田 修

自殺対策とは,自殺をしようとする人を如何に行政として減らす仕組みを作ることである。

この仕組みづくりには二つの側面があり,自殺しようとする人を「いち早く発見すること」,次にこれらの人を「いち早く医療機関への受診につなげる」ということに要約される。

このため,本協議会では,医療機関の医療従事者とこの周辺の職種,たとえば,大学の公衆衛生の研究者などが多数参加している。

ところで,「いち早く発見すること」を行う人のことをゲートキーパーというが,これには二通りの解釈があり得る。

機能としてゲートキーパーの役割を果たしているものと,行政における制度的に養成されたゲートキーパーである。

機能としてのゲートキーパーには,既に以下のものがある。

  1. 民間資格の心理カウンセラー・メンタルコーチ
  2. 産業カウンセラー
  3. 臨床心理士
  4. 精神保健福祉士等

行政は自殺対策として制度としてゲートキーパーを養成し,自殺対策につなげる方針を打ち出しており,これは従来のうつ病対策に特化した対策方針から前進しているといえるが,では,既存のゲートキーパーの機能を果たしてき

たカウンセリングを行う各種専門家との連携という点では,全く具体的な方針が見えなかった。

具体例を言うと,産業カウンセラーは,本協議会で全く認知されていない。ましてや,民間資格としての心理カウンセラーやメンタル・コーチは実態の不確かなものとして存在さえ知られていない。

これらはなぜ起こり得るのかと考えた場合,以下の点が考えられる。

  1. そもそも自殺は病気として医療の問題と捉えられていること。
  2. カウンセリングの実態と効果が見えにくいこと。
  3. 自殺対策としてカウンセリングの有効性が前提されていないこと,等が考えられる。

本質的な問題として,そもそも自殺を病気として捉えられるがどうかという疑問がある。例えば,デュルケム以来のアノミー学説では,社会の価値観が大きく変化した後に社会の動向に対応しきれない者が自殺するという政治経済的側面が指摘されており,現に近年の自殺者数は医療の発達とは無関係に推移している。また,近年の健康心理学の研究成果として,ハンス・セリエ以来のストレス学説に基づくメンタルヘルス理論によって過度にストレスが強調され,自殺を増加させている可能性も指摘されている。

このような点を考慮したうえで,各種カウンセリングを行う機能としてのゲートキーパーの果たすべき余地は大きいと思うのだが,本協議会の前提としてどのようにとらえられているのか,注意深く見守りたいと思う。←




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産業カウンセラーってなに?

例によってあるお役所が主催する会合に出た。

自殺対策というと,現状・推移分析があって,自殺者における動機や環境等に関する原因分析があって,これらの統計が示されたうえで,これに対応した対策が縷々述べられる。

いわゆるメンタルヘルス対策というのはこういうもの。具体的対策としては,ゲートキーパーという苦しそうな人を見つけて声をかけ,必要なら病院に行くことを促し,通院しているかどうかを確認しつつ,つかず離れず見守るということをする人を増やそうということになる。

このゲートキーパー,会社や役所などの人が働く現場で言うと産業カウンセラーが担う役割。

ところで,私は最近テレビなどに出る機会があるため,肩書の産業カウンセラーについて聞かれる機会がしばしばある。

産業カウンセラーってなに?

大体,ゲートキーパーのような内容についてお話しすると,ふむふむと理解してもらえたりする。

カウンセリングとかいうものについてどんなものかというのは,当事者にでもならないと解らないだろうし,ましてや産業+カウンセラーというものがどのように結びつくのかさえ分からないのは一般の人にとって無理もないことだろう。

ところが,この会合で,産業カウンセラーの立ち位置について質問をしたところ,自殺対策の立案をする担当者から

「産業カウンセラーって何ですか?」!!!
つまり,役所や会社などの人が働く現場内部で自殺対策がどのように行われているかという実際について担当者は全く知らないということだし,自分の役所内では全く自殺対策が行われていないということだし,苦しそうにしている人に対して,初期段階でのカウンセリングなど行われていないということなのではないだろうか。

そういえば,私は産業カウンセラーだが,たまたま自殺対策をしている団体の理事をしているからその場にいただけで,産業カウンセラー協会そのものは会合に呼ばれていない。

それと,学生に対するメンタルコーチングのようなものはどうなんですかと質問したところ,それはメンタルという言葉使い方がおかしいと他の医療関係の参加者から横やりが入った。

「メンタルというのは精神障害の隠語なんですよ」!!!!

腰を抜かすというのはこういうことなんだと思った。

なんだろう,いろんなことが考えられるが,世の中の仕組みというものを垣間見たというか,闇を見たというか。

元気で健康でと自らの可能性に視野を広げることと,科学的医学的視点からの健康では,ずいぶんと見えているものが違うようだ。

このことは,私たちのようなものとして注意しておかなければならないことだと考える。

(マインドファースト理事 吉田 修)


第165回理事会報告

日 時:2018年3月12(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:チラシを作成し,新聞折込みとして配布することが提案されたが,レスポンス率等の経験値から費用対効果が見込まれないのではないかとの案あり。ダイレクトメール・メルマガ・HP,また四国新聞等のマスコミを使うことを検討した。

第2号議案 ブロシュールの改訂に関すること:フォークス21のブロシュール改訂版についてすでに発注した。なお,「おどりば」は後刻,花岡が改定案を示され,情報等を盛り込んだ。

第3号議案 テーマ募金に関すること:3月12日現在で,414,000円であるとの報告。

第4号議案 総会の準備に関すること:前回同様番町のコミュニティセンターを予定。

第5号議案 オフィスのカギの管理に関すること:利用規定を作ることとした。

第6号議案 傾聴ワークショップ(仮称)に関すること:企画提案書を提出することとした。

第7号議案 NPO認証取得10周年記念シンポジウムに関すること:来年の年明け以降でどうだろうかとの提案あり。香川県社会福祉総合センター大会議室7階午後の開催を目指す。

編集後記:NPO法人では,総会や理事会の議事録は,法人活動の大切な歴史の記録として残し,ネット上でも公開して言います。書き換えたり,同じ議事録を複数作成するようなことはありません。学校法人「森友学園」に関する財務省の決裁文書改ざんで,もっとも怒らなければいけないのは,行政府の長である首相です。なぜこうしたことが起きたか,全容を解明する責任も首相にあることは言うまでもありません。それができないのは,何かできない理由があるのでしょうか。(H.)