報告

香川県子ども・若者支援地域協議会
実務者会議


2018年7月24日(火)10:00~12:00,香川県庁北館3階303会議室において,平成30年度香川県子ども・若者支援地域協議会実務者会議及び実務者研修会が開催された。

子ども・若者育成支援推進法に基づき,社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者に対し,様々な機関がネットワークを形成し,それぞれの専門性を生かした支援を行っていくため,教育,保健福祉・医療等各分野の機関などを構成員とする「香川県子ども・若者支援地域協議会」が設置され,6月13日に代表者会議が開催された。今回の会議はこれを受け,協議会の実務担当者を対象として開催されたものである。

香川県下からは,75の関係団体が参加,マインドファーストは民間団体の一つとして参加した。

会議の冒頭,開会挨拶で,香川県健康福祉部子ども政策推進局子ども政策課長豊島貴子氏が,児童虐待,いじめ,不登校,引きこもりなど,子ども・若者の問題を複合的に捉え,各分野の連携協力を図るために先に持たれた代表者会議を踏まえ,今回実務者会議を開催したものであると述べた。

前半の実務者研修会では,「子ども・若者育成支援施策についてー子ども・若者支援ネットワークづくりー」と題して,内閣府政務統括官(共生社会政策担当)付参事官(青少年支援担当)付主査中山麗氏が,講義を行なった。

以下は,講義の要約である。(この項,子どもは「子供」と表記されている)

1.子供・若者育成支援施策の概要:子供・若者育成支援(以下「育成支援」)の主な省庁は,文科省(学校教育,青少年教育施設を所管),厚労省(保健,福祉,就労,児童虐待防止を所管),警察庁(非行防止,犯罪被

害防止,有害環境浄化を所管),法務省(資質鑑別・矯正教育,更生保護を所管),そして,これらの省庁の総合調整を行う内閣府からなる。

育成支援行政の枠組みは,平成21年7月制定,22年4月施行の子ども・若者育成支援推進法が基本となっている。この法律制定の背景には,児童虐待,いじめ,少年による重大事件の発生,有害情報の氾濫など,子ども・若者をめぐる環境の悪化やニートやひきこもり,不登校,発達障害など子ども・若者の抱える問題の深刻化により,従来の個別分野における縦割り的な対応では限界であると言う現状がある。

2.子供・若者の現状:昭和29年に刊行され今日にいたる子供・若者白書平成30年版によれば,①家庭・プライベートを優先したい若者が増加 ②転職を否定的に捉える若者は少ない ③7割以上の若者が就職後における学びの継続を希望 ④多くの若者が,十分な収入が得られるか,老後の年金はどうなるか,きちんと仕事ができるか,仕事と家庭生活の両立はどうか,勤務先での人間関係がうまくいくかなどの不安を抱えている。

いじめ,不登校,児童虐待の相談件数は,依然増加傾向にある。諸外国の若者との比較では,日本の若者は,自己肯定感が低い,自国のために役立つことをしたいと思っている若者が多い一方,「社会現象を変えられるかもしれない」と考える者は少ない。青少年育成活動に関わっている国民は僅か7.1%である。

3.子供・若者育成支援における地域ネットワークづくり:困難を有する子供・若者や家族への支援において,①基本的な方針は,年齢階層で途切れさせない縦のネットワークと多機関が有機的に連携した横のネットワークの構築を通じた支援,家庭等に出向き支援するアウトリーチ(訪問支援)の充実 ②基本的な施策は子供・若者の抱える課題の複合性・複雑性を踏まえた重層的な支援の←




→充実,子ども・若者支援地域協議会の設置と活用,支援に携わる人材の育成となっている。

4.子供・若者をめぐる最近の動き:①ひきこもりの状態となって7年以上たつ者(対象者は15歳から39歳)の調査によると,平成21年度調査では,16.9%であったが,平成27年度調査では34.7%となっている。今年度中に40歳以上でひきこもりの状態にある者の実情調査を行う ②民法の改正により成年年齢の引き下げを行なうとともに,現行では16歳となっている女性の婚姻年齢を男性と同じ18歳に引き上げる ③ひきこもりをはじめとした困難を抱える子供・若者への対策に注目して,生活困窮者自立支援法を改正する。

後半の実務者会議では,香川県子ども・若者支援地域協議会設置要綱を踏まえ,子ども政策課の担当者から「個別ケース検討会議」実施要項についての説明があった。これは,困難を有する子ども・若者で,複数の機関等が連携して支援を行なう必要がある場合に,関係機関が連携して支援方策を検討するためのものである。支援機関が子ども政策課に申請書を提出し,同課が関係機関へ派遣依頼を行ない開催する。最後に,関係機関の窓口に置き,学校及び県下全生徒に配布する支援機関ガイドブックの作成に向けての説明と協力依頼があり会議を終えた。

日本の若者は諸外国と比べて,自己を肯定的に捉えている者の割合が低く,また,自分に誇りを持っている者の割合が少なく,悲しい,ゆううつだと感じている者の割合が高いと言われます。心理社会的にハイリスクな子ども・若者の背景要因は,単純でなく複合したものとは言え,様々な困難な問題を抱えた子ども・若者に共通するのは,自己肯定感の低さです。子ども・若者支援における主要課題は「自己肯定感の育成」であると考えます。これは,家庭・幼児教育,学校教育,職域における人材育成など,長期的展望の中で社会全体として取り組んで行く課題です。自分に誇りを持てる子どもや若者が育つか否かは,地域社会や国のあり方と深く関わっています。そうした意味で政治の役割は少なくありません。

2018年4月,香川県庁組織の機構改革に伴い,子ども政策推進局が設けられ,その中に子ども政策課と子ども家庭課が置かれることになりました。ハイリスクの子ども・若者への支援において,家族の支援は欠かせません。子どもと若者支援における政策が縦割りにならないために,子ども政策課と子ども家庭課との連携は不可欠です。

(マインドファースト理事 花岡正憲)

第170回理事会報告

日 時:2018年8月6日(月)19時00分~21時10分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略

第1号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:
前回の理事会において,7月3日2018年度第1回居場所づくり運営委員会が開催され,花崎泉委員から退任の意向が表明された。このため,当初から取り組んでいた委員がいなくなり,業務の連続性が失われたため,新たな出発となったとの報告があった。当面,高松市香川町に確保できた個人宅において,概ね週1回居場所を開催するとの報告があり,活動や役割についての報告があった。これを踏まえ,理事会は以下のことを了承した。①居場所づくり専用携帯電話の管理を山奥委員,居場所づくり運営委員会の招集を花崎昇平委員とすること ②委員会へスーパーバイザーを派遣すること ③報告等を理事会に対して行うとのこと ④一定の条件のもとに運営委員会の中で金銭管理をおこなうこと ⑤今後とも利用しやすい居場所の開催場所の開拓に取り組んで行くこと ⑥居場所のスタッフの活動に対する有償化の手当てを検討して行くこと。

第2号議案 傾聴・相談力セミナーに関すること:
担当理事の吉田から案について説明を行った。場所と日時については確定し,TUTAYAレインボーロード店のTULLY’sカフェラウンジにて,10月5日金曜日19時~21時で発足し,当面毎週金曜日に行うこととして了承された。追ってホームページとSNS,マスメディアに向けた広報原稿を作成し提出することとした。

第3号議案 事務局管理業務等の見直しに関すること:法人の事務作業としては,経理事務に加え,オフィス本町の管理,渉外,郵便物の収受,諸官庁等への届け出事務,事務局電話並びにメール等への対応等多岐にわたっている。現在,こうした事務作業の殆どを理事長が行なっているが,理事長の負担の軽減のために,事務量と事務内容を洗い出したものが提出された。今後,専従事務局員の配置も含め継続審議とする。

第4号議案 9月の理事会開催日に関すること:
9月の定例理事会は,1週繰り上げて9月3日(月)の開催とする。


編集後記:厚労省研究班の調査で,スマートフォン・ゲームやインターネットの使い過ぎで日常生活に支障をきたすネット依存の疑いが強い中高校生が全国で93万人に上ることが分かりました。5年前と比べて約40万人増えたことになります。これは中高校生のうちネット依存の疑いが強い生徒が7人に1人という数字です。ネットの使い過ぎの問題として,成績低下,居眠り,遅刻,友人とのトラブルなどがあげられます。6月,世界保健機関(WHO)は,ネット依存のうち,ゲームのやり過ぎで日常生活に支障をきたすようになったものを「ゲーム障害」として国際疾病分類に明記し,精神疾患として認定しました。子ども・若者たちは,今日の社会変容の中でどのような状況に置かれているのでしょうか。単にSNSとのつき合い方だけでなく,その背景に何があるのかと言う視点でこの問題を捉えることが求められます。ネット依存,これも子ども・若者支援において避けては通れない大きな課題の一つです。(H.)