脱“空気を読む”宣言


マインドファースト 理事長 島津昌代

昨年は,ゲートキーパー普及啓発研修会や「こころの健康」出前講座などで,高校生や大学生に「こころの健康」についてお話しする機会を多くいただきました。こうした研修会では,主催者である精神保健福祉センターや保健所の方がアンケートを実施されているので,話をきいてくださった高校生・大学生の感想をうかがうことができ,話をした側にとっても有り難く,参考にさせていただいています。

研修会で話をしながら,またアンケートに寄せられた声を拝見しながら思ったのは,多くの若者が周囲の人の反応をとても気にしているということでした。相手に不快な思いをさせないように一生懸命“空気を読”んでいるのです。その場でかもし出されている空気を乱さないよう細心の注意を払っているとしたら,それはさぞかし疲れることでしょう。

“空気を読む”とは,一体どういうことなのか?「その場の雰囲気から状況を推察する」と辞書に書かれていましたが,つまりは,「言わなくてもわかるだろ?」的な無言の圧力だったり,「そのくらい察してよ」という,一方的な要求の話でもあるように思われます。

確かに,日本の文化には「言わぬが花」とか「それを言っちゃあお終いよ」という,全てを明らかにせずに,余白や余韻,気配を大事にする面があります。そこには見え

ないものや聞こえないものに思いを馳せて,自分の中でそっと想像をふくらませる,そうした慎ましさがあると思うのですが,昨今の“空気を読む”は,なんだか強要されているように感じるのです。

さて,コミュニケーションには言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの2種類があり,非言語的なものがコミュニケーション全体の8割近くを占めていると言われています。実は,日常的に言われている“空気を読む”とは,この非言語的なコミュニケーションを指しています。その場にいる人の表情や話し方,仕草や目線の動き,様々なボディランゲージが,いつの間にか“空気”という表現に置き換えられてしまいました。

“空気”の中には,時代の空気=社会情勢などもあります。今の社会情勢が平和で穏やかとは言い難いことを多くの人が感じていると思いますが,それも日夜,見聞きするニュースから感じ取っているものでしょう。いつ事件や災害に巻き込まれるかわからない,いつどこで戦争が起こるかわからない,そんな不安な思いが掻き立てられる時代だからこそ,得体のしれない“空気”で人を縛るような表現は避けたいと思うのでした。

「空気は“読む”ものじゃない,吸って吐くものだ」というのは,昨年放映されたドラマ(原作はマンガ)の中の主人公のセリフです。名言ですが,さらに正確に言うなら,“吐いて吸う”かもしれません。人は緊張すると息が吐けなくなりますから,まず一息ついて(吐いて)自分のペースでゆっくり周囲を見回したいものです。←


→ゲートキーパー普及啓発事業報告

香川県消防学校専科教育救急科

2020年1月21日(火),香川県消防学校専科教育救急科の生徒37名を対象にゲートキーパー普及啓発事業が行われました。マインドファーストからは,講師として島津と花岡を派遣しました。専科教育救急科に対する本研修会は,今回で4回目です。

主催者の香川県精神保健福祉センターの萬藤保健師から,香川県の自殺の状況について解説があり,引き続き,「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」と題して,マインドファーストによる講義と演習を行いました。

講義では,「自殺とはなにか」「ゲートキーパーの役割」「自殺に関する神話」「自殺の防御因子」「気づきのポイント」「わたしは,なにができるのか?」「自殺が起きてしまったら」「自殺を考えている人の心理」などについて,解説を行ないました。

今回は,日本では10~39歳までの若者の死因の1位が自殺である現状を鑑み,今日の若者が置かれた事情についても解説を行いました。世界的にみて,仕事への移行期間が長くなり,長期間を半依存状態で過ごす不安定な移行過程からくるストレスなどが,精神的健康に否定的な影響を長期的にもたらすと言うこと,そして,内閣府のわが国と諸外国の若者の意識に関する調査によれば,わが国の若者は5人のうち4人近くが,自分の将来への不安がを抱えていると言うことについて触れました。

講義の後,サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジで,橋周辺で数百人の自殺志願者に対処してきた,カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールに23年間努めていたケビン・ブリッグス氏のレポート「生と自殺の間に架かる橋-The bridge between suicide and life-」のビデオの供覧を行ないました。

演習では,7つのグループに分かれ,ワールドカフェを行ないました。「現在の自殺について,何が問題だと思いますか?」「問題の解決のためにはどのような対応が可能ですか?」「あなた自身は何ができそうですか?」について,3ラウンド行いました。

(文責 花岡正憲)

第189回理事会報告

日 時:2019年12月9日(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの「居場所づくり事業」に関すること:12月1日にはREPOS開催された。担当理事の山奥は今年度いっぱいの活動が難しい状態で,スタッフを務められるピアサポーターの養成の必要性を確認した。

第2号議案 テーマ募金チラシに関すること:昨年度の発送先リストを元に,今年度の発送先リストを完成させる。発送準備作業は12月29日10時からオフィス本町にて行う。

第3号議案 傾聴・相談力セミナーのブロシュールの発送に関すること:発送先リストを作成する以前の段階として吉田が作成した法人様向けのサービスガイドについて,ファミリーカウンセラー会議でプレゼンテーションを行って,当法人の活動としての内的な整合性をどうとるか検討すること,別途,ファミリーカウンセラーに対する講習なり相談員研修という形で「傾聴・相談力セミナー」について認知を進めることで了承された。研修の進め方については,ファミリーカウンセラー会議で検討する。

第4号議案 ファクトシートの学習会に関すること:ファミリーカウンセラー会議でやるのか,学習会の日程を決めてやるのかと決定することで了承された。

第5号議案 臨時総会に関すること:12/23日に開催し,新理事の承認を諮ることを確認した。役員変更届けは年内に提出することで了承された。

第6号議案 相談体制に関すること:大阪での社会実験では,LINEでの相談が電話相談の26.4倍の件数となったという報告があるが,当法人としては対面相談にこだわっていくことで了承された。

第190回理事会報告

日 時:2020年1月6日(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの「居場所づくり事業」に関すること:1月の「REPOS」は,1月12日(日)14:00~16:00,高松イオンフードコートにおいて開催を予定している。1月は担当者の都合により1回のみ開催することで了承された。

第2号議案 ブロシュール発送に関すること:相談関係ブロシュール,ピアサポート案内チラシ,傾聴相談力セミナーブロシュール,改訂版おどりばブロシュール及び各種PR(「おどりば」については,開催日時の変更表示を行なう)カード等の自殺対策基金事業の広報資料については,発送先は,病院,行政機関,ハローワーク等285か所,発送作業日は,2月中旬以降に行うことで了承された。

第3号議案 テーマ募金に関すること:1月6日に127か所の発送を終了した。共同募金会のホームページではサイトからの募金が可能であることから,ホームページ用に趣意書を変更したものを掲載することで了承された。

第4号議案 ファクトシートの学習会に関すること:2019年度4半期に,ファクトシート学習会を実施するために,ファミリーカウンセラー会議に対して学習会の案を提示することで了承された。

第5号議案 事業の広報に関すること:新聞各社並びに高松市広報への「おどりば」と「サバイビング」の広報依頼をAIYAシステムに委嘱することで了承された。

第6号議案 「おどりば」に関すること:主担当の森本理事から,新規参加者を受けいれる態勢を整えること並びに後進の育成のために,ファシリテーターを2名態勢で臨みたいため,コファシリテーターとして認定ファミリーカウンセラーの小松氏に打診したいとの意向が表明され,了承された。

第7号議案 冊子販売に関すること:ホームページ上からの冊子の購入は,セキュリティの更新が必要になっているが,今後は,メール相談フォームから申し込むことで了承された。

編集後記:想定される人類絶滅のストーリーは,いくつかあります。巨大隕石の衝突と言った地球外からの衝撃を除けば,為政者が核戦争のボタンを押す。これは,為政者のメンタルヘルスの問題と深く関わってくる問題です。もう一つは,人のライフスタイルと深く関わる問題。それは地球温暖化でしょう。そして,さらに,抵抗性が強い病原体が,パンデミック(全世界流行)な感染症を人類にもたらすことです。いま,新型コロナウイルスが世界的流行の兆しを見せています。発生源がコウモリやネズミなど野生動物を食用にすることと関係があると言われます。しかし,野生動物の食用は,今に始まったことではありません。もしかしたら,新型ウイルスの登場は,気候変動と関係があるのかも知れないと考えてしまいます。昔,こんな映画を観たことがあります。宇宙人が地球に侵攻,人類壊滅の瀬戸際になって,宇宙人の攻撃が突如止みます。実は,宇宙人は地球上の病原体への抵抗力がなかったため,次々と死んでいったと言うものです。今後,地球上にどのような病原体が登場するか予測できないことを考えると,人ごと(正確には宇宙人ごと)にはしていられません。(H.)