報告

2019年度よりそいホットライン事業報告会in 香川

マインドファースト理事 森本雅榮

2020年2月2日(日)香川県社会福祉総合センターにおいて,よりそいホットライン事業報告会が開かれました。森本が参加しましたので以下プログラムに沿ってご報告いたします。

  1. よりそいホットライン事業実績報告
  2. 香川県のひきこもりに関する実態,支援について報告
  3. 香川県の報告をもとに質疑応答
  4. 基調講演「ひきこもり/ひきこもりのリアル~支援だけではない社会を考える」
  5. ワークショップ

「自分の身近な資源を出し合おう!~ひきこもりのひとが一歩出ようと思える街とは?」

1.「よりそいホットライン」は東日本大震災を契機に発足し,2011年度より国の補助事業として行われて被災地および全国の電話拠点が対応している。1日3万件を超える電話がある。

ホットラインの基本的な流れは,音声ガイダンスにしたがって以下の番号を押す。①暮らしの中で困っていること,気持ちや悩みを聞いて欲しい方 ②外国語による相談(英語等10か国対応) ③性暴力,ドメステイックバイオレンスなど女性の相談 ④性別や同性愛などに関わる相談 ⑤自殺を考えるほど思い悩んでいる方 ⑧被災者の方で困っている方。

専門分野も充実していて,相談員が分らないときは専門家と相談し,相談者に折り返し電話をする。また相談者の意向を確認しながら,支援のあり方を決める。必要に応じて最寄りの相談機関を紹介したり,専門家に繋いだり,同行支援を行ったりして,地域社会につながるまで丁寧に寄り添うことを目指している。

電話を持たない相談者に対して,通話形態の拡大をし,アプリ通話の拡充を図り,「よりそいチャット」によるSNSでの相談も行っている。

2.平成30年度香川県 ひきこもりに関する実態調査結果とアンダンテの支援と相談状況についての報告が行われました。

○調査対象を県内の「ひきこもりの状態にある方」として平成31年度1月1日から平成31年2月28日の期間調査しました。(「ひきこもり状態にある方」の定義は厚生科学研究によるガイドラインに基く)。

以下報告を数字から見る機会となったので簡単に纏めました。

  • ひきこもりの状態にある方は726人で,男性544人女性159人で,男性が女性の3倍以上である。年齢については「40~44歳」108人,「35~39歳」84人,「45~49歳」79人等である。580人が25歳以上でした。
  • 同居者の内訳は「母」が65.8%「父」が48.9%,「きょうだい」25.8%である。次いで祖父母,配偶者,子である。更に『叔父・叔母』『義母』など。
  • ひきこもりの状態にある方の状況については,「普段は家にいるが,近所のコンビニには出掛ける」が32.9%,「ふだんは家にいるが,自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」が21.8%となっていて,家から出る者は多く,それは30歳代以上が多い。また「自室からは出るが家からは出ない」が29.2%で,19歳以下と20歳代に多い。「自室からほとんど出ない」が5.4%で20歳代以降すべての年代にいる。
  • ひきこもりの状態にある方の存在を知ったきっかけについては「近所からの情報・相談」が52.5%と最も多く,次いで「あなた自身の訪問等の活動」が23.3%,「本人・家族からの相談」が16.4%となっている。
  • ひきこもっている期間については,「分らない」が26.9%と最も多く,次いで「10~15年未満」が9.4%「20~25年未満」が8.4%となっている。
  • ひきこもりになったきっかけについては「分らない」41.0%,「人間関係が上手くいかなかった」17.9%,「職場になじめなかった」15.4%となっている。
  • 支援の状況については「分らない」が44.5%,「支援を受けていない」が37.6%,「行政機関等の支援を受けている(市役所・町役場,社会福祉協議会,保健所など)が9.1%となっている。

データーから浮かびあがったことは,個人情報の守秘義務はあるが工夫を凝らして具体的にひきこもりの支援の広報活動をする必要があると思いました。

○アンダンテの活動は,個別支援とグループ活動,その他として研修会,他機関との連携,普及啓発等である。初回は家族のみで来談するケースが6割を占め,当事者は男性が8割である。初回相談時の年齢は20代が一番多く30代以上も4割ちかいと。継続支援を目標にしていることからも,数字からも継続支援が難しいことが理解できました。ひきこもりからの回復過程を考えると当事者,家族,支援者はゆっくりと歩むことを心がけることが重要と思い←


→ながら話を聴いていました。

3.質疑応答では民間団体から資金援助の要望が出ました。担当者は来年度も応募してくださいと答えていましたが次の講演者からも募金の話がありました。

4.基調講演は釧路で「コミュニテイーホーム大川」でひきこもり支援をしている高橋信也氏の話でした。印象に残ったことは,支援者だらけは本人にとって異常事態!?ではないかという言葉でした。ふらっと行ける,注目され過ぎない居場所,来ても来なくってもいい→居てもいなくってもいい→でも認識されている→でも必要とされている居場所がいいと。「リトリートたくま」を思い浮かべながら聞いていました。更に地域とつながる仕事づくりの話が語られ,これからの担い手像としては,障害をもつ人々,アクティヴシニア,生きづらさを抱えた若者たちであろうと。最後に香川県のいま,香川のリアルが問われて講演は終わりました。

5.ワークショップでは社会資源について,グループで具体的に語り合いが行われました。グループの参加者は「身近な支援機関は直ぐに思い浮かぶが支援者として活動してもらう人を探すのは難しい」との話になりました。地域の人と余りつながっていない自分を感じながら今後の課題として考えようと反省しました。

今回の参加は考える良い機会となり有意義な時間となりました。

人口の6~7割が感染の可能性

~新型コロナウイルス~

2月27日,安倍首相は全国一斉休校要請を行ないました。29日には記者会見を開きましたが,質疑応答では事前に官邸記者クラブとすり合わせた質問への回答書を読み上げただけで,他の質問には一切応じず会見を打ち切り自宅へ帰りました。自分の言いたいことだけを一方的に伝え,国民の知りたいことには答えない。そうした姿勢は,国民の不安を増幅し,デマを勢いづかせ,社会の混乱を深めて行きます。

議論を軽んじる社会は,活力を失い衰退に向かいます。官邸だけでなく,官邸記者クラブやマスメディアのあり方が問われていることは言うまでもありません。

一斉休校要請の衝撃は,社会経済活動に大きなダメージを与えました。感染の実態と今後の見通しを国民に詳しく語りかけ,国民の不安を解消することが政治家の役割です。事実や根拠に基づかない,反知性的な政治家のスタンドプレーが先行し,後追いで周りが手当てをしていく。こうしたやり方が,いかに国民生活を大きく損なうか,為政者は気づくべきです。

2009年(平成21年),世界的に流行したH1N1亜型インフルエンザウイルスへの対応が混乱したことを踏まえ,後に対策の総括を行い,これからに生かすために2012年に新型インフルエンザ等対策特別措置法が,制定されました。「新型インフルエンザ等」とは,感染症法6条第7項に規定する「新型インフルエンザ等感染症」と,感染症法6条第9項に規定する「新感染症」のうち「全国的かつ急速

なまん延のおそれのあるもの」を指し,第2条第1号には,新型インフルエンザだけでなく,急激に流行して国民に重大な影響を及ぼすおそれのある新たな感染症が発生した場合にも対応できるとあります。この法律は,今回の場合のようなときに備えてつくられたもので,必要であればこの法律で対応可能です。

しかし,安倍政権は,この法律の対象疾患に,新型コロナウイルスを加えるための法整備を行なうことにこだわりました。国民が感染への脅威にさらされ,デマが飛び交う中で,法律をつくる。ことの優先順位が分かっていないとしか思えません。そして,新型コロナウイルスの拡大に備えるために改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が3月13日成立し,14日に施行されました。首相が「緊急事態宣言」を発令でき,曖昧な要件に基づいて,集会や報道の自由が脅かされる懸念が拭えない中で,3月15日,首相は「緊急事態を宣言する事態にはない」という認識を示しました。それなら,今はどのような事態であるか,国民は知りたいところですが,肝心なことには触れませんでした。

一方,ドイツのメルケル首相は,3月11日,新型コロナウイルスの感染拡大を受けて記者会見を行い,このまま治療法が見つからなければ,ドイツの全人口の60~70%が感染する恐れがあると語りました。メルケル首相は医療システムに過大な負担をかけないためにも,感染拡大を遅らせて時間を稼ぐ必要があると訴えました。完全な封じ込めが難しくなっている現状を踏まえ,感染の広がりを遅らせることに力点を置くという考え方です。メルケル首相は,感染拡大のペースが落ちることで感染の発生が分散されることにより,医療システムの崩壊を回避できる。これは,高齢者を守るためにも大切であるという考え方です。人類は,感染症と戦うのではなく,感染症と共存してきました。この教訓と事実は,感染の不安があるなかでも,人々に覚悟と勇気を与えてくれます。

(マインドファースト通信編集長 花岡正憲)

編集後記::メルケル首相が「人口の6~7割感染の可能性」と言及したドイツでは,シュパーン保健相が「参加者が1千人を超えるイベントの中止」を呼びかけ,サッカーの試合が無観客になったり,コンサートが取りやめになったりしています。一方,ドイツ文化省のモニカ・グラッターズ文化大臣は,3月11日に声明を発表しました。ドイツのこの状況が文化やクリエイティブ産業に大きな負担をかけ,とくに小さな文化機関やアーティストが深刻な苦境に陥る可能性があると示唆しています。人が大勢集まるイベントのキャンセルはやむを得ないとしながらも,「文化は,良い時にのみ与えられる贅沢ではありません」「私たちはアーティストたちを失望させません」として,政府の援助対策協議でアーティスト支援を議題に上げることを提案しました。文化機関や芸術家を支援してき文化大臣は,「私は,この状況が文化と創造的な産業に大きな負荷を与え,特に小規模な機関や自由なアーティストをかなり苦しい立場に追い込んでしまうことを認識しています。私たちはあなたたちを見捨てはしません」と語っています。わが国でも,文化の下支えをしている社会経済基盤が脆弱な人々への配慮を忘れることがあってはいけません。地域の小さな創造的企画やフリーランスのアーティストを支援することが必要です。今年は,ベートベン生誕250年。就労形態の如何を問わず,広く働く人のモチベーションの維持・向上に貢献し,社会を支えてきたマイスター制度があるドイツならではの大臣の発言だと感じました。理事会報告は,次号にさせていただきます。(H.)