うす汚れた香川県ゲーム条例

マインドファーストは,2月5日,香川県議会事務局政務調査課を訪れ,香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 (素案)に関するパブリックコメント(以下「パブコメ」)を提出した。本条例案には,一日のゲーム時間を60分とする科学的根拠が示されていないことや表現の自由や家族への介入など,憲法上の問題もあるため,疑義をただすことが目的であった。

こうした中で,3月12日非公開で行われた県議会の「県ネットゲーム・依存症対策条例」検討委員会では,議会事務局がパブコメで賛成2269件,反対401件と説明,議論は20分で打ち切られ,修正案が賛成多数で可決された。3月18日の香川県本会議でも賛成22,反対10,退席8で,条例案は可決成立した。

その後,本条例の成立過程の異様さが,一部の県議,識者,マスメディアによって次々と明らかになりつつある。

本来パブコメは賛否を問うものではないのに,最終の委員会において,事務局が賛否別の報告をしただけで,パブコメの内容については精査も議論もなく,議事録も取らない非公開の場で,数の論理だけで結論を急いでいる。

成立の過程は,まったく民意を無視したもので,何よりも真剣にこの問題に向き合うためにパブコメを提出した人たちへの背信行為であり,許しがたい暴挙と言える。

パブコメで寄せられた多くの賛成意見には,特定のパソコンから大量に送信された痕跡が見られ,賛成意見の80%以上が,パブコメのための指定アドレスではない県議会のホームページの「ご意見箱」から送られていたという報道もある。しかも同じ誤字記述が複数見つかっているという。

3月25日,大西秀人高松市長は定例記者会見で,「オープンな形で議論されてもいい」と苦言を呈している。一方,浜田恵造香川県知事は,4月20日「パブコメは,県民の賛否を問うものではなく,広く意見を求めるもの」としながらも「(賛成)意見に集約に誘導があったかどうかは分からない」と明言を避けている。

いずれ条例成立過程における問題点が露呈することが分かっていながら,香川県議会が,なぜこうした条例を拙速に制定しようとしたのか。考えられる背景はいくつかあろう。

私権を制限し,個人,家族,学校などを国家主義的な統

制のもとに置くために,粉飾,隠蔽,データ捏造,恣意的ルールの変更など,手段を選ばない現政権の手法と酷似していないか。

記録を取らず,情報開示なども行わない。客観的な事実や科学的エビデンスを重視せず,alternative fact(真実ではないもう一つの事実)をでっちあげ,感情的な訴えによって政治的誘導を行なおうする。こうした傾向が近年顕著になっている。

日ごろから,県民の議会へのチェックが甘いことも問題だろう。例えば,批判が多かった香川県議会の海外視察をめぐっても, SNS上のフォロワーの中には,まっとうな視察だと言った書き込みが見られる。全国ネットで報道されたビデオや視察報告書を見れば,一見して観光旅行だと分かるにもかかわらず,思考停止で「いいね」をクリックする。自ら情報を取り,自分で考えるのではなく,権力者側にすり寄り主権を安売りする「忖度マシーン」がネット上にあふれていることも問題だ。

この数年,県内の保健機関と一部の医療機関が連携して,「ネット依存・ゲーム障害」対策を掲げてキャンペーンを行い,マスメディアもトピックスとして大きく取り上げている。こうした動きに引きずられて,香川県から全国に向けて先駆的発信をしたいという思いもあるのだろう。しかし,それだけだろうか。こうまでして強引にゲーム条例を成立させるには,利権がらみの不透明な裏の事情があることも否定できない。少なくともそうした憶測を呼んでも仕方ないであろう。

香川県は,ゲーム条例が成立することを見込んで,2020年度当初予算に1,200万円を計上,県下の小中高校へ冊子を作成し配布を行う方向で準備を進めている。手垢にまみれた時代錯誤のおふれ書を子どもや若者,そして教育現場は,どう受けとめるだろうか。反対署名活動をした純真な高校生に対しても恥ずかしいかぎりだ。子どもたちも,こんな条例に実効性がないことは,はじめから分かっている。従うわけはないだろう。

民主主義にはルールがあるように,ゲームにもルールがある。ゲーム条例を作る前に,県議たちも,ゲームに興じてみても良かったのではないか。プレイヤーに忖度しないゲームを通して物事にはルールがあることを学ぶ良い機会になったかも知れない。

(マインドファースト通信 編集長 花岡正憲 2020.04.26)←


→

第192回理事会報告

日 時:2020年3月9日(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの「居場所づくり事業」に関すること:3月の「REPOS」は,3月1日・8日(日)14:00~16:00,高松イオンフードコートにおいて開催した。参加者はゼロであった。今年度の「REPOS」はこれで終わり。19回のべ36名の参加者を得た。今後の活動はぴあワークスの際にアンケートを行い,理事会で検討することで了承を得た。

第2号議案 2020年度ファミリーカウンセラー養成講座に関すること:開催場所・時期について検討した。昨年は6月の後半,5月末に講師会を行い,開講前にもう一度行っていること,4月後半にはチラシを発送していること,等々例年のスケジュールであること,まずは場所の確保が最優先ということで,サンポート高松,丸亀町レッツカルチャールーム,屋島陸上競技場等の空き状況を調べることで了承を得た。

第3号議案 2020年度総会及び事業計画に関すること:総会は,6月15日月曜日19時から四番丁のコミュニティーセンターで開催することで了承を得た。事業計画については,次年度の事業として,オープンダイアローグのワークショップを「オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン」と連携してファミリーカウンセラーのアドバンスドコースとして継続開催する案が出たが,これ以外にも募集を行うことで了承を得た。

第4号議案 2020年度の事業活動計画に伴う予算案に関すること:香川県地域自殺対策強化事業のブロシュール・ファクトシート作成,ビアワークス・相談員研修,共同募金会テーマ募金助成事業の居場所づくり,啓発事業等の資金の流れ等について島津理事長から説明があった。

第5号議案 リトリートたくまのスタッフ会議に関すること:3月18日(水)11:00~12:00に開催予定。参加スタッフに対して,非会員スタッフには通常の活動と同様に報償費および旅費を支払い,会員スタッフには旅費を支払うことで了承された。

第6号議案 ファミリーカウンセラーの活動に関すること:登録しているファミリーカウンセラーの活動を活性化するために,ファミリーカウンセラー自身が何をやりたいのか,主体性をもって活動してもらうための工夫等について,ファミリーカウンセラー会議で検討していくことで了承を得た。

第193回理事会報告

日 時:2020年4月13日(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 平成30年度共同募金(平成31年度助成金事業)テーマ募金助成事業完了報告書に関すること:報告書の内容について説明があり了承された。お礼状はホームページにアップすることとした。

第2号議案 ユーザーの「居場所づくり事業」に関すること:「REPOS」開催場所を高松イオンフードコートからオフィス本町に変更して実施することとしていたがオフィス本町は,狭く三密に近い状態であり感染リスクが高いと思われることから4月はイオンフードコートで開催するとの担当理事山奥の提案があった。次回開催は5月3日であるが感染防止のため,事業主体として,当面開催中止という判断が承認された。こうした問題を主体的に検討できるようにするために運営委員会を立て直して欲しいとの意見が出た。

第3号議案 「リトリートたくま」に関すること:①リトリートたくまの家賃を受け取ることに関して,県子ども政策課担当者より,事業主体側の人間が受け取るのは認められない。ただし前年度については認めるという連絡があり,今年度以降について特定非営利活動促進法第17条4より,柾美幸氏を特別代理人とすることで承認された。②費用は県費(助成金)で対応するが,出来ない場合は一般財源(自己資金)で賄うことで承認された。

第4号議案 県内企業からの食品寄附に関するネットワークに関すること:香川県社会福祉協議会から食品の寄附に関するネットワークに参加しないかとの問い合わせがあった。これは,県内の企業から食品の寄付の申し出があった場合,必要であれば各団体が申し出ることで,食品をいただけるためのネットワークで,今回詫間町内のフードテック(冷凍食品)が,企業側として参加しているので,リトリートたくまとしてネットワークに参加しないか,ということである。この企業は食品を提供するのみではなく多くの若者や子供たちの将来に寄与したいと考えており,食品の提供をきっかけに,会社や仕事に関心を持ってもらいたい,希望があれば会社を紹介し,工場見学の機会も持ちたい,特に地元の団体とつながりを持つことができればと考えているようである。「リトリートたくま」参加の子ども達やマインドファーストの援助ともなると考えてネットワークに参加することで承認された。

第5号議案 2020年度ファミリーカウンセラーの養成講座に関すること:6月15日(月)総会であるので6月1日(月)には総会の議案書を発送しなければならない。また,それ以前に監査がある。コロナウイルス感染の終息が見えない。これらの事情から,6月28日(日)からの養成講座は難しいと判断して今回の養成講座は延期とすることで承認された。なお丸亀町レッツカルチャールームの仮予約はキャンセルすることとする。

第6号議案 ファミリーカウンセラーの活動の活性化に関すること:①活動の開催報告(日時,人数など)はその都度報告し,参加費や相談料などの現金を受け取った場合速やかに振り込むことが再確認された。②理事吉田より傾聴・相談力セミナーにおいて,電話での相談があったと報告があった。電話での相談は新たな事業となるであろうとの意見が出る。③ファミリーカウンセラー自身が主体性をもって活動して行くためには何をやりたいと思っているかをファミリーカウンセラー会議で検討していくことが必要であると再度確認された。

第7号議案 2020年度総会の準備に関すること:①議案書の内容は,2019年度事業報告および収支決算報告,2020年度事業計画案および予算案とする。②事業計画は,リトリートたくまスタッフのコンサルテーションを新規事業とし,ファクトシートの学習会は継続,オープンダイアローグセミナーをファミリーカウンセラーのシニア研修会とする。③議案書の発送は5月31日(日)か6月1日(月)とする。以上3点が承認された。

編集後記:路上や自宅などで容体が急変して死亡し警視庁が変死として扱った事案で,死後に,新型コロナウイルスへの感染が判明するケースが,相次いでいることが分かりました。捜査関係者によりますと,4月9日,都内の60代の男性が路上で倒れているのが見つかり,翌日死亡しました。男性は,駆けつけた救急隊員に「胸が苦しい」と話していたため,死亡後にPCR検査をしたところ,感染が確認されたということです。こうしたいわゆる「隠れコロナ感染者」は20日までの1か月で少なくとも6件あったということです。新型コロナウイルス感染を巡っては,日替わりで陽性者数と死者の推移が示されています。しかし,これは感染のとらえ方の一つに過ぎず,感染の広がりの実態の反映ではありません。ニューヨーク州で行われた抗体検査によると,13.9%,約270万人が感染を経験したことになり,これまでに確認された感染者の10倍超にあたるとの推計も出ています。予想以上に感染が拡大していることが考えられる中で,私たちが知りたいのは,感染の実態とこのウイルス感染症との正しいつき合い方です。2015年6月25日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」においてストレスチェック制度が創設されました。本人にその検査結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し,個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに,高得点者には医師による面接指導を推奨します。新型コロナウイルスとのつき合いも長くなりそうです。広くPCRまたは抗原検査や抗体検査を行い,検査結果と自覚症状などに基づいて,ひとり一人が自分の感染の事実と向き合い,付き合っていくステージに入りつつあるように思います。(H.)