マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
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ゲートキーパー普及啓発事業報告
香川県消防学校
マインドファースト理事 森本雅榮
2022年2月8日 香川県消防学校救急科の生徒22名を対象にゲートキーパー普及啓発事業が行われ,マインドファーストから,島津と森本を講師として派遣しました。救急科に対する本研修会は,今回で5回目ですが,森本は初めての担当でした。
主催者の香川県精神保健福祉センターの保健師大森小百合講師から,香川県の自殺の状況について解説があり,引き続き,マインドファーストから,「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」と題して,島津が講義を行い,森本が演習を行いました。
講義では,自殺にまつわる誤解,自殺の現状,自殺を「予防」するという3つのテーマを中心に語りました。「自殺とはなにか」に始まり,「ゲートキーパーの役割」「自殺に関する神話」と話は進み,自殺の原因は多様であり,自殺の直前にはサインがあると徐々に深い話に入って行きました。さらに『死ぬくらいなら会社やめれば』の漫画からの言葉を紹介し理解を深めました。「死にたい」という気持ちをどう理解するか,「死にたい」が意味するものはなにかと問いかけ,心理的視野狭窄がおこる理由をあげ,うつ状態に陥る過程を解説していきました。また東尋坊で自殺予防活動を行っている元福井県警重幸夫氏の「自殺予防は人命救助である」という言葉を引用し,未来の救急隊員の意欲を鼓舞しました。
また最近増えている自傷にも触れ,自殺との違いを語り,自傷行為を行う人の特徴の中でも特に自尊感情が低いことを指摘しました。さらに死にたいと打ち明けられた時の対応は,先ず「聴く」ことであると強調して具体的に詳しく解説しました。最後にゲートキーパーのストレスケアの重要性について語り,自分自身の心の健康を保つため
には感情をきちんと感じるなどの「幸せの6つの秘訣」を説明し締めくくりました。
演習では,5つのグループに分かれ,ワールドカフェを行ないました。3つのテーマ「現在の自殺について,何が問題だと思いますか?」「問題の解決のためにはどのような対応が可能ですか?」「あなた自身は,何ができそうですか?」について自由に対話していただき,3ラウンド行いました。板書に関しては大森講師にお願いして,森本は各グループを回って話を聞かせていただきました。どのグループでも日頃の苦しい体験を肯定的にとらえ,未来志向の話を多く語っていたことがとても印象に残りました。
最後に「変化したことと変わらなかったこと」を黒板に書いて全員で共有して振り返り,変化したこととして「心が弱い人が自殺すると思っていたが,必ずしもそうではなく,誰にでも起こりえるとわかった」「心理的視野狭窄にならないために,時には頑張り過ぎないことも必要と思った」,変わらなかったことは「やはり,自殺は食い止めたい」という意見がうかがえました。途中タイマーを入れ忘れるなどの不手際がありましたが笑い飛ばしていただきとても感謝しております。本当にありがとうございました。
北京冬季五輪のフィギュアスケート女子の主役として注目されたロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ選手は,昨年12月のロシア選手権で採取された検体のドーピング検査で陽性が判明した。今回,スポーツ仲裁裁判所(CAS)は,16歳未満の「要保護者」は暫定的資格停止処分の規定がないことを理由に,処分の検証を先送りした。こうした分かりにくい判断になったのは,ロシア問題でもあれば,商業化,政治化された五輪問題に他ならない。ワリエワは15歳で,中学ないし高校生年齢相当である。日本の中学や高校の総体で薬物摂取が
判明したことを想像すれば,当人と関係者がどのような処分を受けるかは明らかである。
今回問題になったのは,心臓の血管の血流を増やす治療薬で狭心症や冠動脈疾患に対して使われるトリメタジジンであったが,ADHDやナルコレプシーの治療薬である神経刺激薬(メチルフェニデートやモダフィニルなど)も禁止物質に指定されている。脳内神経伝達物質の働きを増強するうつ病の治療薬SSRIやSNRIをはじめ,抗不安薬,睡眠薬の方は,禁止物質に指定されておらず,静脈内注射でなければ使用することができる。いずれも,精神科・心療内科領域では多用されている薬剤である。中枢神経系に作用する薬物は,運動機能や意欲や感情をコントロールしようとするもので,こうした薬剤が乱用されやすい状況にも目を向けておく必要があろう。
中枢神経系に存在する神経伝達物質アドレナリンやノルアドレナリンは,運動調節,ホルモン調節,快の感情,意欲,学習などに関わる脳内ホルモンである。
アドレナリンはストレスがかかった時,副腎髄質より分泌され,心筋収縮力を上昇させ心拍数や血圧を上げる。心・肝・骨格筋の血管や気管支も拡張させる。分泌が過剰になると,攻撃的で,イライラしてキレやすくなる。
一方,過度のストレスが長期に続くとノルアドレナリンが減少し,やる気がなくなり,学習能力や集中力が低下,注意力も散漫となり,無気力,無関心になる。これが高じると抑うつ症状が現われる。
ストレスのはけ口がなく,落ち着きがない子どもを発達障害と診断して薬物療法を急いだり,学校生活や仕事でストレスを受けて,やる気がなくなった若者をうつ病と診断して抗うつ薬を処方する。医療現場における過剰診断,過剰治療は,目に見えにくいだけに深刻な問題でもある。
趣味や音楽や創造的なことへの没頭,適度な運動,散歩やヨガや瞑想は,アドレナリンやノルアドレナリンの前駆物質である脳内ドーパミンが増え,集中力がアップすることが確かめられている。
ドーピング(doping)のドープ(dope)は,「興奮薬や鎮静薬を常用する」と言う意味であるが,「格好いい」と言うスラングとしても使われる。脳内ドーパミンを増やしパフォーマンスを向上させるために,生活環境を整え,薬物に頼らないライフスタイルを身につける方が「格好いい」ことは言うまでもない。
マインドファースト通信編集長 花岡正憲
第216回理事会報告
日 時:2022年2月14日(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 会計に関すること:島津理事長から説明資料を基に報告があり承認された。塚本会計士に照会している2万円の商品券の扱いについては,いまのところ回答がない。来年度県会計相談窓口で会計上の処理の仕方を尋ねる。2021年12月23日付で法人の百十四銀行口座にオオツカマサヒロ名で50万円の振り込みがあった。百十四銀行高松支店に確認をとったがオオツカ氏の意向で住所は伏せられた。当法人としては百十四銀行高松支店を通してお礼状を出す。以上が了承された。
第2号議案 「居場所づくり事業」に関すること:(1)REPOS担当の山奥から,今後の開催要領に関して資料に沿って説明があり,ホームページ原稿は再度作成しメールで送ることで了承された。(2)リトリートたくま担当の柾から,会計担当者への報償費に関する審議事項が書面で提出された。第1四半期から第3四半期を各2,000円,第4四半期を4,000円とすることで承認された。
第3号議案 2021年度香川県自殺対策強化事業に関すること:(1)今年度新規のファクトシート(「災害とストレス(仮)」)作成について花岡が原稿作成に取り組むことを再確認した。 (2)ブロシュール類の発送先リストに関して,来年度早々より整理し見直すことで了承された。(3)今年度ブロシュールの増刷はフォークス21とサバイビングを各2,000部発注することで了承された。なお残部は概数で,フォ-クス21:800,おどりば:1,900,サバイビング:800,HOPE:900,ピアサポート:1,200である。
第4号議案 オンライン会議のネットワークの構築に関すること:花岡をオンライン担当とする。オンライン会議の講習会を開き,AIYAシステムに依頼して具体的に技術を教えてもらう。以上が了承された。
第5号議案 香川大学医学部付属病院のHIV患者とその家族へのカウンセリング依頼に関すること:上記病院の窪田氏よりHIV患者とその家族へのカウンセリングを当法人の臨床心理士に依頼したい,なお窪田氏とそれまで関わっていた臨床心理士は3月末で退職となる,と連絡があった。病院における患者とその家族の実情を具体的に教えてもうことで了承された。
第6号議案 一般会員によるマインドファースト通信及びホームページへの寄稿に関すること:ファミリーカウンセラーの上田氏よりメンタルヘルスに関しての記事を載せたいとの申し出があった。会員の活動ととらえ,原稿料は過去の資料を参考にして検討することで了承された。
編集後記:仲良くやっていきたいと思う人たちの間では,相互に行き交うエネルギーや感情に支えられ,情報の高次元での統合が進み,それぞれに内なる気づきがもたらされます。共同作業やコラボレーションは,人類を社会種として存続させ,生き残る可能性を高めてきました。脳科学や心理学では説明できない,こうした複雑な親和力は,社会本能と呼べるものです。ロシアのウクライナ侵攻は,社会本能に著しく背いたものと言えます。(H)