シリーズ:愛着障害

第2章 愛着スタイル
 ~アタッチメントの発達段階と安定型~

マインドファースト認定ファミリーカウンセラー 上田ひとみ

愛着理論を提唱したボウルビィは,アタッチメント行動の基本的な発達を4段階に分けています。愛着スタイルの検証の前に,乳幼児期のアタッチメントはどのように発達していくのかを詳しく説明しておきます。

第1段階:人物の識別を伴わない定位と発信(出生から生後8~12週頃)この頃の子供は養育者などの特定の人に限らず,どの人に対しても,追視,手伸ばし,微笑,発声などのアタッチメント行動を一様に示します。

第2段階:1人または数人の特定対象への定位と発信(生後12週〜6か月頃)子供は誰に対しても友好的に振るまいますが,日常良く関わってくれる人に,アタッチメント行動を示すようになります。生後12週頃からは,人の声や顔に対して,その人物に応じて分化した反応(養育者にはいっそう良く笑うなど)を示すようになります。

第3段階:発信及び移動による特定対象への接近の維持(生後6か月頃〜2・3歳頃)この時期,子供の反応は相手によって明確に異なり,これまでのように誰に対しても友好的に振るまうことはなくなります。見知らぬ人に対しては,警戒したり,関わりをさけたりするなど,いわゆる人見知りの現象もみられます。子供は自ら養育者に接近したり,後追いしたり,養育者を安心の基地(安心感が得られる活動の拠点)として探索を始めます。養育者に向けられた子供の行動は徐々に組織化されていくので,子供のアタッチメントは,誰の目から見てもはっきりと明確なものになります。

第4段階:目的修正的な協調性形成(3歳前後から)養育者の行動や行動に影響を与えている事柄を観察することで,子供は養育者の設定目標や計画を推測し,また,養育者の行動の背景にある感情や動機も洞察できるようになります。養育者との間で,協調性に基づく関係性を築き始めます。アタッチメント対象は,自分を保護し助けてくれるという存在を確信・イメージ(内的作業モデル:Internal Working Model IWM)が子供の中に内在化され,安心の拠り所(安全基地)として機能し始め,子供は養育者と離れていても安定して振るまうことができるようになります。

では,第1章で登場した事例の洋子ちゃんを検証してみたいと思います。洋子ちゃん(仮名)は,親との分離で不安になり大泣きをして取り乱していますが,「必ず迎えに来てくれる」と信じており,再会時も親に抱きつく事ができ,ボジティブな情動をもって親を迎え入れることができています。SSPの分類では,Bタイプ(安定型)の子供に当てはまります。Bタイプの養育者は相対的に感受性が高く,また行動に一貫性が認められる傾向にあり,子供も「自分は受容される存在である」「他者は,自分が困った時助けてくれる」といった表象モデルを形成でき,アタッチメント行動は全般的に安定しています。この洋子ちゃんと養育者のように,アタッチメントの発達が順調で,一貫して安定している場合,形成された内在化モデル(IWM)は,その後の人間関係のテンプレートとして機能していきます。そして,子供の社会化は2者関係から家族,集団へと広がりを見せ,基本的信頼関係を容易に構築できると考えます。

では,次回第3章では,不安定型愛着スタイル〜回避型〜花子ちゃんの事例を検証します。(文章中の事例は架空事例であり,登場人物名も仮名を使用しております。←


→尚,架空事例の紹介は愛着理論を分かりやすく検証するためのものです)

引用参考文献:(1)遠藤利彦『入門アタッチメント理論臨床・実践の架け橋』(日本評論社,2021,251p) (2)数井みゆき・遠藤利彦『アタッチメント生涯にわたる絆』(ミネルヴァ書房,2005,275p)

2022年度通常総会の報告

下記の通り,2022年度通常総会を開催しましたのでご報告いたします。

  1. 日 時:2022年6月19日(日)11:00~12:00
  2. 場 所:高松市四番丁コミュニティセンター
  3. 総社員数32名,本人出席11名,表決委任者11名,書面評決0
  4. 議事の経過の概要及び議決の結果

理事長島津昌代の挨拶の後,司会の森本雅榮から定款第26条に基づき議長選出の発議があり,立候補の申し出があった花房秀二が選出された。議長から,正会員総数32名,出席者11名,委任状提出者11名の報告があり,定款第27条並びに第29条3に基づき,定足数を満たすことが確認され,2022年通常総会は有効に成立する旨が宣言された。議長は,書記に花岡正憲,議事録署名人に島津昌代と山奥浩司を指名した。

第1号議案 2021年度事業報告
理事長島津昌代から,総会資料に沿って,2021年度の事業の実施状況について報告が行われた。この後,議長が質疑を求めたところ質問はなく,採決が行われ,出席者正会員11名中賛成10(議長は除く),反対0,議長委任状は11名で,本議案は承認された。

第2号議案 2021年度収支決算報告
理事長島津昌代から,総会資料に沿って,2021年度の事業の実施状況について報告が行われた。

第3号議案 監査報告
監事井原惣七から 監査報告があり,2022年5月25日,2021年度事業における収支決算について,監事長門恵子とともに監査を行ったところ,適正かつ正確に執行されていると報告があった。
この後,議長が,第2号議案並びに第3号議案について質疑を求めたところ質問はなく,第2号議案及び第3号議案の一括採決が行われ,出席者正会員11名中賛成10(議長は除く),反対0,議長委任状は11名で,両議案は承認された。

第4号議案 2022年度事業計画案
理事長島津昌代から,総会資料に沿って,2022年度の事業計画案の説明が行われた。この後,議長が質疑を求めたところ質問はなく,採決が行われ,出席者正会員11名中賛成10(議長は除く),反対0,議長委任状は11名で,本議案は承認された。

第5号議案 2022年度収支予算案
理事長島津昌代から,総会資料に沿って,2022年度収支予算案の説明が行なわれた。この後,議長が質疑を求めたところ質問はなく,裁決が行われ,出席者正会員11名中賛成10(議長は除く),反対0,議長委任状は11名で,本議案は承認された。

第6号議案 その他
会員からの提案なし。


以上で特定非営利活動法人マインドファースト2022年度通常総会のすべての審議を終えた。


第220回理事会報告

日 時:2022年6月13日(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること(事前配布資料有):島津理事長から,5月期の会計報告について,資料を基に報告があり承認された。

第2号議案 「居場所づくり事業」に関すること:①REPOS:6/5,6/12開催した。6/5は外部の参加者はなく,スタッフのみの参加であった。参加者の気持ちになり話すことができて「楽しかった」との言葉に尽きる日であった。6/12は外部より4名の参加者があり,全員が精神保健医療にかかっていて,その内2名が作業所つながりの参加であった。今後作業所でのチラシの配布などで参加者が増えると思われるが,幅広い人の参加を考えると広報の仕方に関しては慎重であることが望ましい。以上が了承された。②リトリートたくまに関しては特に審議無し。

第3号議案 2022年度通常総会に関すること(事前配布資料有)①6月19日開催の通常総会の役割は,受付(柾・山奥),進行(森本),議長(花房),書記(花岡),議事録署名人(島津並びに当日参加の会員1名)が決まった。②質問状についてはその内容がファミリーカンセラー会議及び学習会に関するものであるため総会閉会後,情報・意見交換会を設け,そこで質問を受ける。以上が承認された。

第4号議案 香川県子どもの未来応援ネットワークからのお知らせ「支援の場研修会(7/14)に関すること」:研修会は香川県社会福祉法人社会福祉協議会の主催で,社会福祉センターにおいて,講義とワークショップを中心に行われる予定であるが恐らく資金面での話になると思われる。無理しない程度に山奥が参加を考えることで了承された。

第5号議案 技術援助に関すること:①丸亀市食生活改善推進協議会ゲートキーパー普及啓発事業,日時:7/11(月)10:30~12:00 場所:ひまわりセンター4階研修会議室1・2(丸亀市大手町2-1-7),参加予定人数:約40人,島津を派遣する。②三木高校 職員研修,日時:11/29(火)13:30~ 場所:三木高校 島津と森本を派遣する。③公益社団法人かがわ被害者支援センター相談員研修,候補日時:1/18(水),2/15(水),または3/15(水)の13:30~15:00 場所:公益社団法人かがわ被害者支援センター(塩上町)参加予定人数:15人程度,相談委員は犯罪被害からの電話を担当したり, 裁判所に付き添ったりなどしている。大学教授や弁護士などを講師に招いて毎月研修会を開いている。今回は支援員へのケアのためマンドフルネスを希望しているとのこと。花岡が担当するが日程が合わないことから,島津が推薦したい講師はいるがこの日程以外でも可能であるか, また謝金についても尋ねてみる。以上が了承された。

第6号議案 オンライン会議のネットワークの構築に関すること:議論の対等性,双方向性などの観点から1人1台のパソコン設置など機材の購入の予算措置や定款変更にも関わることなのでもう少し研究することで了承された。

第7号議案 オープンダイアローグジャパンからの総会・総会記念イベントの案内に関すること:法人で加盟しているが法人内の個人も参加できるようである。今回の開催日6/26(日)はファミリーカウンセラー会議と重なっていることで了承された。

第8号議案 2022年度ファミリーカウンセー養成講座・基礎コース開催に関すること:10月~12月の日曜日午後,丸亀町レッツカルチャールームで開催として,各事業開催の曜日が重ならないように場所の予約を取ることで了承された。

第9号議案 審議に関すること:理事会での審議によりファミリーカウンセラー会議の審議とする場合,またファミリーカウンセラー会議での審議により理事会の審議とする場合は,ファミリーカンセラーカンセラー会議や理事会の資料に記載することで了承された。

編集後記:2022年度から高校の保健体育の授業において「精神疾患教育」が約40年ぶりに復活しました。精神疾患全体では発症年齢のピークが10代半ば以前にあること,そして,心身の不調の早期発見と適切な支援によって回復する可能性が高まると言う実証的研究の蓄積によるものです。しかし,これまで日本では,こうした知見が充分生かされてきたとは言えません。高校からの授業では遅く,義務教育段階で扱うべきであると言う声も既に上がっています。早期発見,早期治療,と言った古い疾病モデルに偏った精神疾患教育では,過剰診断や安易な服薬や入院など,不適切な介入によって,若者たちのその後の人生を生きづらくしかねません。精神疾患は偏見や差別の対象ではないことなどを理解できるよう指導するとともに,メンタルヘルスや心のケアについて,教員自身のリテラシーを高め,医療任せではなく,学校現場におけるメンタルヘルスの向上につながる取り組みが期待されます。保護者への啓発が欠かせないことは言うまでもありません。(H)