リトリートたくまからのメッセージ

ちょっと覗いてみませんか

スタッフ 草薙博子

夏真っ盛りの8月に「リトリートたくま」が誕生して,色々な方々の協力,応援のおかげで満3歳になりました。少しずつ参加者も増えていますが「リトリートたくま」が何をしているところか,より多くの皆さんに知って欲しいと思います。

「リトリートたくま」は「居場所」です。ほっと一息お茶を飲みながらおしゃべりしたり,おしゃべりを聞いたり,読書をしたり,趣味の道具(ギター・お絵描き・書道・裁縫)がありますので,それを使って遊んだり,宿題,学習ドリルで勉強したり,パソコンを講師の先生(不定期)に教わったり,静かに過ごしたい人は別室もありますし,庭の散策もできます。決まったことは何もしていないのでそれぞれが居心地のいい場所として使って欲しいと思います。

また,参加される人は若者を中心にその親世代の人も多く,特に年齢制限はありません。家から出たいけどどこへ行けばいいの?という人,一人で悶々としている人,そうでない人も,事前に連絡は要りませんので「ちょっと」「ふらっと」気軽に寄ってください。駐車スペースもありますし,参加料も無料です。気さくで経験豊富なスタッフが待っています。毎週水曜日,午後1時から3時まで,この時間内であれば自由に出入りしてくださって構いません。こんな「居場所」ちょっと覗いてみませんか。

尚,折り入っての個人的な相談については,マインドファーストの事業でも対応できます。


リトリートたくまの3年

スタッフ 鎌野典子

リトリートたくまがたちあがって3年たちました。最初は利用者の人達とどう接したらいいのか,悩みました。今も模索状態ではありますが,「そうだ,私自身がこの時間を楽しめばいいんだ,自分の居場所になればいいんだ」と思いながら担当させていただいております。性別,年齢,環境もいろいろ,それぞれ背負ったものは違う人たちが集まります。でも漠然とした「生きづらさ」この感覚は私も含め共通かもしれません。その生きづらさの中で利用者の方が行ってみたいと思い,自分の意思でこの場所を選び来てくれたということに敬意を持ちながら,今後もスタッフという立場ではありますが,私も一緒に心の翼を休めに,

楽しんで参加したいと思います。


リトリートたくまの3年間

スタッフ 八杉三千代

最初の1年間は苦しかったです。参加者も少なく,私は病気で永い間心を閉ざしていたので,リトリートたくまの責任者の方々とも話ができなかったです。ただ一心に,3時間ここで参加者を待つのが仕事だと思い「とにかくここに居るんだ」と心に決めました。「これをしなさい」というものもなく,自分で考えて過ごしました。ひたすら筆ペンで習字をしたり,塗り絵をしました。自分の殻に閉じこもることで何とかそこにいました。

参加者が来てくれるようになって,小学生の女の子に,絵を描くのが上手な子がいました。参加者専用のノートを作りました。「絵とか何でもいいので描いて欲しい」と頼みました。そう声をかけるのが精一杯でした。何かつながっているような気がして嬉しかったです。

それから少しずつ責任者の方々とも話せるようになってきました。いつも優しくあったかい目で見ていてくれました。調子の悪い時も,今日はリトリートたくまの日だからどうしても行きたいと相談の電話をして,特別な用がない限り出席しました。心を閉ざしていた頃も責任者やスタッフの方々がいつも優しく見守って声をかけてくれていました。

みんなで話し合いの場が持てた時「この3年間はどうでしたか?」という質問に,最初の1年間は苦しかったと話すと責任者の方が「よく乗り越えてくれた。良かった」と言ってくれました。私を必要としてくれていたんだと思うと,嬉しくて本当に頑張って良かったと思いました。

心を閉ざしていた長い時間,そばに誰が居ても独りぼっちでした。私は独りぼっちだったから独りぼっちの人の気持ちがわかります。私はここに参加する人々を独りぼっちにはしない。リトリートたくまのみんなで寄り添って一人一人の居場所にしようと思っています。


『つながり』を『紡ぐ』,

居場所「リトリートたくま」

スタッフ 山奥浩司

「どんな人たちが参加してくれるのだろう?」「どのように接したらいいのだろう?」

諸々の「不安」「緊張」を抱えながらスタートして三年。「スタッフ」という肩書きとあいまって,心身ともに力んで身構えている自分を感じていた(参加者さんにも←


→伝わっていたと思う)。一人ひとりと挨拶を交わし自己紹介をして趣味や好きな食べ物の話等少しずつゆっくりと。次第に「今の自分」「将来のこと」「家族のこと」,話題が広がり深くなってきた。

「調子はどう?」「今日はしんどい」「久しぶり,元気にしてた?」「今は毎日こんなことしてる」「今度~の面接を受ける」「来週テスト,イヤや」。UP,DOWNしながら好奇心を無くさず,挑戦することを諦めない。やりとりを重ねるにつれて「自然体」の「私自身」に成長させてくれた。家族やワーカーさんと一緒に参加,関連民間団体の訪問,三豊市社協からの差し入れ,そして三豊市福祉課・子育て支援課との情報交換。参加者の皆さんは言うまでもなく関連するたくさんの人達との新しいつながりができた。

「みとよすくすく子育てサポートプランⅡ」の趣旨をかみしめて,地域で生活する人たちの日常に触れ,地域特有の文化を知ることを心がけて,地域とともに歩んでいく居場所「リトリートたくま」であるよう活動していきたい。

暴かれた偽りの美学 -霊感商法,そして国葬-

行列ができているさぬきうどんの店でうどんを食べる。だが,並んでまで食べるほどのうどんではなかったと言う経験をすることは少なくない。こんな経験を何度かしても,また,別のうどん店を探して列に並ぶ。こうした顧客体験は金と時間の無駄だと否定するわけではない。「並んで食べるほどのうどん」は,本当は物ではないが,物として「現れている」ことから,こうした現象を物象化と呼ばれることがある。物象化の結果として生じる思い込み,すなわち商品がそれ自身として価値を持っているかのように考えてしまうことを商品の物神崇拝(フェティシズム)と言う。

カール・マルクスは,「商品市場では,生産者たちは自分たちの労働生産物の交換を通してはじめて社会的に接触するが,物象化とは人間の活動の産物をあたかも人間の産物以外の何物かであるように理解することである」と述べている。社会的現実の起源が人々や人間関係にあることが忘れられて,超人的なこと,自然現象,あるいは神の御心の顕現などとして理解されるということである。資本主義社会は,人間が作ったはずの物や貨幣が,人のように人格化,あるいは神のように神格化されてしまい,人間を支配している世界だと言われる。

ブランド志向も,旧統一教会の霊感商法も,資本主義社会のフェティシズムに他ならない。安倍元総理の国葬への反対の声は,日増しに高まっている。この国葬は,政治家が作り出したフェティッシュ(物神)に過ぎないと,国民が気がつきはじめているからだろう。国葬に使う金があれば,経済政策に金を使え。老若男女を問わず,こうした声は少なくない。国を挙げてのまつりごと(物神崇拝)よりも生活者にとっての現実。こうした国民の声は東京五輪のとき以上に高まっている。山上容疑者の凶行の原点も,「まつりごとよりも生活者にとっての現実」であった。いまだに政治家の耳には,こうした声が届いていない。

丸山圭三郎は,その著書『文化のフェティシズム』(勁草書房 1984)の中で「現代文化の一つの特徴としてあげられるものは『本物の喪失』すなわち『もどき文化』である」と述べている。行列に並んで食べるほどのうどん店に,騙されて元々と思って並んでみるのは悪くないだろう。コロナワクチンという生産物が市場へ出てきたとき,我先にと順番待ちをするより,騙されたと思って接種を受けるぐらいの方が,副反応がきつかった,打っていたのに感染したと,悔やむことも少ないのかもしれない。

(マインドファースト通信 編集長 花岡正憲)

第222回理事会報告

日 時:2022年8月8日(月)19時00分~21時40分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること(事前配布資料有):島津理事長から,7月期の会計報告について,説明資料を基に報告があり承認された。

第2号議案 2022年香川県地域自殺対策強化事業に関すること:➀ブロシュールに関しては,フォークス21を2000部 増刷し,発注することで了承された。⓶「2022年度ファミリーカンセラー養成講座・基礎コースFC養成講座」に関しては,公募開始から受講受理決定までの流れを添付書類に沿って確認し,以下のことが了承された。開催日時は①11/6,②11/13, ③11/27, ④12/4, ⑤12/11,⑥12/25の13:30~15:30とし,場所を丸亀町レッツカルチャールーム2とする。講師・アシスタントに関してはメーリングリストで呼びかけ,8/20までに返事をもらい,その後個別に交渉をする。チラシ発送下準備の作業日は9/19(月)10:00とする。なお,当日は養成講座のチラシ発送準備作業の後,相談事業のブロシュール等発送の準備のための作業(各相談事業のブロシュール,カードのセットを作る)を行う。➂新規作成ファクトシートに関しては,「愛着障害」「若者と心の健康」「ヤングケアラー」等から作成する方向で,継続審議とする。以上が了承された。

第3号議案 世界メンタルヘルスデーのキャンペーン(10/9)に関すること:今年度はシルバーリボンをステッカー作成とする方向で,柾がステッカー作成先を調べることになった。発送作業を10/2(日)10:00とし,チラシは従来通りとするが今年はCOVID-19のチラシの代わりにファクトシート「大規模災害とメンタルヘルス」を加えることで了承された。

第4号議案 オンライン会議のネットワークの構築に関すること:AIYAシステム担当者と連絡がついていないため継続審議とすることで了承された。

第5号議案 「居場所づくり事業」に関すること(ルポ:添付資料あり):➀「居場所ルポ」運営に関する居場所づくりは原点に戻って,平成28年11月14日実施の企画運営会議実施要項に基づいて進めて行くことで以下のことが承認された。名称は企画運営会議とし,月1回開催する(柔軟に対応)。構成メンバーは企画運営委員6~8人とする。現在の委員3名(植松,花岡,山奥)が中心となり,他の委員を公募するなどは企画運営委員会で決める。スタッフ不足が予想される回の開催やスタッフの体調不良等の緊急時のスタッフの補充に関しても企画運営委員会で決める。コンサルテーションに充てていた日時(8/20 or 8/27 の17:00 ~18:30 )を企画運営会議の運営委員会開催日とする。➁リトリートたくまのコンサルテーションの意義に関すること:担当者より「リトリートたくまは,様々な年齢・性別・状態の人たちが参加している。その参加者のニーズも多様であり,それぞれの目指すゴールもまちまちである。またスタッフもメンタルヘルスユーザーや,福祉職経験者などさまざまで,スタッフが戸惑うことも少なくない。そうした状況の中でコンサルテーションを受けることは,スタッフ自身が立ち止まって利用者との関りの中で自分達が何をどう感じているかを整理し,十分な知識を持っていないことで起こる不安や迷いを軽減して,安心して対応できることへの支えとなっている。また,スタッフ同士が互いの理解や気持ちを確認・共有することにもつながり,そうすることで,利用者に対してゆるやかな一貫性のある関わりが持てて,よりよい援助ができると思われる」と説明があり了承された。

第6号議案 マインドファーストの集合的アイデンティティに関すること:7月24日のファミリーカウンセラー会議後のメーリングリスト上の議論において,マインドファースト(以下「MF」)は専門集団ではないとの見解が示されたことに関して問題提起がなされた。それにより,以下のことが再確認された。
・定款第2章第3条に,MFは,トータルメンタルヘルスの視点に立ち,精神的健康の増進,精神障害の発生の予防,精神 障害者の福祉の向上に取り組み,人びとのメンタルヘルスの向上を図ることによって,メンタルヘルスを必要 とするすべての人びとが,地域でいきいきとした生活を送れる社会を実現することを目的とする。
・倫理規定第3章 第 6 条 相談員の職務は,科学的,専門的に確立された専門分野の知識に基づき,自らの 専門能力の範囲内で遂行されなければならない。第 7 条 相談員は,職務上の活動分野における最新の情報を得るよう努め,自身が活用するスキルにおける専門的能力を維持,向上することを怠らない。第 8 条 相談員は,自身の個人的な問題や葛藤が,職務遂行の妨げとなる可能性があることを認識し,その問題や葛藤についての専門的な援助やコンサルテーションを受ける。また,自身の個人的な問題や葛藤が職務の妨げとなる可能性に気づいたときは,仕事 の制限,保留,終結などの適切な対応をする。以上のことにより問題提起者の表現を概ね借用して以下のことが共有された。
・MFの参加者は,生活者としての疑問や困難を抱えたまま生きるためにMFに参加しているのではなく,生活者としての疑問や困難を抱えながら,地域社会の課題に取り組み,解決を図ろうとしている生活者である。
・MFに求められているのは,生活者が必要とする知の体系を提示し,共有することである。したがって,国家資格などの有資格,無資格にかかわらず,生活者の「知」の欲求に応えることを第一と考える。
・MFは生活者(地域社会の人々)が生活者の課題を解決できるように潜在能力を引き出す仕事をしている専門家(スペシャリスト)である。したがって,プロと呼ばれる人たちにはない実践を支える専門家の知の体系を先駆的に習得するための学習は欠かせないことであり,有資格者,無資格者を問わず専門家集団(スペシャリスト)であるとの共通認識の上に立ち研鑽をつんでいくことである。

しかし審議するのに十分な時間があったとは言い難いので継続審議とすることで了承された。


編集後記:今月号は,「リトリートたくま」のスタッフのメッセージ特集です。リトリートとは,避難所,隠れ家と言った「場所」だけでなく,引きこもりや逃避と言った人の「身構え」の意味もあります。一人で引きこもったり逃避するのではなく,他者が存在するところで一人で引きこもったり逃避していられる場所,そうした自分が大切にしたい「身構え」に他者が気がついていて,少なくとも壊されることはないと信じられる場所,それがリトリートたくまです。身構えに変化を求められたり,他人が大切にしているものを押しつけられそうになる世界では,偽りの自己を生きるか,他者が存在しないところで一人になるしかない。そうした人が本物の自分に出会える場所が,本物の居場所だと思います。(H)