「ふるさと納税」

寄附文化を蝕む愚民政策は即時廃止を

「ふるさと納税」は,納税者が自分の意思で,地方税の納税対象を選択することができる制度である。居住地以外の地方団体に対する納税であるが,実質的には,寄附金であり,所得税,地方住民税の税額控除制度が適応されることから,2008年度の導入以来,寄附件数,寄附額共に大きく増大している。

ふるさと納税は,全国の応援したい地域に寄附ができ,文化財保護,環境保全,子育て支援など,寄附金の使い道も指定できるため,名目上は,その地域へ貢献することができるとされている。さらに,寄附の「返礼品」として地域の特産物などがもらえた上に,税の控除も受けることができるため,魅力的な制度であると言われてきた。

しかし,このところ,ふるさと納税制度は,ふるさとや地域応援のためではなく,返礼品を目的とした寄附が増えたため,地域間の返礼品競争が加熱し,地域を応援するための寄附という本来の趣旨が希薄となっている。そもそも納税への対価に当たる返礼品と言う反対給付が組み込まれている拠出金が寄附と呼べるだろうか。

返礼品は,ゴルフ場の会員になった者が,グリーンフィーやロッカーなど施設を安価な料金で使用できたり,マンションの入居者がエレベーターなどを利用できたりする場合と同じ共益部分に相当し,およそ寄附の公益性と言う概念とは相いれない。

ふるさと納税は,一部自治体に寄附が集中する一方で,

他の多くの自治体は減収に苦しんでいる。諸経費を含めると,自治体に残るお金は少ない。返礼品による反対給付を受けた住民が恩恵を受け,ふるさと納税が出来ない住民は失われた税収入分による行政サービスの低下を受けると言う不公平も生じている。

ふるさと納税をした後に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を寄附して自治体に送れば,寄附金上限額内で寄附したうち2,000円を差し引いた金額が住民税から全額控除される。ワンストップ特例制度が適応され,確定申告なしで,寄附金控除が受けられる仕組みになっている。本来国が負担すべき所得税控除を地方自治体が個人住民税控除で負担していると言うことだ。住民が自由に納税対象を選ぶことができる制度を国が設けることは,国から独立した団体である地方自治の本旨に抵触しかねないと,憲法違反を指摘する識者もいる。

寄附とは,地域社会の課題に取り組んでいる団体の趣旨に賛同して経済的無償の供与を行うことである。負担を伴わない「寄附」は寄附の理念に反し,NPOなど他の団体の寄附との間に不公平が生じる。

「世界寄附指数(World Giving Index)」は,人助けランキングとも呼ばれ,このランキングを国別で見ると,日本は, 2021年は119か国中,全世界で下から2番目でほぼ最下位である。日本の寄附が浸透しない理由に,「昔から寄附の文化がなかった」「NPO法人や一般社団法人といった団体制度が,比較的新しい」などがあげられることが多いが,マスメディアの責任も大きい。ふるさと納税←


→を返礼品と税制上のメリットの観点で論じる姿勢からは,寄附文化を育てようとする理念が全く感じられない。人の物欲に火をつけるような愚民政策になってしまったふるさと納税は,即時廃止すべきであろう。

(マインドファースト通信編集長 花岡正憲)

研修報告JSCPいのち支える自殺対策推進センター

「令和4年度自死遺族等支援団体向け研修・情報交換会」

マインドファーストファミリーカウンセラー 井口真由美

2023年3月25日に標記のオンライン研修会に参加しました。最初に,遺族の心情に配慮した表現として「自殺」ではなく「自死」を用いることが説明されました。前半は,自死遺族等支援事業のこれまでの歩みと法的根拠,新たな自殺総合対策大綱の内容と全国の取り組みについての情報提供がありました。後半は,「各団体が直面している自死遺族等支援の活動に関する課題について」をテーマとしたグループディスカッションが行われました。

グループディスカッションは,それぞれの団体の課題について具体的な情報交換の場となりました。当事者で構成されている自助グループの団体,支援者の中に当事者が含まれる団体,臨床心理士や精神保健福祉士等の資格を持つ専門家で構成する団体などさまざまでした。そのため,支援者が当事者であることのカミングアウトについての問題や申込時の個人情報におけるLGBTQ+の問題,未成年の遺児に対する支援の問題,行政との関わりに関する問題等幅広い議題が挙げられました。特にオンライン実施の課題について,すでに取り組んでいる団体からの情報提供は興味深いものでした。

さまざまな団体の特性を生かした取り組みに触れることができ,充実した2時間でした。今後も関わりを持ちたいという希望から各団体の連絡先が提出され,継続して情報交換できるきっかけを作っていただきました。

第231回理事会報告

日 時:2023年5月1日(月)19時00分~21時25分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること(事前配布資料有):4月期の会計報告について,島津理事長から説明があった。決算期を迎え,精算払いの収入科目について報告があり了承された。

第2号議案 「居場所づくり事業」に関すること:理事長による居場所づくり企画運営委員会が招集され,5月30日18:00から開催されることになり,了承された。

第3号議案 令和4年度共同募金(令和5年度助成事業)テーマ募金助成事業変更申請書に関すること(添付資料有):山奥理事が起案作成したものを理事長が調整して,

総額事業費1,000,000円で申請することで了承された。

第4号議案 令和5年度共同募金(令和6年度助成事業)テーマ募金申請書に関すること(添付資料有):山奥理事が起案したものが承認された。

第5号議案 三豊市こどもの居場所づくり活動助成金申請に関すること(添付資料有):柾理事が作成した起案書面について理事長から説明があり,原案通り了承された。

第6号議案 香川県NPO基金分野指定寄附補助金の補助対象事業に関すること:リトリートたくまが賃借物件として使用している建物修理費用について,標記補助金を受給申請することについては,賃貸人と賃借人であるマインドファーストとの間で建物賃貸借契約書を締結した上で補助金交付要綱に基づき,その適合性を確認すること。また,賃貸人がマインドファーストの代表者ではないが理事であることから,利益相反行為に該当することの有無,さらに該当する場合の手続についても検討することで了承された。

第7号議案 2023年度総会に関すること:①総会日時場所は,6月18日(日)10:30~12:00,四番丁コニュニティセンターとすることで了承された。②事業報告書,事業計画書については,メーリングリストで確認加筆修正の期間を設けること,③定款変更については,理事会議事録の署名押印を自署に改訂すること,④役員改選については,就任に向けてインセンティブを高めるため,オンライン会議の導入について説明を行うこと,⑤案内文と議案書の作成発送はAIYAシステムに依頼すること,以上が了承された。

第8号議案 財務諸表に関すること:理事長から,財務諸表についての説明があり,了承された。

第9号議案 6月の定例ファミリーカウンセラー会議及び学習会の会場に関すること:6月25日(日)13:30~15:30の開催場所は,丸亀町レッツホールカルチャールームの確保が難しく,四番丁コミュニティセンター1階和室とすることで了承された。

第10号議案 6月の「おどりば」の開催に関すること:6月開催のひきこもりの家族の支援グループ「おどりば」は,主宰者の対応が困難になることが見込まれるため,ホームページ上で休止案内並びに7月以降の案内は追って行う旨を表示することで了承された。

編集後記:「ふるさとの山に向かひて言うことなし ふるさとの山はありがたきかな」自分を育てくれたふるさとへの思いをうたった石川啄木の詩です。かの有名なドヴォルザークの交響曲第9番「新世界」は,彼がアメリカ滞在中に,ふるさとボヘミアへ向けて作曲されたと言われます。「ふるさとは遠きにありて思ふもの」(室生犀星)は,ふるさとへの切ない思いを表現したものです。ふるさととは,必ずしも懐かしいだけでなく,人によっては複雑な思いの場所のこともあります。こうしたふるさとへ,歌や言葉など,何かを届けたくなるのは自然な感情でしょう。ふるさと納税と言う経済的支援もその一つでしょう。ところが,いつの間にか,その土地の名産品を安く手に入れたい所もふるさとと呼ばれるようになりました。返礼品への夢をめぐらせる先がふるさとと言うのは,さびしい限りです。〽夢は今もめぐりて,忘れがたきふるさと・・・。(H)