報告

令和5年度

第2回高松市自殺対策推進会議

マインドファースト理事 花岡正憲

2023年11月21日(火),高松市保健センターにおいて令和5年度第2回高松市自殺対策推進会議が開催され,島津理事長代理で出席しました。今回は,2024年度から2028年度までの「第2期高松市自殺対策計画」(案)について協議が行われました。

はじめに,精神保健担当から高松市の自殺の現状について報告があり,その後,健康づくり推進課課長から第2期計画案についての説明がありました。

第2期計画の基本理念は,国の大綱にも掲げられ,第1期計画の基本理念にもなっている「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を継承しています。第2期計画では,市の重点施策として,高齢者の自殺対策の推進,生活困窮者の自殺対策の推進,勤務問題による自殺対策の推進に加え,子ども・若者の自殺対策の推進が新規に追加され,若年がん患者への支援(健康づくり推進課担当)が新たに設けられました。若年がん患者やその家族の悩みや不安の軽減を図るためには,家庭,医療,訪問看護,学校等の連携を図るために,保健活動における高度なコーディネート機能が期待されます。

従来の10の基本施策に加え,11番目の施策として「感染症・自然災害等により精神的負担を抱えている人への支援の強化」が設けられています。

自殺予防のための周知啓発(健康づくり推進課担当)については,対象を高校生から,中学生,専門学校生,大学生に広げ,ヤングケアラー等の相談支援においては,ヤングケアラー・コーディネーターの配置

(こども女性相談課担当)が明記されています。

子ども・若者支援に係る事業の拡充や多様化は大切ですが,利用者にとっての無駄や遅滞などの混乱を招くことがないよう,包括的で切れ目のない支援を提供することが欠かせません。健康づくり推進課,こども女性相談課,少年育成センター,総合教育センター,学校教育課,子育て支援課,健康福祉総務課など,事業担当部署ごとの縦割りサービスではなく,支援現場における柔軟な連携と子ども・若者支援推進部局における総合調整機能が求められます。

「こころの健康を支援する環境の整備とこころの健康づくりの推進」共助の基盤づくり事業として,「地域サービスの担い手を育成,確保し,地域のボランティア活動の活性化」(長寿福祉課担当)が新規で設けられています。一方で,高松市は,ゲートキーパーの認知度が20%未満と低い中で,対象を特定したゲートキーパー研修は,市職員以外に見るべきものはありません。自殺対策に係る人材の育成と確保のためには,広がりのある人材育成が欠かせません。地域社会のあらゆる階層に向けて呼びかける人材育成グランドデザインを持つべきかと考えます。

第1期計画の重点施策の一つでもあった自殺未遂者支援については,「医療と地域の連携推進による包括的な未遂者の支援」における市の取組みとして「高松市立みんなの病院」の役割に,「自殺未遂者が入院した場合,専門分野の受診を勧めます。また,退院時には切れ目のない支援が受けられるように,市関係課に情報提供を行います」と言う記述がありました。第2期計画では,市立病院の自殺未遂者の救命救急並びにコンサルテーション・リエゾン体制,メンタルヘルスケアにおける役割が期待されていましたが,今回は,「相談ダイヤル等を記載した←


→カードの救急外来への設置」とあるのみで,第1期経過よりも後退したものになっています。ハイリスク者への具体的な対応としては,県の取り組みとして,県立中央病院等の医療機関と県精神保健福祉センターの連携をとおした拡充がうたわれているのみです。

自殺予防には,プリベンション(未然防止)とポストベンション(事後の対応)に加え,インターベンション(未遂者への対応)が欠かせません。このことに関連して,警察行政委員から,救急隊の自殺未遂者搬送先医療機関の確保を期待する発言がありましたが,市当局から明快な回答はありませんでした。自殺対策基幹病院としての市立病院の体制整備が急がれます。

第2期計画では,「新規」「拡充」と明記された取り組みが増えていますが,実効性を高めるためには,文言表記だけでなく,とりわけ人材確保において予算的裏付けを示した計画を策定すべきであることは言うまでもありません。

第2期計画案では,外国人移住者への支援計画は取りあげられていませんが,基本支援施策においては,外国人移住者をハイリスク生活者であるとの認識が必要かと考えます。

今後のスケジュールとしては,12月に市議会での審議,2024年1月のパブリックコメントを経て,年度内に第2期計画が策定される見通しです。

本推進会議開催においては,特に学識経験者委員の欠席が目立ちますが,これは今後の課題と言えるでしょう。推進会議に必要な人材であるとの市当局の判断があって委員委嘱を行なったわけですから,再任での市長委嘱手続きのさいに,出席への動機づけを図る働きかけが必要ではないかと考えます。


第239回理事会報告

日 時:2023年11月13日(月)19時28分~21時30分

場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること(添付資料有):理事長から10月期に関する報告があり承認された。

第2号議案 調査研究事業に関すること:①居場所づくり:ルポ11/5参加者0名,11/12 参加者1名。12/19または12/26に,居場所づくり企画運営委員会開催が予定されている②12/24(日),四番丁コミュニティセンターにて,ファミリーカウンセラー会議及び学習会開催後,傾聴・相談力セミナーワーキンググループを行なう。以上が了承された。

第3号議案 香川大学学生(教育学部4年生)からのインタビュー依頼に関すること(添付資料有):卒論テーマが引きこもりに関するものであるため8項目ほど質問したいとの趣旨である。日程調整をしてオフィス本町で島津理事長と「リトリートたくま」担当理事柾が対応,おどりば担当の森本理事は時間調整が可能になれば参加することで了承された。

第4号議案 技術援助に関すること (添付資料有):①2/10(土)10~11時,三木町防災センターで開催の「三木町PTA協議会指導者研修会」(対象者20~30名)に,上田理事と花岡理事の2名を派遣することで了承された。

第5号議案 2023年度香川県地域自殺対策強化事業に関すること (添付資料有):①ブロシュールの印刷:「フォークス21」は900部残,「サバイビング」は800部残,「HOPE」は1200部残であるため増刷する。②ぴあワークス,ピアサポートラインのチラシに関しては年度内に改定の可否を判断する。③予算計上されているファクトシートは,既刊分の増刷か,新規分として候補にあげられた「ヤングケアラー」「発達障害」の印刷を行う。新規については,花岡理事が担当することで了承された。

第6号議案 リトリートたくまに関すること:以前から辞職の申し出のあったスタッフに加えてさらに1名が健康上の理由から辞職したいとの申し出があった。3人体制を維持することは難しいので臨時雇用1名を考えている。青木理事より,月に1回であれば従事可能と申し出があった。柾理事と後日,日程調整の予定。ファミリーカウンセラー会議でもスタッフを呼びかけることや現スタッフに相談して従事日数を増やすことが可能であるかの確認を取ることで了承された。

第7号議案 内閣官房孤独・孤立対策官民連携プラットフォームの「孤独・孤立対策に資する官民連携による特色ある取組の推進」に関すること (添付資料有):孤独・孤立対策に資する取り組み事例募集については,官民連携ということからリトリートたくまが一番該当する事業と思われるのでリトリートたくま担当の柾理事に作成を担当することで了承された。

第8号議案 ファミリーカウンセラーの認定に関すること:10/9の合同会議において「ファミリーカウンセラーは誰でもなれる」発言があった。後日参加者より手紙でファミリーカウンセラーの認定に関して共通認識が必要ではないかとの意見書が届いた。こうした経緯を踏まえ,理事会においてファミリーカウンセラーの認定作業について確認することになった。ファミリーカウンセラー申請やファミリーカウンセラー資格認定審査は,関連規定に基づいて実施されているものであること,資格認定審査は,資格認定委員による面接が行われた後に合否会議がもたれ,合議によって合否が決められるものであることを理事全員が確認をした。以上のことを踏まえて,発言者より「誤解があったかもしれない。不適切な表現だった」と訂正があった。最後に理事長より,ファミリーカウンセラー認定後も,各個人が研鑽を積むことが大切である。研鑽の場として当法人は学習会や養成講座などを提供している。ファミリーカンセラーやピアサポータはこれらを大いに活用して自己研鑽に努めて欲しいと述べた。以上が了承された。

第9号議案おどりばのスタッフに関すること:おどりば担当者より,申し出があったファミリーカウンセラー岩﨑祥子氏に1月よりスタッフとして参加をお願いしたいとの提案があり,承認された。

編集後記: 11月10日,かがわ国際会議場において,過労死等防止対策推進シンポジウムが開催され,企業からの取り組み事例発表,元新聞記者でライターの取材から見えてきた過労死の実態報告,過労死遺族の訴えがありました。毎年11月は「過労死等防止啓発月間」であることから,厚生労働省主催で行われたものです。国の過労死対策では,「しごとよりいのち」「過労死をゼロにし,健康で充実して働き続けることのできる社会」と言った活動標語が掲げられています。一方,働き方改革が叫ばれるなか,大阪・関西万博協会が,万博工事における労働時間の上限規制の緩和を政府に求めるなど,日本人の生き方は,仕事中心になりがちです。「しごとよりいのち」「過労死ゼロで働き続ける社会」などと,「仕事」と「命」という,そもそも相対化できないものを相対化しようとする。こうした日本人の発想に,この社会問題への取り組みの限界を見た思いです。問われているのは,働き方ではなく,命をどう生きるかの生き方改革ではないかと思います。(H.)