技術援助・講師派遣

三木町PTA連絡協議会 子どもSOS対応向上力研修

マインドファースト理事 花岡正憲 

マインドファースト理事 上田ひとみ

三木町防災センターにおいて,2024年2月10日(土)10:35~11:40,「三木町PTA連絡協議会子どもSOS対応向上力研修」が開催され,講師として花岡正憲と上田ひとみを派遣しました。本事業は,「SOSの出し方に関する教育」に基づき三木町住民健康課が主催し,「子どもが,現在起きている危機的状況,または今後起こり得る危機的状況に対応するために,適切な援助希求行動(身近にいる信頼できる大人にSOSを出す)ができるようにすること」,そして「身近にいる大人がそれを受け止め,支援ができるようにすること」を狙いとしたものです。当日は,PTA関係者約30名が参加しました。

今回は,保護者のSOSへの向き合い方について,講師2名による即興でのロールプレイのデモンストレーションを行い,これを踏まえて,参加者との意見交換や質疑を行う構成で研修を進めました。

はじめに,予め準備した12の仮想事例(乳幼児の言葉の遅れから18歳の大学入学直後の不適応など)のヴィニエットのプレゼンテーションを行い,そのうちから,受講者に,講師のロールプレイを希望する2例を選んでもらいました。

選ばれた事例は,1例目が,「学校が終わると友だちと遊んでくると言って出かけるが,泥まみれで,帰宅が遅くなることがあり,一体どこで何をしているか尋ねても,友達と遊んでいたと答えるだけで,親に何か隠していることがあるのか,心配している10 歳になる小学校 4 年の息子を持つ母親」

2例目は,「1 学期で部活がなくなり,高校受験のため予備校の夏期コースに通い始めたが,気持ちが抑えられず怒りっぽくなり,ネットゲームで夜更かしをして,朝も起き辛そうで,高校受験を前に,心配が絶えない15 歳の中学3 年の息子を抱える母親」です。

2例のロールプレイの後の質疑と意見交換に共通していたことは,コミュニケ―ションが取り難い子どもとの関係の持ち方に関するものでした。親や大人から見て気になる子ども言動であっても,発達成長過程にある子どもにとっては,まず意味のあることとして受けとめ,親の不安を解消するために,解決や結果を急ぐのではなく,子どもが大切にしていることに親が関心を示し,日頃から対話が成立する関係を大切にしておくことを強調しておきました。

最後に,マインドファースト監修のファーストシート「子どもと親の愛着関係〜愛着障害からの回復のために〜」を用いて,「愛着(アタッチメント)とは何か」「認知機能と社会的発達を育む安全基地」についての簡単な講義を行い,追加説明として,裏面に記載している相談窓口として,当法人の「フォークス21」と「HOPE」の説明を付け加えておきました。


グリーフワークかがわ ホットライン特別研修

マインドファースト理事長 島津昌代

2024年2月29日(木)午後7時00分~8時30分,高松市男女共同参画センター研修室にて,認定NPO法人グリーフワークかがわの認定カウンセラーのための研修―即時直通型電話相談「自殺予防土曜ホットラインかがわ」の相談対応について―が行われ,マインドファーストから島津が講師として派遣されました。参加者は15名で,全員グリーフワークかがわ認定グリーフカウンセラーの方でしたが,全員がこの電話相談を担当されているわけではなく,研修の目的としては,新たに電話担当に入るための心構えを整えるものでした。

皆さん,認定グリーフカウンセラーとなるための研修は受けておられるので,ゲートキーパーについての基本的な講義は割愛し,5人一組のグループで少し変則的なロールプレイ演習を行いました。仮想事例への対応を考える中で,自分が電話担当に入るに当たってどういうことが気になるか,何が不安か,自分自身の気持ちと向き合い,それを言葉にすることを通して,参加者同士の意見交換や新たな気づきがあったようです。

相談支援活動において,研修とはケースと関わる自分達自身の対応や姿勢を見直すものであり,それが実践を支えるものであることを,こちらもあらためて学ばせていただく貴重な機会となりました。←


→ 2023年度綾川町ゲートキーパー養成研修

マインドファースト理事 青木節子

マインドファースト理事 花岡正憲

2024年3月8日,綾川町健康福祉課主催のゲートキーパー養成研修が綾川町健康福祉課えがおにおいて行われ,マインドファーストから花岡と青木が講師として派遣された。健康推進員や学校関係者など16名の参加があった。綾川町ではコロナ禍以降不登校児童が増加しており,自殺対策の支援を関係機関・健康推進員と共に考える事を目的として開催された。最初にえがおの村上保健師から,綾川町の自殺の現状とゲートキーパーの役割について10分ほど説明があり,その後,花岡から「子ども・若者のこころの不調にどう向きあうか」と題して60分の講義,続けて青木による演習が行われた。講義では,自殺の防御因子・自殺神話・リスクを抱えた人への対処法・子ども若者へのエンパワーメントなどについての解説,後半の演習では仮想事例を提示し,3人1組のグループでのロールプレイを行った。

質疑応答では,発達障害等の恐れがあるとの相談の中で事実関係を求められても医学的知識がないのでどう答えればよいかわからないという問いがあった。花岡より,子どもの成長は目まぐるしく自然経過の中で解消していく場合もある。まずは,対話の中で,相談される方の混乱を整理し冷静に経過を追っていく事が大切だと説明がなされた。また,普段は相談を受ける側だが,ロールプレイで相談する側を体験して,相手を思いやっている事が,実は相手の求めているものと違っている場合がある事に気が付いたとの感想があった。それを受けて,花岡より,傾聴する事も大切であるが,対話することが非常に大切であり,対話を通して,曖昧になっている事を明らかにしていく事は,困難の解決の糸口にもつながる事が話された。

今回の参加者には,綾川町オリジナルのゲートキーパー養成研修修了カードが渡されていた。参加された方の意識づけに役立つ工夫に,保健師の熱い思いを感じた。


第243回理事会報告

日 時:2024年3月11日(月)19時00分~21時30分

場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること:理事長から2月期に関する報告があり,承認された。

第2号議案 調査研究事業に関すること:①居場所づくりに関すること:2月27日に第6回企画運委会議が開催され,最終報告がまとめられた。今後の居場所(REPOS)の運営には,条件整備が必要なため一旦休止することになった。運営委員の中には,名称,条件を変更し運営の継続を望む者もいるが,今後の居場所運営のあり方については,年度が変わり,必要があれば新たな委員を募り,その中で議論を行う。なお,REPOSの休止についてその周知の方法については,4月からの休止を目途として,3月26日開催の第7回目運営委員会の中で議論を行ない,徹底を図ることとする。②傾聴相談力セミナーワーキンググループに関すること:3月24日に第5回ワーキンググループが開催される。以上が承認された。

第3号議案 テーマ募金に関すること:3月6日(第8週終了)時点での実績報告があり,2021年と2022年の最終額が示され,残存募金期間において更なる募金活動が必要になることを確認した。

第4号議案 2023年度香川県地域自殺対策強化事業に関すること:①3月6日,ファクトシート新版「子どもの発達が気になる方に」10,000部の印刷発注を行なった。今後,保健センター等の乳幼児健診との連携を図るなど,子育て不安を抱えている親への積極的活用の方法を検討することで了承された。②2月25日,関係機関に対して,ブロシュール及びPRカードのセット約300をクロネコメール便で発送した。

第5号議案 リトリートたくまに関すること:「リトリートたくま」は,当法人の理事所有の賃貸借物件であることから,法人と代表権を有する理事との間での賃貸契約を結ぶにあたり,定款37条の4(理事会の議決について,特別の利害関係を有する理事は,その議事の議決に加わることができない)並びに,特定非営利活動促進法第17条の4(利益相反行為の禁止:特定非営利活動法人と理事との利益が相反する事項については,理事は,代表権を有しない。この場合においては,所轄庁は,利害関係人の請求により又は職権で,特別代理人を選任しなければならない)を踏まえ,次回理事会において審議することで了承された。

第6号議案 ファミリーカウンセラー養成講座に関すること:標記新マニュアルに基づき,2024年度のファミリーカウンセラー養成講座・基礎コースは,7月以降で,6回の講座日の間隔が極端に広がらない範囲で実施できる会場を借り上げることで了承された。

第7号議案 マインドファーストの事業についてのアンケートに関すること:担当の青木理事から案が示され,アンケート内容とマインドファーストの人的配置を示した業務分担表について一部加筆修正を行なった後,さらに理事メーリングリストで最終チェックを行うこと,アンケートの対象者は,ピアサポーター,ファミリーカウンセラー,会員とすること,アンケート締め切りは,3月30日とすることで了承された。

第8号議案 来年度の事業計画・予算に関すること:子育ての不安を抱えている親に伝えたいものがあることから,2025年1月~3月に,心の健康オープンセミナーまたはシンポジウムを開催する提案があった。これに対しては,現在の事業を確実に根付かせていくことなどの意見もあり,いずれにしても,アンケート結果を踏まえ,全体の事業の見直しの中で議論していくことで了承された。上田理事から示された傾聴相談力セミナーの概算予算要求については,今後の全体の収支予算計画の中で検討することで了承された。2025年度定期総会は,6月9日(第2日曜日)午後に開催することで了承された。

第9号議案 人材・組織育成事業の業務内容に関すること:役割分担については役割分担表を基本とし,役割交替にさいしては,後任の役割が曖昧にならないように,引継ぎを徹底しておくことで了承された。

編集後記:「ニュー・シネマ・パラダイス」は,第二次世界大戦終結後のシチリア島を舞台に,映画好きの少年トトと初老の映写技師アルフレードのヒューマンな触れ合いを描いたイタリア映画です。小学校卒業試験を受けるトトの教室で,何人かの大人も一緒に,試験を受ける場面があります。アルフレードもその一人ですが,アルフレードにとって試験は難しく,斜め前に座ったトトに「助けてくれ」とサインを送ります。祖父と孫ほどの年の違いがある2人が席を並べて試験を受け,子どもが大人のカンニングを助ける場面は,痛快で,ほのぼのとするものがありました。日本では,義務教育未就業者のための学びの場が,夜間中学として開設されてきました。2022年,香川県でも三豊市立高瀬中学校夜間学級が開校しました。3月10日,岡山自主夜間中学校代表で三豊市総合政策アドバイザーでもある城之内庸仁(しろのうち のぶひと)氏を講師として招き,「学ぶ力は生きる力」というテーマで講演とワークショップが開催されました。三豊市の夜間中学対象者は,1年生が8名,2年生が10名で,学齢超過者だけでなく,学齢期にある者,外国籍の者が在籍し,不登校特例校に指定されていることから,不登校,いじめなどでメンタルヘルスの問題を抱えた子どもたちの居場所にもなっていることが分かりました。一方大都市部では,8,9割が外国籍で,4~6割が生活に支障をきたす識字能力であるとのことです。夜間中学が,日本語学校化すると言う批判もあるようですが,移民受け入れ小国の日本では,外国籍を持つ者にとって,日本語リテラシーだけでなく,政治,文化,社会,経済,地理,歴史,ヘルスケアなど日本で生きていくためのリテラシーを高めていく場が乏しいと言うのが実情でしょう。今回の講演とワークショップは,香川の夜間中学を応援する会の主催で,潜在的需要が見込まれる高松市に,中学の夜間学級を開設する機運を高めていく狙いもありました。特に戦争でのダメージが大きかった沖縄は,需要が多いと言われます。戦後処理の内需として立ち上げられた夜間中学ですが,多様化,国際化が進む中で,学びの場へのニードも多様化し,「夜間」や「中学」と言う枠組みが曖昧になり,脱構築が求めれる段階にあるようです。学びを求める人よりも早く学校が育つことはなく,学びを求めている人によって学校が育てられるという視点に立ち返り,夜間中学も含め学校教育のあり方が問われていると感じた次第です。(H.)