ブラック企業の周辺

公立学校教職員の健康管理

毎年3月から4月,世間が桜の開花便りに浮かれるころ,学校現場は,1年のうちで最も緊張感と多忙感が高まる時期になる。

年度末の人事異動発表があると,直ちに新年度からのクラス担任などの役割分担,校務分掌事務の割り振りが行われる。部活顧問や現職教育担当,奨学金の窓口業務,改善されつつあるとは言え,給食費や教材費,学級費,PTA会費や修学旅行の積立金など,様々な集金業務も教員の仕事である。

新しい教材づくりと授業準備に追われる中で,授業参観や家庭訪問などのスケジュールも入ってくる。そして,5月の連休明けは,環境の激変によって心身の健康を損ない,「適応障害」などと診断される教員が出始める時期でもある。

「学校保健安全法」とは,学校における児童生徒等及び職員の健康の保持増進を図るため,学校における保健管理に関し必要な事項を定めたものである。職員の健康の保持増進も謳われているが,事件・事故や自然災害など危機発生において学校の職員がとるべき措置が中心である。職員はあくまでも児童生徒の健康の保持増進を支援する立場であり,健康管理の対象になりうる労働者としての視点は明確でない。学校によっては,職員の健康管理を養護教諭に丸投げするようなところもあるが,児童生徒の保健業務に追われる養護教諭も,健康管理の対象となる一教員に他ならない。

一般労働者の安全と健康についての基準を定めた法律「労働安全衛生法」は,社会経済活動のひずみから,労働災害を被る労働者が少なくないという現状を踏まえ,「職場における労働者の安全と健康を確保」と「快適な職場環境を形成する」ことを目的に制定された法律である。労働安全衛生法には,企業の責務として,安全衛生管理体制の整備,リスクアセスメントの実施,労働者の健康保持・増進のための措置,快適な職場環境の形成などが定められている。

10年前の2014年6月 25 日,「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が公布された。改正法では,メンタルヘルス対策の充実・強化を図るために,労働者の心理的な負担の程度を把握するためのストレスチェックの実施が事業者

に義務付けられた。事業者は,検査結果を通知された労働者の希望に応じて医師等による面接指導を実施し,その結果,作業の転換,労働時間の短縮,その他の適切な就業上の必要な措置を講じなければならないとされている。

一般企業では,製造,研究開発,営業などの事業部門と人事や健康管理を担当する総務部門があり,社員の健康問題については,何かと仕事第一主義になりやすい事業部門任せではなく,健康管理部門が対応することが少なくない。学校に決定的に欠けているのは,こうした一般企業における労働者に対する健康管理という視点である。公立学校教職員の健康管理に関わる部署や健康管理担当者が見えにくく,健康管理医も機能していない。

労働安全衛生法治外法権下にある学校は,労働基準法という法の網の目もかかりにくい。2022年度に文部科学省が実施した公立学校教員の勤務実態調査によると,平日の平均労働時間数は,小学校が10時間45分,中学校11時間1分で,長時間の残業や持ち帰り残業が常態化している。月の残業時間数が80時間を超える中学校教員は,3人に1人と言われる。

労働基準法では,1日8時間・週40時間を労働時間の上限に定めており,それ以上働かせると,使用者が罰則の対象になる。1日8時間を超えた労働があった場合,割増の超勤手当を支払う必要がある。国家公務員などの一部をのぞいて,公立学校教員も,基本的には労基法の対象者である。

一方で,公立学校職員には,「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」いわゆる「給特法」が設けられており,残業をしても超過勤務手当は支給されず,その代わりに,給与の月額に4%上乗せした額を支払うことになっている。公立学校の教員だけを対象に,労働基準法とは異なる時間外勤務に関する特殊ルールがあるのは,脱法的といえる。

今年に入って,教員が生徒から預かった高校受験のための入学願書の出願ミスが相次ぎ,生徒が受験の機会を失い,生徒側が損害賠償を請求するという事態が起きている。普段から多忙な上に,受験期はさらに仕事が増える事情を指摘するむきもあるが,そもそも出願作業を教員が引き受ける必要があるのかという問題がある。

最近は少なくなりつつあるとは言え,ウサギやニワトリなどを飼育する学校もある。←


→家で動物を飼っている小学生が少ないため,生き物の命に関わる体験の機会を与えることが子どもたちの成長にとって大事だというのが主な理由らしい。飼育委員会などを設けていても,休日に餌やりや水やりに教員が駆り出されることもある。

教育現場の疲弊は,教員としての本来業務によるものだけではない。家族や地域社会に任せておけばよいことを学校が引き受けるというパターナリズム(保護主義,温情主義)によるところも少なくない。

教員の健康管理における第一義的責任は,労務管理全般において裁量権を有する学校長にあることは言うまでもない。しかし,こうした認識が希薄で,健康管理よりも業務優先になりがちな校長も少なくないと聞く。職員会議は,現場の様々な課題について教員が率直な意見を交わせるような雰囲気はなく,上意下達の場になっていると言う。教職員の間で,学校長は,改定のたびに分厚くなる学習指導要領と教育委員会の方だけを向いて仕事をしていると言った声があるのは,もっともなことであろう。

不登校やいじめは過去最高で,ますます教員の仕事が増えているとみる向きもあるが,むしろ教員や学校にゆとりがなくなる中で,不登校やいじめが増えるという悪循環が起きているという視点が大切だ。

こうした中,先の「給特法」による上乗せ額を10%に引き上げる自民党素案が,このところの中央教育審議会で検討されている。教員の過重労働が問題であるのに,上乗せ額を引き上げるのでは,教員の労働時間数を抑えることにならず,むしろ定額働かせ放題の常態化につながりかねない。

教員採用倍率は,過去最低と言われる。生徒は教師の働き方が一番よく見えるところにいる。子どもたちにとって,教員は,将来の職業選択のロールモデルとしても機能しなくなりつつあるかも知れない。学びの場を担う人たちが,子どもたちにとって遠い存在になりつつあるとすれば,これはこれで,次世代の人たちにとって,別の大きな問題であろう。

(マインドファースト通信編集長 花岡正憲)


第244回理事会報告

日 時:2024年4月8日(月)19時00分~21時25分

場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること:3月期の会計報告について,島津理事長より説明があり承認された。なお今回の資料は添付していなかったため,後ほどメールにて送ることになった。

第2号議案 リトリートたくまに関すること (添付資料有):懸案の建物賃貸契約書について第1条から第22条までを理事長が読み上げ,審議がなされた。賃貸人と賃借人に利益相反の関係が生じるため,賃貸人(柾美幸)を自然人とし,賃借人(理事長島津昌代)が代表権を持つため特別代理人として上田ひとみを立てる。今後特別代理人を通して賃貸人 柾美幸と以下のことを交渉する。①賃貸借期間は2024年4月1から,2025年3月31日までの満1年とする。②賃料は10,000円也と定め,敷金は賃料の3か月とし,30,000円也を預け入れるものとする。③ガス,水道,電気,町内会費,駐車場代,その他消耗費は賃借人の負担とする。本物件に関する公租公課および火災保険は賃貸人の負担とする。但し,本物件内における機材および設備等に対する火災保険料は賃借人の負担とする。④賃借人の連帯保証人は花岡正憲とする。以上が承認された。

第3号議案 調査研究事業に関すること:①居場所づくり企画運営委員会議:3/26(火)19:00~20:20オフィス本町にて開催。REPOSは,4/7, 4/14をもって休止とする。ホームページにも掲載し確認した。②傾聴相談力セミナーワーキンググループ:3/24(日)FC会議・学習会後開催,次回は4/28(日) FC会議・学習会後開催予定である。以上が了承された。

第4号議案 テーマ募金に関すること:理事長より,最終寄付額72名 最終金額1,175,150円との報告があった。ホームページで完了報告を掲載することでしたことで了承された。

第5号議案 ファミリーカウンセラー養成講座に関すること (添付資料有):開催場所に関しては丸亀町レッツホール,サンポートホール,ふらっと仏生山の三か所から審議し,丸亀町レッツホールに決定した。ふらっと仏生山に関しては駐車料金が無料で魅力的な所も多いため来年度以降検討する余地がある。2024年度ファミリーカウンセラー養成講座・基礎コースは,例年通り6回シリーズで開催,日時は9/22,9/29,10/6,10/13,10/20,10/27いずれも日曜日13時30分~15時30分,会場は,丸亀町レッツカルチャールームとすることで了承された。あわせ,4月にメーリングリストで講師・アシスタント講師を募り,講師が決まりしだい6月にはチラシを作成し,総会後,第1回講師会を開く。以上を踏まえて上田理事がフローチャートを作成することで了承された。

第6号議案 マインドファースト事業についてのアンケートに関すること:担当者の青木理事より報告があった。ファミリーカウンセラー,ピアサポーター,会員計33名に郵送し18名より回答を得た。この結果報告に際し,特に記述部分は事前に分析・検討をする必要があるとの意見があり,検討会を開くことが提案された。検討会の日時等に関しては青木理事に一任することで了承された。

第7号議案 2024年度総会に関すること:開催日は6月9(日)とし,開催時刻は当初の午後1時から午後3時に変更する。場所は四番丁コミュニティセンターとし,場所の予約は理事長島津が申し込む。また監査はゴールデンウイーク明けで調整を予定している。監査には青木理事も立ち会う。議案書の作成(事業報告,事業計画,会計諸表)に関しては各理事が加筆修正を行い完成し,5月21日にはAIYAシステムに原稿を届ける。議案書発送は5月28日(火)予定とする。以上が了承された。

第8号議案 2024年度の事業計画・予算に関すること (添付資料有):令和4年度共同募金(令和5年度助成金事業)テーマ募金助成事業完了報告書をもとに理事長より説明があり,令和6年度予算に関しては各理事の知恵を借りて決めたいとの言葉があった。令和6年度傾聴・相談力セミナーワーキンググループ経費は担当理事上田より説明があり,企画人件費10,800円はまとめて投資的人的経費としてみなされた。以上が承認された。

第9号議案 オフィス本町の使用に関すること:青木理事より4月から事務局担当の申し出があり,またオフィス本町の部屋を居心地よい語り合いの場所にするため片付ける提案もなされた。青木理事が担当することで了承された。

第10号議案 男女参画センターの使用登録に関すること:青木理事より男女参画センターの使用登録をしておいた方がいいのではとの提案が出された。参画センターの事業に参加して欲しいとか事業報告を求められる場合などがあるので,メリットばかりでなくデメリットもあることを考えておくことで了承された。

第11号議案 認定NPO法人の申請に関すること:認定NPO法人の届け出は毎年行っているが来年3月で認定NPO法人5年の契約が切れる。今年秋には更新の書類提出の準備にかかる。今後理事長が多忙になるため理事各位の協力を依頼することで了承された。

編集後記:4月3日台湾東部で起きた地震では,発生してからわずか2,3時間で避難所が設営されたことが注目を集めています。被害が大きかった花蓮市内の避難所は,冷房完備,簡易ベッドが備えられ,プライバシーに配慮したテント,女性や特別支援者専用の寝室も設置されました。バラエティーに富んだ食事,Wi-Fiサービス,充電サービス,無料アロママッサージ,無料クリーニング,子どもスペースも用意されていました。台湾は,約700人が死亡した2009年の台風被害時の不十分な対応を受けて災害発生時の防災計画が見直されました。2018年に花蓮県で起きた地震では,避難所に仕切りもなく,支援物資の需要と供給が合わないなどの反省から,6年後の今回は,避難所の様子が劇的に改善されたことも指摘されました。これと対比して報じられたのが,今年1月1日に起きた能登半島地震です。「雑魚寝ジャパン」の酷さが目立ちました。「我慢」と「頑張り」いう精神論で乗り切らせようとするところは相変わらずです。被災者なのだから贅沢言わすに我慢しろと言うのでしょうか。災害時には,バランスの取れた栄養価の高い食事,良好な睡眠,ペットを連れての避難,娯楽・リクレーション,正確な情報へのアクセスが大切とされています。避難所生活において,ヘルスケアという視点が欠落しているとしか言えません。公的支援は,実施要領やガイドラインが,民間参加の障害となり,結局,ブラックサービス化させてしまいがちです。台湾は,防災計画の見直しにおいて,官民の連携体制を大切にしたと言われます。1月2日,羽田空港で,日本航空516便が,着陸した直後に海上保安庁の航空機と衝突,炎上しました。キャビンアテンダントの対応で379人全員が生還しました。民間は経験知を生かしたノウハウを蓄積しています。日本の行政も,「民間の方々のご協力も欠かせません」と言った政治的リップサービスではなく,危機管理や有事対応における民間が持っているノウハウをもっと生かすべきでしょう。(H.)