活動報告 技術援助

香川県ゲートキーパー普及啓発事業

香川県養護教諭精神保健自主研修会

マインドファースト理事長 島津昌代

2024年8月7日(水)13:30~16:00,香川県教育センターにおいて「若者のSOSと向き合うために~“死にたい”&自傷行為へのかかわり方を考える~」と題してお話しする機会をいただきました。参加者は県内の高校の養護教諭40名で,生徒が出してくるSOSにどう対応するか日々苦労されていることが今回の研修の背景にありました。県精神保健福祉センターから香川県の自殺の現状について話があった後,2時間という比較的長い時間をいただいていたので,ともすれば学校の中で一人職場となりがちな養護教諭の横のつながりをつくるためにもグループワークを行い,普段の活動を振り返って整理し,そこに新たな気づきを見出すことを狙いとしたのですが,グループワークは活発に話し合いが行われて,こちらの意図は十分通じたように思います。また,事前に気になっていることや質問事項についてのアンケートをいただいていたので,それに応えられるよう,日々の学校現場で迷ったり戸惑ったりしそうな場面をイメージしながら話をきいていただくことができました。

生徒たちの発するSOSは,狭義の自殺予防というよりも,自殺に至りかねない裾野の部分,つまり「死にたい」という言葉が「生きているのがつらい/しんどい」という今感じている生きづらさを表すSOSとして,自傷行為や摂食障害,不登校などに表れます。そうした問題が現れる背景も,学校の中での問題だけではなく,家庭の問題をはじめ実に様々だと思われますが,どこまで・どのように介入していくか,現場での対応は悩ましいところです。そうであればこそ,彼ら彼女らが抱えているつらさやしんどさを近くにいる大人として養護教諭がちゃんと受け止めることは大きな意味を持つでしょう。「死にたい」に対して「命を大事にしなければいけない」というお説教ではなく,「死にたいと思うほど,今つらい思いをしているのね」という理解が必要であり,そのためには彼ら彼女らの気持ちを受け止める聴く力(傾聴)が求められます。また,困っている人ほど,実は相談することが難しい/相談できないということもあります。そこには,相談することへの抵抗感や大人への不信感などがある場合も少なくありません。それだけに,「この人は話をきいてくれそうな人かどうか」,日常のやりとりの中で観察されている面もあり,それがわかるからこそ,実際に関わる養護教諭達は共感疲労を起こしやすくもなります。こうした自分たちへの労い・セルフケアも大切で,今回の研修会は課題の発見だけでなく,自分たちなりに頑張れていることの再確認にもなったと思います。

研修報告

令和6年度
自殺対策相談窓口担当者研修会

マインドファースト理事 青木節子

令和6年8月6日,ふらっと仏生山において,令和6年度自殺対策相談窓口担当者研修会が開催されました。出席者は香川県下の行政・教育・福祉・民間団体より48名。

はじめに香川県健康福祉部障害福祉課長 土手政幸氏より挨拶がありました。「私たち一人一人が経験する事には限りがある。多くの経験談を共有し,自分自身の中に蓄積していってほしい。」という言葉が心に残っています。

次に,社会福祉法人香川いのちの電話協会 事務局長 田中暉彦氏,事務局次長 芳野紀子氏,研修委員 佐久間きよみ氏により,ロールプレイが行われました。実例をもとに,相談者・窓口担当者に分かれてのロールプレイは,言葉がけや間の取り方など,とても学ぶところが多いものでした。

相手の呼吸や背後の物音への注意,沈黙が続く時の対応など,聴く事しか出来ない電話であるがゆえに,もどかしい思いもあるし,ずっと後をひく内容の電話もあるとの事。今回の研修会は,行政・教育など様々な立場の人達が参加しており,それぞれの現場での状況や対応,又,悩み等の意見交換が活発に行われました。様々な立場の方たちの現場からの声は,大切な学びとなりました。また,最後の田中事務局長からの「相談員は人生観を常に問われている」という言葉は,ファミリーカウンセラーとしての在り方を考えさせる言葉でした。貴重な機会をいただきありがとうございました。

会議報告

令和6年度
香川県自殺対策連絡協議会

マインドファースト理事長 島津昌代

8月30日(金)14:00~15:30,令和6年度香川県自殺対策連絡協議会がオンラインで開催された。出席者は,関係諸団体,諸機関および関係部局を代表する32名の委員で,マインドファーストからは理事長の島津が出席した。

本会議座長は健康福祉部次長尾崎氏で,県では第2期いのち支える香川県自殺対策計画に従って対策に取り組んでいること,本会議により関係機関の取組みについて情報共有を行い対策の推進に努めたいという挨拶の後,配布資料1.香川県の自殺の現状,2.第2期いのち支える香川県自殺対策計画の重点施策に対する取組み状況,3.県内各市町自殺対策計画の策定状況,4.こころの健康展,5.自殺予防の相談窓口一覧,6.地域医療に従事するかかりつけ医師のための研修会,7.香川大学メンプロ啓発動画「きーもんの勇気大作戦」,8.令和6年度の自殺対策の取組みについて,事務局から議題1.香川県の自殺の現状(資料1),議題2.香川県の取組み状況(資料2~5)の説明があった。

香川県における自殺者は,平成24年以降減少していたが,令和2年 増加に転じ,令和3,4年は減少したものの昨年は速報値でやや増加傾向にあること,←


→令和4年は30代男性が増加していること,自殺の原因,動機は単純ではないという報告があった。議題1に対しては,香川県医師会より,飲酒問題が自殺の誘因となることが多く,アルコール問題についても今後検討できれば良いとの意見が出された。また,議題2については,香川いのちの電話協会より,県内の自殺者数の推移に関して各市町の傾向についての質問があった。それについては,障害福祉課長から人口比率的にも高松市の自殺者数の増減に左右されるところが大きいこと,メンタルヘルスの相談窓口の増加と関係機関の努力の積み重ねが,自殺を思いとどまるきっかけとして,全体の自殺者の減少に繋がっているのではないかとの回答があった。

議題3.令和6年度の自殺対策の取組みについて(資料6~8)は,県としての取組み(健康福祉部,商工労働部,教育委員会,警察本部)の説明があり,引き続き香川県医師会,香川県臨床心理士会,香川県公認心理師協会,香川大学医学部公衆衛生学,社会福祉法人香川いのちの電話協会,認定特定非営利活動法人グリーフワークかがわ,認定特定非営利活動法人マインドファースト,香川労働局労働基準部健康安全課から,それぞれの取組が紹介された。各団体の取組については,それぞれの団体の特徴があらわれており,直接的な相談支援の活動のみならず,人材育成活動やメンタルヘルスやグリーフケアについての普及啓発活動をとおして自殺予防の裾野を固める一次予防に力をいれている様子がうかがえた。

第249回理事会報告

日 時:2024年9月2日(月)19時00分~21時20分

場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること(説明資料有):8月期の会計報告について,島津理事長より説明があり承認された。

第2号議案 調査研究事業に関すること:傾聴相談力セミナーワーキンググループは8,9及び10月は休会とする。11月から再開し,その時点でブロシュール作成の議論に臨むことで了承された。

第3号議案 2024年度ファミリーカウンセラー養成講座に関すること:①進捗状況;8月26日第3回講師会が開かれた。全講座の内容を確認し,役割担当を決めた。家族療法の考えをしっかり盛り込めていたこと,各回の流れの確認もできたので第4回講師会は行わない。②受講申し込み者;9月2日現在,受講申し込み者は6名で,受講料振り込み者は4名である。随時理事長が振り込み状況を確認しているが受講料返金期限は9月15日であるため今しばらく様子を見る。以上が了承された。

第4号議案 世界メンタルヘルスデーに関すること:①チラシ&シルバーリボンの発送作業に関しては今週末までにチラシ発送先リスト案を作成し,理事各自は発送リストの確認(追加,削除,誤字脱字等)をする。封筒の準備はAIYAシステムに依頼する。9月29日(日)11:00~カガミ文・チラシ・シルバーリボンの発送作業を予定し,理事長がメーリングリストで呼びかける。世界メンタルヘルスデー・キャンペーンは,当日(10月10日)は17:30現地集合(JR高松駅)とし,パネル・チラシは青木理事が搬入する。ボランティアでの参加者には交通費実費を支給する。以上が了承された。②101の言葉のクリアファイル作成に関しては,表のデザインや使用目的等に議論の余地があるため今年度2,3月に再度審議した後,次年度の予算として申請することで了承された。

第5号議案 共同募金会からの照会に関すること(説明資料有):①テーマ募金のチラシは個人宛ダイレクトメールのみである。②令和6年度共同募金運動街頭募金活動への協力依頼(10月14日(月・祝)11:00~12:00ゆめタウン)があるが,対応できる人員確保が難しいため,不参加で提出することで了承された。

第6号議案 オフィス本町の整理に関すること:青木理事より整理について具体的な説明があり,書棚,スチール製鍵付きロッカー購入の要望が出された。イメージしにくいことから先ずは図面を書いてメールで送りイメージ図を作成し,検討することで了承された。

第7号議案 理事会に関すること:①理事会のあり方;定款の確認,理事会開催の趣旨について,定款第6章理事会(構成,機能,開催,招集,議長,議決,評決権等,議事録)を理事長と植松理事が読み上げ確認した。さらに理事の倫理綱領に類するものとして第4章役員(解任)第18条(2)の項目があることも確認した。②理事会メーリングリストの使い方については原則として事務連絡や報告とする。また表現においては客観的な事実を中心にし,感情表現はできるだけ控える。③次回理事会は定例日が祝日のため10月7日(月)とする。以上3点が了承された。

第8号議案 心の健康オープンセミナーに関すること:第1回講師会が9月1日15:30~17:30,オフィス本町で開催され,今後の流れが話し合われた。第1回;1月25日(土),講師青木節子,第2回2月9日(日)講師松田依子,第3回3月16日(日)講師花岡正憲,その他スタッフ2名が担当する。資料代として参加者より各500円を徴収,参加予定人数は20名と見積もる。講師並びにスタッフへの交通費・駐車料は実費とするが謝金に関しては,講師の立場が異なることから今後審議することで了承された。

第9号議案 リトリートたくまに関すること:管理責任者と開催記録に関しては前回理事会,2024年度第5回(第248回)理事会議事録に記載されていることを参加理事全員で再度確認した。前回と同じ内容であるが,支援の前提となる個人と集団とのダイナミズムに関する情報が乏しいため当座の管理責任者を定め,日々の観察記録を詳細に取ることが再度了承され,今後も継続審議とする。

第10号議案 助成金申請に関すること:運営助成金の申請は今後,来年度にもかかわることであるため継続審議とする。

第11号議案 サバイビング当日の準備物セットについて:養成講座中には主担当の上田理事が出席できないため,今後のことも考えて2部用意しておくことで了承された。

編集後記: 9月になっても猛暑日が続いていましたが,暑さ寒さも彼岸まで。季節は,確実に夏から秋に向かっています。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と言いますが,夏の暑さの方は,喉元を過ぎたからと言って,忘れると取り返しがつかない事態を招きかねません。夏が毎年暑くなっていくこと,集中豪雨や洪水などは,いずれも人類の営みがもたらす地球温暖化によるものですから。地球は,人が考えるよりもリジリエント(回復力に富む)と言われますが,これまでのような人類の営みを,地球がいつまでも我慢をしてくれるはずはなく,このところの異常気象は,地球の人類への逆襲が始まっていると見ることもできます。environmental friendly(環境にやさしい)を掲げて,地球の機嫌を取る程度の目先の温暖化対策では,地球は人類の存在を許さないところまで来ている考えた方が良いでしょう。「人の命は地球よりも重い」は,生命倫理を象徴する言葉ですが,人類至上主義ということではありません。地球との和解のためには,地球に対する勝ち目のない攻撃を止めることでしょう。そのためには,一人ひとりが,人類の営みによってもたらされている温暖化の事実に向き合うこと,そして,それを防ぐための知識や情報を日々の地道な行動につなげて行く,それ以外の方法はないかと思います。確実に言えることは,地球が人類のジェノサイド計画を実行し終えた後に,回復した穏やかな地球の姿を人類は目にすることができないということです。(H.)