マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファースト事務局:
〒760-0032 香川県高松市本町9-3白井ビル403
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心の健康出前授業 香川県立高松東高等学校
マインドファースト理事長 島津昌代
2024年9月25日13:25~14:15,香川県立高松東高等学校において2年生(237名)を対象とした出前授業に,マインドファーストから島津が講師として派遣されました。今回は,対象者にとって身近にメンタルヘルス問題を考えてもらうために,テーマを「ストレスの話~こころの健康とストレスの関係~」とし,①今,なぜメンタルヘルス問題が注目されているのか,②「こころ」と「からだ」はどう関係し合っているか,③「ストレス」とはどういうものか,④他者とのコミュニケーションだけではなく,自分自身とのコミュニケーションも大事,⑤ストレス対処法,といった内容で話しました。2年生全員が体育館に集まり,体育座りで話をきいてくださったわけですが,各自思い当たる節もいろいろあったようで,熱心にきいてくださる姿が印象的でした。
同校は,学校新聞でも学校生活の満足度調査を行って,その結果を丁寧に掘り下げて取り上げられており,こころを大切にしている姿勢がうかがえ,自分たちの将来や進路についても本格的に向き合い始める年頃ならではの思いが様々あるのだろうと感じました。それゆえ,迷うことにも意味があるし,不安な思いになるのもただ心が弱いからではないし,そうした体験を糧に人は成長していくこと,その時に一人で悩んで思い詰めて心理的視野狭窄に陥らないために相談できる誰かとつながることが大切であることを伝えることができました。
2024年度若者層向けの自殺予防・心の健康づくり事業
香川県立高松南高等学校
マインドファースト理事 花岡正憲
2024年10月17日(木) 香川県立高松南高等学校教員約80名を対象に,若者層向けの自殺予防・心の健康づくり事業出前講座の講師として派遣されました。今回は,講義内容について受講者から事前に希望を伺い,5つのテーマについて解説を行いました。以下はその要約です。
1.発達障害を持つ生徒への対応
子どもとは元来正常であり,ある時点で何らかの問題があっても,それを越えて成長し,短期間で,劇的に発達的変化を遂げる。思春期・青年期には発達障害の診断要件が消えていることが少なくない。こうしたことから,発達途上にある子どもや成長速度が異なる子どもに対して,診断をつけることは,非常に慎重であるべきである。特に年少の子どもに対して,「行動」そのものを精神科医療の対象とすることは,過剰診断と過剰治療をもたらす。精神医学的診断が重要視されすぎて,正常とされる領域を縮小させてしまい,他の見方が入る余地がなくなるからである。子ども大人に限らず,発達障害とみなされやすい人たちに共通した特性として,相互的な社会関係の障害,言語コミュニケーションの障害,限定した常道的で反復的な関心と行動などがあげられているが,こうした特性を抱えた人は,
自尊感情が傷つきやすいため,その回復のためには,傾聴,対話(ダイアローグ)及び行動アプローチを通してエンパワーすることが大切である。
2.SNSの扱いによるトラブル
近年,ソーシャルメディアの頻繁な使用は幸福度の低下につながるだけでなく,過剰なスマフォの使用はうつや社会的孤立の要因になりやすいといった知見が蓄積されつつある。脳には,スマフォやパソコンなどが運んでくる新しい知識や情報など,新しいことだけに反応し,神経伝達物質であるドーパミンを産生する細胞がある。こうしたメカニズムにより,脳のドーパミンの放出とクリックというサイクルがでる。つまり,今読んでいるページよりも次のページに夢中になりやすくなる。インターネット上の同じページに10分以上とどまるのは,わずか4%という統計数値もある。オンラインの世界では,仮想的につながるための複数の方法があるが,多くの場合,最も重要なつながりの特性である同期性がない。子どもたちは,隣の子どもたちと会話するときも,ポケットにある携帯電話で何が起こっているかに常に注意を払っている。そのため,本当の意味での質の高い人とのつながりがなくなり,他者への共感性が乏しくなる。ニューヨーク大学教授で社会心理学者のジョナサン・ハイトは,近著『不安な世代』(2024年)の中で,うつ病,パニック障害,自殺,自傷行為の割合は上昇しつつあり,その原因はスマートフォンにあると主張して,以下のように述べている。子どもたちは,プラットフォームの中で集団行動という罠に陥っているため,対処しなければならないのは集団的影響である。自立にとって大切なことは,現実世界での遥かに自由な遊びと責任であり,子どもたちに,相互の視線と相互作用の感覚を本当に発達させる必要がある。そのためには,彼らにエキサイティングな子供時代を取り戻さなければならない。
3.リストカット
リストカットだけでなく,OD(薬物多量服用),過食嘔吐,その他の危険行為,望まないセックス・妊娠等は,いずれも自らを傷つけるという点で自傷行為とみなされる。自傷行為は,不快な感情を一時的な意識の変容によって解消する言わばストレス解消手段(coping)の一つとも言える。だからと言って,こうした自傷行為は決して容認されることではない。その理由は,計算ミスからの心身の受傷・致死及び二次的な心理社会的障害を伴うことがあるだけでなく,人は感情表現の手段を変えることで,感情をコントロールできるようになる方が生きやすい。そして,人は,本来求めているものを満足させる別の方法(オルターナティブ)を学ぶことができるからである。
4.起立性調節障害による登校不調
起立性調節障害の症状には,立ちくらみや失神,倦怠感,頭痛,朝起きるのが難しい,時間を守れない,集中できないなどがある。小学校高学年や中学生の年齢から発症する頻度が高いが,発症後2,3年もすれば80%程度が自然に症状の改善がみられる。起立性調節障害と診断された
子どもは,体内リズムの乱れがあったり,睡眠時間が大きく後ろへずれていたりすることが少なくない。規則正しい生活を心掛け,循環血液量を増やすための水分や塩分の摂取,運動による下半身の筋肉量増加などが有効とされている。小児科領域では,薬物療法として昇圧剤の内服が行なわれる場合もあるが,高校生になっても不調が続くような場合は,二次的心理障害も考えておいた方が良い。
5.教員のメンタルヘルスの保ち方
2022年度から高校の保健体育の授業において「精神疾患教育」が約40年ぶりに復活した。今や若者だけでなく,教育現場全体のメンタルヘルスリテラシーを高めていくことが求められる時代である。人は日々傷ついた心の修復過程の中に生きているとも言える。自分の人生を自由にコントロールするために,人それぞれ一人で楽しめることや自分を喜ばせるものなど,セルフケアの方法を持っていることが大切である。
令和6年度高松市若者支援協議会
代表者・実務者会議
マインドファースト理事長 島津昌代
10月31日(木)10:00~12:00,高松市役所大会議室において令和6年度高松市若者支援協議会代表者・実務者会議が開催された。この会議は,当初8月30日に予定されていたが,台風接近と重なって延期されたものである。出席者は,関係諸団体,諸機関および関係部局を代表する24名の委員で,教育,福祉,保健・医療,矯正・更生保護,雇用といった幅広い分野から成っており,マインドファーストからは理事長の島津が出席した。
冒頭,健康福祉局長河野氏より,我が国のひきこもりの現状,「第2期香川県健やか子ども支援計画」「第2期香川県子どもの貧困対策推進計画」が令和6年度で終了するにあたり,社会情勢や国の動向をふまえ,引き続き子どもの権利の擁護や,子どもだけでなく若者まで含めた支援施策の充実を図るために「高松市こども計画(仮称)』策定するために,専門的かつ多面的な話し合いを望む旨の挨拶があった。その後,委員24名のうち,今年度新たに委員になった人が紹介され,議事にうつった。
議事は,1)若者支援の方向性について,2)「高松市こども計画(仮称)」策定における意見聴取,3)その他 が予定されており,事前に郵送されていた「高松市こども計画(仮称)」素案の資料と当日配布された資料に基づき,担当者からの説明の後に話し合いが行われた。
1)若者支援の方向性については,事務局より,高松市若者支援協議会やひきこもり支援の市長村プラットフォームの説明,ひきこもりについて定義,推計人数,ひきこもりの状態になった年齢,ひきこもりになってからの期間,若年無業者についての定義,傾向,推計人数,生涯正社員と生活保護の社会保障のコストギャップ等の説明があり,若者支援の方向性として“当面の間,協議対象者を「中学・高校・大学の新卒者,中退者で,所属を失い支援が途切れた,社会生活上の困難を有するもの(家族含む)」とし,それらの者がひきこもり状態になる前,若しくは,ひきこもり状態になった後の早期の支援について協議し,関係機関等の支援に繋げる”ということについて意見交換が行われた。そこで話し合われたことは,支援対象の若者をどうやって発見するのか,待ちの姿勢ではなく何らかの働きかけが必要だろうが,あまり働きかけ過ぎると逃げられるのではないか,初期段階での支援が大事,若年無業者に対していきなり働くということはハードルが高く,支援が劣等感につながる場合もあるので,見守る社会の側の意識が変わることも必要,ひきこもることで自殺に追い込まれるのを回避している場合もある,家の外に「居場所」が望まれる等々で,委員それぞれの立場で感じている難しさや問題のデリケートさに配慮しながらできることを考える姿勢がうかがえ,こうしたやりとりが支援者ネットワークの構築につながることが実感できた。
2)「高松市こども計画(仮称)」策定における意見聴取については,事前に送付された素案に沿って説明があり,その後,この計画の中で特に重点を置いているところや,若者支援の中での就労支援や,学校を卒業した後に支援を途切れさせない対応の大事さが話し合われた。また,今の若者の問題のひとつにお金がないことから闇バイトに向かう危険性があること,その防止のための啓発の重要性も指摘され,最後に,来年度も本会議を開催することを確認して,終了した。
第251回理事会報告
日 時:2024年11月12日(月)19時00分~21時22分
場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 会計に関すること:資料を添えて理事長島津から説明があり,異議なく承認された。
第2号議案 技術援助に関すること:①2月か3月の綾川町ゲートキーパー養成講座に花岡理事と青木理事を派遣する。日時に関しては後刻相談することで了承された。②2月3日(月) 9時~12時ゲートキーパー普及啓発事業 香川県消防学校救急科約30名。講師謝金に関しては島津理事長が確認し交渉することで了承された。
第3号議案 香川県地域自殺対策強化事業に関すること:①ファミリーカウンセラー(FC)養成講座(9/22,9/29,10/6,10/13,10/20,10/27)の報告。受講生5名,3回目に1名欠席したのみで最後まで全員受講した。業務連絡のほとんどは島津理事と上田理事のメールでのやり取りで終えることができた。FC養成講座業務内容の手直しをしている。(別紙資料あり)来年度の参考にする。FC認定までの流れと日程を書いたフローチャート(別紙資料あり)をもとに,島津理事長より今後のFC認定面接から認定会議,認定登録そしてFC会議へのご案内についての日程の説明があった。上田理事より,傾聴・相談力セミナーワーキンググループの会への問い合わせがあった受講生がいた旨報告があった。②ファクトシートの作成について:「産後うつ」と「アディクション」が候補に挙がった。花岡理事がファクトとして提示できるか調べて検討する。③ブロシュール等作成:クリアパックにセットにして1000部を用意する。心の健康オープンセミナーのチラシ発送作業の時(12/7) に一部行う。作業募集に関して理事長がメーリングリストで依頼する。④発送作業は例年通り2月末とする。以上が了承された。
第4号議案 心の健康オープンセミナーに関すること:青木理事より資料に基づき,心の健康オープンセミナー第2回講師会の説明があり,了承された。以下に一部を記載する。心の健康オープンセミナーチラシ2000部印刷および発送用封筒の準備はAIYAシステムに依頼する。チラシ発送リストは理事長からのリストと各理事が発送を希望する人のリストとする。発送作業は12/7(土)14時~・セミナー当日のプロジェクターに関しては丸亀町振興組合から1万5千円 (5,000円×3日) で借りる。参加費は一律500円とする。但し講師は除く。
第5号議案 共同募金に関すること:青木理事が作成した2025年度テーマ募金活動申込書類について説明があり,2025年度テーマ募金のチラシは2000部印刷することで了承された。
第6号議案 リトリートたくまに関すること:柾理事よりメールにて①責任者について②現在担当している業務について③その他の3項目の検討課題が提示された。時間もなく審議未了になり継続審議となった。重大な議案であるので時間を取って新たに会議を開いてはどうかとの意見が出る。その時には山奥氏にも参加を促すことで了承された。
第7号議案 オンラインストーレージの加入に関すること:AIYAシステムに相談中。Google他いくつか候補があり,検討のためにそれぞれのメリット/デメリットについて資料作成を依頼している。継続審議とすることで了承された。
第8号議案 傾聴相談力ワーキンググループに関すること:11月24日(日)ファミリーカウンセラー会議の後再開することで了承された。
編集後記: 文科省は,教員のなり手不足が深刻化する中,2025年度の概算要求で,現在基本給の4%の「教職調整額」を一挙に13%への引き上げを求めています。教員のなり手不足は,学校現場が過密スケジュールな上に,保護者や地域の問題が学校へ持ち込まれ,その対応に追われ,就労環境が過酷だからです。授業時間数を減らすとともに,教員や学校の役割でないものは,保護者や地域に返すなど,思い切った決断が必要です。一方で,仕事に追われる保護者も,子どもの問題に関わって行きやすくなるように,親世代の働き方改革の具体的な方向性を示すことも不可欠です。2023年度,全国の国公私立の小中学校で「不登校」と判断された児童生徒は前年度から15・9%増の34万6482人と急増しています。教員と親にゆとりがない中では,子どもの育ちも損なわれて行きかねません。教員の時間外労働の改善と教職員調整額10%を上限にして5年間で引き上げ,その後は教員調整額を廃止し,残業代の支払いに移行することを検討している財務省案の方が,まだ一縷の希望が持てます。残業代を払わない代わりに,教員調整額を大幅に引き上げる文科省案は,定額働かせ放題制度の固定化につながりかねず,ここまでくれば教育現場の事情を無視した国の不作為という誹りを免れないでしょう。(H.)