マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファースト事務局:
〒760-0032 香川県高松市本町9-3白井ビル403
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2024年度心の健康オープンセミナー
「生きづらさが『発達障害』によるものではないかと思われている方に」
マインドファースト理事 花岡正憲
2025年3月16日(日)丸亀町レッツカルチャールーム1において,標記セミナーを行いました。今回は,1月25日から3回シリーズで行われた最終回です。参加者は21名でした。
発達障害については,発達障害バブルと呼ばれるように,科学的な事実よりも,業界や専門家の思惑や信念によって作り出されたポストトゥルース(post-truth)の時代を象徴するものと言えます。子どもは,ある時点で何らかの問題があっても,それを超えて成長する存在であるにもかかわらず,子どもの行動そのものを医療の対象にしようとするため,発達途上にある子どもに対して精神医学的見方が重要視され過ぎて,過剰診断・過剰治療と言う弊害が早くから指摘されています。
今回のセミナーでは,我が国における発達障害者支援法制定過程とその後の動向における問題点を明らかにするとともに,事例(仮想事例)を踏まえて,コアな発達障害と言われるものの特徴,そして発達障害と誤診されやすい幼少時の愛着障害,グレーゾーンの広がりから出てきた大人の発達障害と診断される背景に見られる教育及び社会環境の変容や職場環境の影響にも目を向けました。
さらに,ストレス関連障害や気分障害の範疇にありながら,発達障害と誤診されてしまいがちな認知機能の障害に目を向けるとともに,自らが認知の歪みに気づき,それを克服する方法について解説を行いました。時間の都合で,資料として準備したナラティヴ・アプローチ,オープンダイアローグやメンタライゼーションについては,触れることはできませんでしたが,いずれにしても専門家の言説にとらわれない人それぞれの真理の感覚を大切にしたセルフケアの方法の大切さについて解説を行いました。
綾川町
2024年度ゲートキーパー養成研修
マインドファースト理事 花岡正憲
2024年3月7日(金),綾川町国保総合保健施設綾上いきいきセンター元気ルームで開催された綾川町健康福祉課主催の標記研修にマインドファーストから花岡と青木を派遣しました。参加者は一般公募の住民17名と綾川町健康福祉課職員3名の合計20名した。
町健康福祉課赤松愛保健師の自殺の現状の解説に引き続いて,14:10~15:10,花岡が「自殺予防のために私たちができること」と題して講義を行いました。ゲートキーパーの役割,自殺に関する神話,自殺の危険因子と予防因子,自殺関連行動への気づきと支援の基本的枠組み,そして,わが国の大きな社会課題でもある子ども・若者の自殺予防と非自殺性自傷行為への理解とその対処方法について解説を行いました。
15:10~15:30は,受講者が4人~5人のグループに分かれて,青木が演習を行いました。グループディスカッションのテーマは,「自殺予防のためにあなた自身何ができそうですか?」で,具体事例をイメージ化してディスカッションを促すために,参考として仮想事例を配布しました。グループディスカッションの後,グループごとの発表
と意見交換,そして全体を通しての質疑応答を行いました。
グループワークは5分余りでしたが,ご自身が抱えている困りごとを話す方が少なくありませんでした。それだけ,この問題が身近なものになりつつあると言えます。
当日の配布物は,①ブロシュール:マインドファーストのご案内,②ファクトシート:大切な人を自殺で亡くされたあなたのために,自殺予防シリーズ№1~4(4種),心の健康オープンセミナーチラシ,テーマ募金チラシです。
令和6年度「自死遺族等支援団体向け研修・意見交換会」
報告及び自殺対策強化月間とサバイビングスタッフの思い
マインドファースト理事
ファミリーカウンセラー
サバイビングスタッフ 上田ひとみ
2月1日(土)令和6年度「自死遺族等支援団体向け研修・意見交換会」が開催された。今回,サバイビング代表として参加するのは2回目となる。令和4年度から実施されているこのオンライン意見交換では,いのちを支える自殺対策推進センター(JSCP)が,全国の自死遺族等支援団体の活動を展開する上で,ヒントを得るための場として開催している。今年度は,全国から20団体25人の参加者とオンライン意見交換会を実施した。2024年9月に,JSCPが公開した「自死遺族等を支えるために 総合支援の手引き(改訂版)」を踏まえて,①民間団体と地方公共団体の連携②人材の確保や育成③効果的な広報活動の3つのテーマに沿って,グループディスカッションを行った。まず,JSCPからの情報提供として,手引きを改定した経緯や改訂版の概要の説明があった。次に,手引きの中で事例を掲載している3団体の担当者から,研修のテーマに沿って各団体の具体的な活動の説明があった。
岐阜県「千の風の会」は,2008年に発足し,当初から岐阜県精神保健福祉センターと一緒に活動を実施している。当事者中心の分かち合いの会としてグループミーティングを実施している。活動の中の1つとして「サポートスペースれんげ草」では,センターの保健師や自死遺族当事者であるスタッフが,ご遺族の話を聴いたり,会の趣旨の説明をしている。福岡県「リメンバー福岡 自死遺族の集い」では,スタッフ全員が自死遺族の当事者である。また,人材の確保や育成において大切にしていることは,スタッフである前に一人の自死遺族であることを尊重することであり,スタッフ同士の心のケアとしてミーティングを開き,こころの重みを残さないケアもしている。最後に,「NPO法人全国自死遺族総合支援センター」は,2008年に発足し,全国の自死遺族等を対象に電話やメールによる相談及び分かち合いの会の運営と地方公共団体への運営協力を実施している。2011年には,自死遺児も含めて身近な家族を亡くした子どもとその家族を対象に活動範囲を広げた。Grief(グリーフ)悲嘆とは,喪失体験であり,その人の人生を超えた価値観と内面の葛藤がある。その支援は,doing(生活支援)とbeing(寄り添う)であり,亡くなった方のいない人生を歩むために,亡くなった人との出会い直しと自分自身との出会い言い直しを通して,残された遺族が人生の再構築ができるよう,その人らしい人生の構築を支援するなど話を聞くことができた。
その後,オンラインで団体毎のグループディスカッションが行われた。私は,「民間団体と地方公共団体の連携」のグループディスカッションに参加した。内容としては,地方公共団体との連携ができている団体もある反面,連携ができていない民間団体も多く,会場や資金面の確保が各団体の今後の課題であるなど意見交換をすることが出来た。今年度を振り返ると,サバイビング担当理事として香川県精神保健福祉センター(以下,センター)の担当者の方と意見交換をする機会をいただいた。センターの担当者や相談員の方と自死遺族の支援に関して,同じ支援者としての課題や共通の問題を抱えていることを共有できた。そして,3月は,国が定めた「自殺対策強化月間」である。3月3日月曜日17時30分から19時まで,JR高松駅前広場にて「自殺予防啓発キャンペーン」をセンターの職員の皆さんと合同で行うことも出来た。今後もこのような,官民の連携を積極的に継続して行っていきたいと思う。今回,JSCP主催の自死遺族等支援団体向け研修・意見交換会に参加することで,多くの学びと今後の活動のヒントをいただいた。そして,今年度の私自身のサバイビング担当理事としての活動も踏まえて振り返ることもできた。マインドファーストでは,「自殺で大切なひとを亡くされた人たちの支援グループ サバイビング」を開催している。「Loss and Grief 喪失と悲嘆」の中で,「自殺=自分を失くす」という本人とその家族の体験は「最大のGrief」だと感じている。自殺とは,死を選ぶしか無いほどの苦しみを体験し,その苦しみから逃れたい一心で「生と死」の葛藤の中で,生きる希望を失い「自分の失くす」ことを実行してしまう。しかし,私はその苦しみを共に考え「生きる」ことを支援していきたい。残された家族に起きた喪失と悲嘆の過程は,ナラティブ(語り)の中で,生きる希望を見つけることができるかもしれない。同じ境遇の方の話しを聞くことで生きる力を得るかもしれない。私は,その支援について最善を尽くせるカウンセラーでありたいと願う。それは,自殺の連鎖を止める支援でもある。この機会に,私と同じく志を共にしているスタッフから寄せられた「自殺で大切な人を亡くされた人たちへの支援」への思いをお伝えしたい。
【サバイビングスタッフからのメッセージ】
◯松田依子さん(ファミリーカウンセラー・精神保健福祉士・公認心理師)大切な方の自殺は,遺族の心を深い闇で覆ってしまうということを感じます。自殺した本人にしかその事情はわからないですが,遺された方々は「誰のせいでこうなったのか。」という責任の所在を求める気持ちと「どうして止められなかったのか。」と自分を責める気持ちサバイバーズ・ギルト*1)に苦しんでいるということです。喪失には3つのTが必要というのを聞いたことがあります。Time(時間),Tear(涙),Talk(話す)この3つが,喪失の悲しみを癒すそうです。個人的には,ケアを通して「その喪失を癒す」というよりは,「その喪失と共に生きる」ことを目指していくのがいいと思います。そして,その悲しみをひとりで抱えないことも大切です。悲嘆の大小は様々でも,生きていれば誰しも何らかの喪失に出会うので,その人にとって適切な場所や資源に繋がっていける社会になればと思います。私も,そんな支援を目指しています。
◯森本雅榮さん(ファミリーカウンセラー・臨床心理士)予約が入っていた面接当日は,おいでになる残された方の気持ちを考えると落ち着きませんでした。ただただ,胸の内を聴かせていただくことだと思って出かけます。話を聴く時は,少しでも未来の話が伺えたらホッとします。そして,話を聴いた後は,しばらく落ち着かない時間となります。自死遺族として残された人は,どうしようもない長い時間を生き,そして,必ず生きて行けることを信じております。ただ,気持ちを聞かせていただいた者としては,1回の面接でどれくらいお役に立てたかなと思いながらです。
◯岩崎祥子さん(ファミリーカウンセラー・社会福祉士・公認心理師)今までに喪失体験をされた方とは仕事やプライベートで何度かお会いしました。特に子どもさんを亡くされた方は,何年経っても傷は癒えることがないようです。サバイビングでは,参加者のいない時だったので,お話を聴かせていただくことはできませんでしたが,プライベートでは経験があります。私は,支援者(専門職)ではなく,ただの友人として話をひたすら聴き,一緒に悲しみました。同じ友人としての立場で,辛さ,苦しさが痛いように伝わってきました。ありきたりの励ましや慰めは通用しないと感じました。そして,心のケアは必ずしも専門職でなく,身近な人達の関わりが必要なのではないかと実感しました。その関わりは,話を聴くことだけでなく,一緒に食事をしたり,お茶を飲むなど「その人のことを気にかけてあげる」ことではないかと思います。精神科医の山本昌知先生が「人薬(ひとぐすり)」と言われていますが,それを信じたいと思います。
最後にもう一つ,辛い喪失体験を「話す」ことは,「離す」ことでもあります。また,話を聴くことはとても大切なことですが,受け止める側にも大きな傷を与えてしまいます。支援者としては,「話してくれてありがとう。」とお伝えしていますが,プライベートな個人の関わりでは,心構えもなく大きな衝撃でした。自分の心も守りながら,自死遺族の心のケアを続けていくことが課題だと思います。
*1)サバイバーズ・ギルトとは,他者の死の原因への自己責任,救出援助の可能性について,自分の行動や意識を責め,自分を罰しようとすること。他者の死と比較考量することで,自分自身の生の意味を確認していくグリーフワークの1形態でもある。[戻る]
第258回理事会報告
日 時:2025年3月10日(月)19時00分~21時20分
場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 会計に関すること:理事長島津から説明があり,異議なく承認された。
第2号議案 リトリートたくまに関すること:スタッフの名刺については,リトリートたくまの利用者だけでなく,対外的に使用する機会もあることから,理事長が委嘱状を交付する際に,法人負担で作成した名刺をスタッフに渡すことで了承された。現在リトリートたくまの場所として使用している賃借物件については,3月26(水)を最終日として備品の撤収を行う。そのため事前に作業量を確認しておくために,3月12日に青木理事がスタッフとして赴いた際に,搬出対象物を写真撮影して理事宛に送っておくことで了承された。
第3号議案 心の健康オープンセミナーに関すること:3月16日(日)最終日以降に,ふりかえりの時間を持つことで了承された。
第4号議案 テーマ募金に関すること:3月10日現在で,寄付者数35名(うち,法人3),合計額384,855円であることが報告された。現時点においては,目標額100万円に遥か及ばないため,3月31日の最終日までに,さらなる寄付活動を行うことで了承された。
第5号議案 香川県地域自殺対策強化事業に関すること(添付資料有):①2025年度の「おどりば」の開催日は,1月と5月の第1土曜日は,休日になるため,第2土曜日に変更して開催することで了承された。②サバイビングのカードとマインドファーストとピアサポートプログラムのブロシュールについては,初校どおり発注すること,おどりばのブロシュールについては開催日を第1土曜日とし第1土曜日が祝日の時は第2土曜日と変更して発注することで了承された。③2025年度のファミリーカウンセラー養成講座・基礎コースの開催場所,開催時期,講師等は,今後の検討課題となるが,従来の会場丸亀町レッツホールは,開催時期によっては,会場確保が難しくなることがあるため,候補となる他の会場を事前調査しておくことで了承された。
第6号議案 高松市若者支援協議会委員の推薦に関すること(添付資料有):自薦候補の青木理事を推薦することで了承された。
第7号議案 マインドファースト通信の編集に関すること:現行のA4サイズの紙面構成での刊行を希望する意見も出たが,引き続き審議を行うことで了承された。
第8号議案 来年度の体制に関すること:事業計画については,2025年度の事業実施における人的体制と密接に関連しているため,2025年度に想定される人的体制との関連で審議を行う必要があることが確認され,今後の継続審議とすることで了承された。
編集後記: 2025年3月8日,香川県教育委員会主催の不登校児童生徒支援対策ネットワーク研修が開催されました。不登校生徒が増加する中で,2023年7月に不登校生徒の個々の状況に応じた支援の充実に向けた取組みについて検討を行うために,不登校支援協議会が設けられました。今回の研修はこうした経緯を踏まえたものです。テーマ「子どもたちの育ちを香川県全体で考える」のもとに,不登校体験者の体験談が行われた後,6名のシンポジストによるシンポジウムが行われました。子どもたちが生きていく上で必要なことの多くは,学校以外のところで学ぶと言われますが,今回,不登校経験者の話から,あらためてそれを感じることができました。シンポジストの一人でNPO法人四国ブロックフリースクール研究会の川村圭氏は,そもそも学校は必要なのかと思うこともあるが,学校に行かない子どもたちのあまりにも自由な姿を見ていると不安にもなると語りました。不登校児童生徒支援については,教師の家庭訪問や保健室登校,適応指導教室やフリースクール,学校現場へのスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置,居場所づくりや親の会など,多様な取り組みが行われるようになりました。こうした中で,あい変らず不登校児童生徒数が増え続けていることだけを問題にするのは,この国はいつまでも学校神話に縛られて,脱学校化という視点での教育のあり方が議論できないからでしょう。ドイツでは,日本の「義務教育」に相当する言葉は, Schulpflicht(就学義務)と呼ばれ,就学について個人の義務や責任が問われることから,子どもが学校へ行かないことへの対応は,日本とは大きく異なるようです。個人にとって学校へ行かないことのリスクとベネフィットは何なのか,オープンな議論を重ねていく中にしか不登校問題の答えは見つからないと考えます。(H.)