オーストラリアではじまった新しい自殺予防キャンペーン アーユーオーケー?
−会話が人生を変える−

RUOK? A conversation could change a life.
2009年11月29日,「RUOK?デイ」がスタートした。オーストラリアの国民一人ひとりが,なにかで困っている同僚や友人や恋人のもとに出向き,「アーユーオーケー(Are you OK? RUOK?)」と声かけをするためのナショナルデイである。
RUOK?は,オーストラリア国民に向けて,自殺予防のためには,友人や同僚や恋人との日頃からのつながりが大切であるとの啓発を行なう団体である。自殺の危険性がある人と自殺について語ることは,その可能性を下げることになるという事実が明らかになっている。自殺予防という点から,RUOK?は,さし迫った自殺の危険性がある人にだけ問いかけるのではなく,些細なことが深刻な事態にならないように予防することを目的としている。ストレスになる生活上の出来事,精神的健康問題,人間関係の破綻,そして死別といった問題を抱えている人にとって,健やかさ(well-being)の回復のためには,人と人とのつながりが大きな助けになる。
同僚や友人や恋人とのつながりを保ち,安心感を伝えることは,そんなに難しいことではない。常日ごろから意味のある会話をすることである。今年の11月29日は,気になっている周りの人に対して「アーユーオーケー?」と声かけするようオーストラリアの全国民に呼びかける日である。人とのつながりは,だれにとっても大切であるという意味では,毎日がRUOK?Dayであるという。
2007年の統計によると,オーストラリアでは2,005人が自殺で亡くなっている。オーストラリアは,15歳から35歳の自殺者が多い。そして,1人の自殺者に対して,10人の未遂者がいると推定されることから,1年間におよそ2万人が自殺を図っていることになる。
人は,困難を抱えているときにかぎって,感情を表に現さないものである。そうしたことから,なんらかの兆候が見られるまで待つ必要はなく,自分の直感を信じることをすすめている。やることは,気になる人に対して,危険性の有無に関わらず,「アーユーオーケー?」と声かけを繰り返すことである。今はオーケーであっても,そうすることで,相手は最悪のときは,あなたが気にかけてくれると思える。そして,オーケーでなければ,そこからの会話が人生を変えることもある(A conversation could change a life)という。
活動の原点:バリー・ラーキン氏(1940-1996)は,ビジネスマネジメントのコンサルタントとしては成功したが,自ら命を絶った一人でもある。14年後,彼の追悼のために,3人の息子たちが,
自殺啓発イニシアティブとしてRUOK?を開始することになった。RUOK?は,オーストラリアのあらゆる社会階層において人とのつながりを促進することで,もう一つの「サイレントキラー」に取り組むことを目指している。
RUOK?は,人とのつながりに役立つ5つのことを提唱している。
  1. 受容的であること:「アーユーオーケー?」と呼びかけることは,相手に対して「私には,お話をする時間がありますよ」というメッセージになる。
  2. 会話のきっかけをつくる:「なにか,長いあいだ,気が滅入っている/心配事を抱えている/ストレスを受けているようにも見えるのですが,それについて,だれか相談できる人がいますか?」
  3. 傾聴の技術を身につける:話したがっている人は,必ずしも助言を求めているわけではない。心配なことを聞いてもらいたいだけのこともある。
  4. 元気づけのための助言:セルフケアを促す。苦しい時だからこそ,自分自身のニードを満たすことが大切であると。
  5. あなたが助けになる存在でいること:だれかを助けるときに,問題はいずれ解決すると決めてかかり,距離をとってしまうことは避ける。
ちなみに,最新のデータでは,オーストラリアの自殺率は,人口10万対10.8で世界第45位,実数で約2,000人。一方,日本の自殺率は,23.7で世界第8位,年間3万人を超えている。
(マインドファースト通信 編集長 花岡正憲)
第39回理事会報告
日時:2009年11月9日(月) 午後6 時30 分〜9 時00 分
場所:高松市男女共同参画センター 第1会議室
議事の経過の概要
事務連絡および報告:省略
審議事項
議案1 香川県リハビリテーションセンターからの講師派遣依頼に関する事項:職員向けのメンタルヘルス講話に理事を講師として派遣することが承認された。
議案2 「相談員養成プロジェクト」に関する事項:家族精神保健相談員養成講座の根拠となる「家族精神保健相談員養成講座実施要領」(案)の読み合わせを行った。校正後,正式に実施要領として発効することで了承された。
 編集後記:国の事業仕分けが終わりました。独立行政法人と取引のある地方の公益法人などにおいても,非効率で無駄なものが見受けられるとの指摘もありました。都道府県レベルでも,原点に立ちかえって事業の見直しが必要なものがありそうです。マインドファーストでは,2010年度の事業計画に取りかかる時期になりました。限りある人と予算で,来年度も地域のことを地域で解決して行く工夫をしてみたいと思っております。(H)