マインドファースト理事長 島津昌代
新緑の5月9日(日)に15名の受講生を得てスタートした「2010年度ファミリーカウンセラー養成講座・基礎コース」が,猛暑の7月25日(日)に全員揃って修了いたしました。今回受講された方々は,実際になんらかの家族支援を行っている方ばかりでしたので,言ってみれば,貴重な休日の2時間をこの講座での学習に当てられていたわけです。月に2回の開催とはいえ,3か月の間,ほとんど欠席することなく受講され,無事に全員に修了証をお渡しすることができたのは,主催者として大変うれしく喜ばしいことと思っています。
本講座は,近年多発している自殺やうつ病,ひきこもり,児童虐待,夫婦間暴力など,さまざまなメンタルヘルス問題によって家族をとりまく状況が深刻化していることや,家族の抱えるストレスや関わり方が症状や不適応に多大な影響を与えているらしいこと,それゆえ,精神的な健康の増進や不健康の予防・解消のために,家族機能の回復という視点に立った支援が大切であろうという考えの下に企画しました。つまり,家族の中の誰かに問題(困ったこと)が生じた時,その周囲にいる家族も困るのですが,その困り方は様々です。「本人さえしっかりしてくれれば…」と思って叱咤激励すれども事態は変わらないとか,「黙って見守っていればそのうち変わるだろう…」と思っていたのに一向に変わらない,いったい家族はどうすれば良いの?といったことがよく起こるのです。そうした事態の中で,ともすれば,家族の中のストレスが高まって些細なことで喧嘩が起こったり,元気や明るさが失われて,問題をかかえていた当の本人のみならず,家族がそれぞれに自分や相手を責めるといった悪循環に陥ってしまうことが多々あります。このような状況に陥った人および家族への支援のあり方を考え,その方法について学ぶために,本講座はロールプレイ中心のワークショップ形式で進められました。
誰かの行動や発言が,良くも悪くも周囲になんらかの影響を与えることを私達は知っています。家族の中でのそうした影響を考えながら,ロールプレイでそれらを体験していくことは,家族全体をひとつのまとまり(システム)ととらえることへの理解を深め,家族は相互に関連して問題解決に向かうことができる存在であるということを実感するものでした。誰かの反応が変われば,その変化は全体に影響を及ぼす…それは,何も家族の中だけに限ったことではありません。本講座を受講された方々が今回学ばれたことは,各自の今後の活動を通して,社会の中での支援の輪を広げ,層を厚くすることにつながっていくと思います。家族がひとつのシステムであるように,社会もまた私達が作り上げているひとつのシステムなのですから。
当会では本講座の修了にあわせて,ファミリーカウンセラーの資格認定審査に向けても動き出しています。「利用者本位の心の健康の推進と心のケアシステムの充実」に向けて,同志が増えることを願ってやみません。