いまそこにある危機に目を向けよう
〜東北関東大震災は,私たちに何を残してくれるか〜
子どもは悩みを抱えているが,父親と母親の間には葛藤があって,子どもの声がとどかない。両親それぞれが逃避的パワーゲームに走っている。そうした中で,子どもが外で問題行動を起こしたり,家族の誰かが病気になったりする。それまでいがみ合っていた夫婦が,ようやく向き合い,家族が抱える課題の取り組みに向けてその第一歩を踏み出す。家族の再生の姿である。
集団は,その一部が傷つくと全体が揺さぶられ,全体が揺さぶられると部分が傷つく。家族と個人の関係がそうであるように,国と国民との関係においても同じことが言える。いま,東北関東地方という日本の大きな部分が傷つき,国全体が大きく揺さぶられている。今回の震災で,私たちの社会の空気は一変した。国と地域が,被災者支援や復興支援など,共通する課題に向けて動き出した。
しかし,自殺者の増加をはじめ,ホームレス,消滅集落に向かう限界集落,都市と地方の格差,失業と貧困,医療難民や介護難民,エネルギー問題など,震災が起きる以前から,国民生活における危機が,いまそこにあったことを忘れてはならない。にもかかわらず,このところ政界は,こうした問題の解決を先送りして,揚げ足取りや保身のためのパワーゲームを繰り返してきた。一部のマスメディアもこれに乗じて,いたずらに政治に対する国民の不信感と失望を煽ってきた感は否めない。
私たちは,1995年の阪神大震災を経験して,被災者支援と復興の課題は,普段の国民生活における危機と再生の課題でもあることを学んだはずだった。最近,識者の間に,大きな危機が来なければ,この国は大切なことが何なのか気がつかないのではないかと,警鐘を鳴らす人たちもいた。しかし,大きな危機を経験しても,そこから学ぶ姿勢がなければ,生活者の身近な危機は見過ごされ,さらなる次の危機へと問題は先送りされてしまう。
今回の震災の被災者に対する支援を速やかに行なうことは言うまでもない。加えて,いまそこにある危機の中にいる人々が,大切にしたいものや再生のために必要としていることは何なのか,あらためて学ぶ機会にしたい。その意味でも国と地域社会のあり方が問われていると言えよう。
(マインドファースト通信 編集長 花岡正憲)
自殺対策関連ファクトシートを配布 県下209か所の関係機関へ
マインドファーストでは,2010年度香川県地域自殺対策緊急強化基金事業費の補助を受けて「自殺者遺族」と「自殺を考えている人と家族や関係者」のための2種類のファクトシート(各A4版両面印刷)を作成し,3月6日香川県下209か所の関係機関に向けてそれぞれ約3,300枚を発送しました。
自殺問題については,誤解や偏見がなお根強いため,地域社会における自殺と自殺予防に関するリテラシーを高めることにより自殺問題と自殺予防のニードが身近なものとして意識化され,関係者が早期に相談援助に向けて行動を起こすことが求められます。ファクトシートは,こうした可能性を高めることをねらいとして作成されたものです。
今回のファクトシートは,「大切な人を自殺で亡くされたあなたのために」「自殺を考えている人とその家族と友人のために」の2種類で,いずれも当事者性を持った人のための
セルフケアの方法や支援者に役に立つ知識とスキルの具体的な解説に加えて,香川県内の関係機関や支援団体の窓口が紹介されています。
本ファクトシートをご希望の方は,マインドファースト事務局へご連絡下さい。
講師派遣 メンタルヘルス講座「うつ病について学んでみよう」
3月19日(土),高松市男女共同参画センターにおいてメンタルヘルス講座「うつ病について学んでみよう」が開催され,マインドファーストから講師を派遣しました。この事業は,男女共同参画ネット主催によるもので,一般市民,精神保健関係者など16名の参加がありました。講義では,うつ病からの回復,家族や友人など関係者の役割,発症予防のためのストレスマネジメント,精神的健康づくりなどについて解説を行ないました。
第56回理事会報告
日時:2011年3月14日(月)午後6時30分〜9時00分
場所:高松市男女共同参画センター 第1会議室
議事の経過の概要
事務連絡および報告に関する事項:省略
第1号議案 2010年度香川県地域対策緊急強化基金事業に関する事項:対面型相談事業,普及啓発事業,強化モデル事業の各担当者から事業報告書作成進捗状況についての報告があった。3月11日担当理事が県の事業担当者と面談。報告書作成についての詳細の打ち合わせをした。それを踏まえ,3つの事業を総括した報告書の完成が急務であるとの結論に達した。
第2号議案 2010年度事業報告ならびに収支決算書に関する事項:決算時期にあたり,総会資料の作成に向けて,各事業担当理事に対し,事業ごとの事業報告書の作成の指示が理事長によってなされた。
第3号議案 2011年度事業計画ならびに収支予算書に関する事項:次年度の事業計画の作成に向けて,今年度の収支報告と事業報告の早急な作成の必要があるとの問題提起が行なわれた。
第4号議案 2011年度定期総会開催に関する事項:協議の結果,5月16日に総会をひらくことが決議された。
第5号議案 事務局体制に関する事項:拠点となる事務所の物件確保については,今年度の収支状況,ならびに次年度の予算の確保の状況により,今後の検討事項とする。
第6号議案 2011年度香川県地域自殺対策緊急強化基金事業に関する事項:担当理事より,2011年度分の概算要求中であるとの報告があった。
第7号議案 メーリングリスト,オンラインストレージに関する事項:担当理事より,オンラインストレージについて,利用者がないので,今後の運用をどうするか提議があった。協議の結果,オンラインストレージを解約することで了承された。
 編集後記:人が造ったロボットが制御不能になり,人類が絶滅の危機に立たされる。この種のSF小説や映画は少なくありません。文明が人類を滅ぼす。今回の原子力発電所の事故は,そうした近未来の光景を垣間見る思いです。(H)