マインドファースト 2012年度の新規事業
メンタルヘルス問題を抱えた人たちには,一人ひとりの事情に沿った生活者本位の支援が欠かせません。その点で,他者の痛みを自分の痛みとみなすことができるソーシャル・コミットメントは,大きな力になります。このたび,マインドファーストでは,自ら精神的病を経験し,克服しつつある人たちが,体験を共有しうるピア(peer 仲間)として,メンタルヘルス問題を抱えた人たちとその家族のwell-being(健康,福祉,良好な状態)の向上を図ることを目的に,ピアサポート・プログラム実施要領を策定しました。2012年度は,精神医療ユーザーが中心になり,香川県地域自殺対策緊急強化基金事業を活用して,電話相談事業「ピアサポートライン」の開設を計画しております。
以下に,世界精神保健連盟(WFMH)啓発用パケットの「ピアサポートと回復」を掲載いたします。
ピアサポートは,苦難を経験し,困難を乗り切ってきた人たちだからこそ,同じような立場にある人たちに対して,役に立つ支援や励ましや希望や助言を与えることができるという信念に基づいています。
「ピアサポート」という言葉は,精神保健領域では,幅広いプログラムを意味していますが,核になるのは,精神保健ユーザーが仲間のユーザーに支援を行う考え方です。ピアサポートは,従来の精神保健サービスを補うだけでなく,他のものにとって代わることができない支援活動です。プログラムは様々ですが,基本的にはユーザー同士の話しあいで決まります。通常,ピアサポート・ワーカーと呼ばれる人は,自分も精神疾患を持ちながら,相手を理解し,情緒的に支え,ゴールを設けて,社会的つながりを再構築することを支援して行くことになります。
ピアサポート・プログラムには,「望ましい治療結果を引き出すこと」「より力をつけること」「社会的機能を高めること」「生活の質を改善すること」「心と体の健康に関する認識を改善すること」「病気に対処する能力を増進すること」などがあげられます。ピアサポート・プログラムを通して,「自分とよく似ているな」と思える人たちに出会えます。お互いのつながりを感じ,共に体験を分かちあえる者同士として,深い理解を育んで行くことができます。
ピアサポート・プログラムは,特に統合失調症の人たちが,症状の有る無しにかかわらず,日々の生活をやりくりしたり,楽しんだりするのに役立つ方法を学ぶ上で有用です。ピアサポートは,なによりも回復ということに焦点を置いています。回復には,精神保健全般にまたがる対応が必要です。ピアサポートは,精神疾患を有する人たちが,有意義で,目的を持った生活を送ることができるという事実に基づいたものです。
リカバリー(回復)分野における国際的指導者でもあるMary Ellen Copeland(メリー・エレン・コープランド)は,回復に関する以下のような5つの重要な概念を提唱しています。