香川県中讃保健福祉事務所職員研修
−アシスタントとしての参加報告−
三好 千秋

3月11日に「新型うつという概念を生む背景にあるもの」というテーマにて,講師よりマインドファーストにアシスタントとしての依頼があり行ってきました。その時の内容についてお知らせします。
これまで,うつ病の症状といえば,抑うつ気分,興味と喜びの消失,活動の減退,疲労感があげられますが,最近,仕事には出てこられないが,プライベートな場面では,活動的であり,自責の念よりは,他人を責めることが多い,また薬が効きにくいといったタイプのうつ病の方が増えています。これを「新型うつ病」と表現されるのをよく聞きますが,「新型うつ病」とは診断名ではありません。心の病の診断はいくつかの症状によって区分し診断の枠にはめるという方法がとられているため,診断名としてのうつ病,適応障害,双極性障害,人格障害,気分変調症,PTSDなど様々な病気の症状が重なりあうということがあり,診断をひとつに決めるのはむずかしいというのが現状です。心の病は人との関係性や周りの環境の変化がきっかけで起こることが多く,薬だけに頼らない方法で自分の心の健康問題を解決していくということが,現在では求められています。
薬によらない解決法,あるいは予防法のひとつとして“思考”に注目する方法があります。私たちはある出来事(現実)が起こったときに憂鬱な気分,楽しい気持ちなどの感情を経験します。そして同時にその時にある考え(思考)を自ら起こしています。そのことに気づく為に,“いやな出来事カレンダー”,“うれしい出来事カレンダー”をつけて,なにげなく日々過ごしていることについての感情と思考,感覚をモニターするという方法が紹介されました。
このカレンダーをつけていると,出来事と感情は自分ではコントロールできないものだが,思考とは自らが起こしているということに気がつきます。自分が思っていたことは現実とは違うのだ,思っていることの多くは,「あの時,ああしたからこうなったんだ」と過去のことを考えたり,「この先こうなるにちがいない」という未来のことを考えるためにネガティブな感情がわいてくることに気がつきます。過去,未来への考えを絶ち,意識を今に戻すということを“脱中心化”または“マインドフルネス”といい,意識を今に戻す練習としてのスキルを得ることがうつ病の治療や再発予防として,注目されています。
意識を今に戻すための練習のひとつとして,瞑想(メディテーション)があります。今回の研修の最後に,10分間の呼吸瞑想を実際に体験しました。座ったままで,肩の力を抜いた楽な姿勢で,目を閉じ,自分の呼吸に意識も集中させます。途中何か考えていることに気がついたら,また呼吸を意識するという体験
をしました。このような時間を日常的につくり,何か気持ちがぶれたときにやってみるということは,うつ病だけでなく,心の健康のために役立つ方法だと感じました。
日々,忙しく,頭の中もめまぐるしく動かしている現代の私たちにとって,このような瞑想の時間は大切な時間だと今回の研修ではアシスタントをしながら,学ばせてもらいました。
第93回理事会報告
日 時:2013年4月8日(月)19時00分〜21時00分
場 所:高松市男女共同参画センター 第7会議室
事務連絡並びに報告に関する事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 2012年度香川県地域自殺対策緊急強化基金事業に関する事項:報告書を4月9日に県の担当課に提出することで了承された。
第2号議案 2013年度香川県地域自殺対策緊急強化基金事業に関する事項:25年度内閣府の重点項目に若年者に対する事業があるという情報を得て,“おどりば”を強化モデル事業として182,000円の事業計画を提出した。この後の手続きについて4月9日に県の担当者より情報を得ることが承認された。
第3号議案 独立行政法人医療福祉機構(WAM)の助成金申請に関する事項:事務局より,地域連携,地域活動のための事業をWAMに助成金申請をする提案がなされた。議論の結果,助成事業終了後の財政的な継続の可能性が困難なため,今回は見送るということが承認された。居場所作りについては,あらためて地域活動事業に関する情報を高松市から引き続き得ること,また,高松市長との“まちかどトーク“を申し込み,高松市に事業の重要性をピアの会員と共にアピールすることが承認された。
第4号議案 認定NPO法人の申請について:引き続き,取得の可能性について検討し,今後の議題とすることが承認された。
第5号議案 2013年度総会に関する事項:5月7日(火)19時より臨時理事会を開催し総会に向けての準備をすることが承認された。今年度は役員の任期満了につき,3名の理事から次期の理事就任を辞退したいという意思表示が出ている。複数の理事から,後任理事の候補として,具体的な会員名が挙げられたが,基本的には総会において決定することで了承された。
 編集後記:既存の医療に疑問を抱き,健康の回復のために必要な医療は自分で選び,自分で決める。標準治療万能主義の医療現場を変えていく上で,患者の合理的な選択と主張は大きな力を持っています。このことは,精神科医療においても例外ではありません。新型うつ病という概念の登場は,従来型うつ病の概念にとらわれている精神医療関係者が,患者の意識の変化についていけなくなっている一面があることは否めません。新型うつ病をめぐる混乱は,日本の精神科医療が変化に向かう過渡的現象とも見ることができるのではないでしょうか。(H)