マインドファースト事務局長 三好千秋
6月13日,高松市保健センターにおいて開催された高松市中央ブロック保健委員会こころの健康地域啓発事業研修会「みんなで精神病を考えよう」にアシスタント講師として参加する機会がありました。
はじめに,この日の講師から,“初期精神病への早期支援”についての講義がありました。混乱した思考,間違った信念,幻覚,感じ方の変化,行動の変化などの精神病症状をはじめて人が経験するとき,自分に一体何が起きているのか,混乱し,恐怖感を覚え,苦しむことになります。
精神病は思春期から成人初期に起こりやすく,この時期は人生にとっても大事な分岐点です。初めて精神病を経験する人たちへの間違った対応は,二次的な心理的社会的障害の原因になります。例えば,自分自身への感じ方が否定的になり,社会的ひきこもり,うつ病,アルコールの乱用や自殺などの問題が起こりやすくなります。早期の適切な支援が大切である所以がここにあります。また,精神病状態にある人は,周りから孤立しがちで,社会的な偏見もあり,相談支援を求めることが遅れがちです。こうしたことから,近年では,まずかかりつけ医に相談に行くことが勧められます。
精神病発症は,家族にとっても衝撃と負担が少なくないため,後半は,グループに分かれて,「なぜ家族の支援が必要なのか」「家族に何ができるのか」ということについて,話し合いを持ちました。受講者からは,「家族としてどのように接していけば良いか分からない」「家族にどのように声をかけたらよいのか」「どうしても専門家に相談したほうがよいと言いたくなる」など意見が出ました。これに対して講師からは,起こっていることを“大ごと”とせず,急いだり,慌てたりしないようにすることが大切であるとの助言がありました。
引き続き,講師から示された仮想事例を踏まえ,受講者の中から,当人役,家族役,友人役,職場の関係者役を取ってもらい,保健委員が保健師と同席して相談を行なう場面のロールプレイを体験してもらいました。ロールプレイの後,それぞれの役割を演じた受講者から,「問題を抱えた人の周りの人間関係を生かした支援をしていくことが大切」「できるだけ家族で話し合えるようにする」「支援者としては,聴くことを中心に,アドバイスは控えめに」などの意見が出ていました。
また,受講者から,「精神病は育った環境が影響するのか」「短期間で回復するのか」「本当に完治するのか」などの質問がでました。研修後も,なお,精神病に対する不安や回復への疑念が残り,精神病に対する理解は,一朝一夕にできるものではないという印象を持ちました。
今回の研修は,「精神病」に対する偏見を低減し,地域社会の理解を深めることを狙いとしたものですが,そのためにも,私たちの地道な活動が必要であると,改めて感じた次第です。